静電気を調べよう
  育てたい資質や能力

物体には電荷があり,摩擦により簡単に移動する。その結果,静電気や電流が生まれるという見方や考え方を育てる。
  学習のポイントと配慮事項

1 接触や摩擦により簡単に電子の移動がおこる。したがって,身の回りの物体はむしろ帯電している方が自然である。
 クリップを伝わって机から電気が逃げているのであるが,乾燥した発泡スチロールなどの上にクリップごとモーター全体を置けば回らない。
 このとき,人体も導体である(感電するのが最も実感できる理由)から手でさわると回る。
 木材は常に水分を含んでいるので導体である。発泡スチロールも湿気を帯びていると導体である。
 このように通常は(通常の電圧)不導体であっても高電圧であれば導体となる。
2 摩擦により不導体上に発生する電気は移動しないので静電気と呼ぶ。
3 ネオン管は高電圧であれば微弱な電流でも点灯する。乾電池程度の電圧では点灯しないので摩擦電気は高い電圧であることが分かる。
 また,ネオン管は−側が光るので注意深く観察すれば,正負どちらに帯電しているか分かる。
4 塩化ビニールパイプと紙をこするとき,紙を絶縁体の棒に巻きつけてこすり,紙をはく検電器に近付けてみると紙が帯電していることが分かる。
 このとき,紙はパイプと逆の電荷である。結局,紙からパイプに電子が移動した結果の現象である。
5 水は極性分子であり,帯電していなくても帯電体に引き寄せられる。
 また,表面張力も働くので,水滴になった後で帯電体の影響を受けるようにすることが大切である。
6 二極のフランクリンモーターは電荷どおしの反発力と引力で回るので,回転の向きは偶然である。
7 人体は導体であるが履物の絶縁がよければ電気をうまく逃がすことができない。
 また,洋服の材質によっては帯電していることがある。うまく,電気を逃がすには水道管などにアースすれば確実である。
  理論的な背景・注意事項

1 静電気の実験では湿気が大敵である。風通しの良い日向に1時間程度置いておくか,ドライヤーの熱風で乾かすなどの準備が必要である。
 また,発砲スチロールはいったん湿気を帯びるとなかなか乾燥しないので注意を要する。
 摩擦電気は電気量は微小だが,非常に高電圧なので,100パーセント乾燥することのない木片などは導体と考えてよい。
2 はく検電器
 (1) はくを入れる容器にアルミ缶を用いたが,これは容器が帯電するのを防ぐためであると同時に静電気に対して外部からの影響をシールドするためである。
 紙コップやプラスチックの容器,ガラス瓶などは容器自体が帯電して実験が失敗することが多い。
 (2) マイナスに帯電したパイプを近付けると−が下に押しやられて,はくが開いた状態(下図@)になる。
 この状態のまま手で触れるとはくの−電荷が逃げる(図A)。
 このとき上部のアルミニウムはくの+はパイプの−と引き合っているのでそのままである。
 パイプを遠ざけると+が一様に分布し,はくが開く。
画像
3 水滴の帯電
(1) 空気中のほこりは帯電している。+に帯電したほこりを取り込んだ水滴が,例えば左の缶に落下したとする。すると缶と針金は+に帯電する。
 針金は右の缶に伸びているので,この針金の回りには−のほこりを引き寄せ,ここを通過した水滴は−に帯電して右の缶に落下する。
 これを繰り返し,電荷が溜まれば溜まるほどこの効果は大きくなり,後半ははく検電器のはくは急激に開く。
(2) どちらが+に帯電するかは,始めの水滴の取り込んだほこりの電荷に左右されるので,偶然といえる。
(3) 条件がよければフランクリンモーターを回すことができる。
(5) 蛇口からでる水道水に帯電体を近付けると引き寄せられる。
 これは水分子が極性を帯びているためで,+−どちらの帯電体を近付けても引き寄せられる。
4 コンデンサ
 電気を蓄えるには二つの導体を向かい合わせて+と−に帯電させればよい。
 一般に平行平板の場合蓄える電気量は面積Sと電圧Vに比例し,間隔dに反比例する。
画像
 dを小さくすると多くの電気量を蓄えることができるが,近すぎて放電するので注意が必要。
 εは真空よりも不導体を間にはさんだほうが大きくなる。
 CDRのケース(ポリプロピレン)の外側と内側にアルミニウムはくをのりではり付ければかなりの電気量を蓄えることができる。
 コンデンサとして市販されているものは,低電圧用であり,摩擦電気のような高電圧に対しては使用できない。
5 静電誘導と誘電分極
(1) 静電誘導
 帯電体を近付けると導体は,自由電子が移動し,+極と−極に分かれる。
 このとき帯電体に近いほうが異種の電気で,距離が近いので引力となる。
画像
(2) 誘電分極
 不導体の場合は電子はすべて原子核に束縛されており自由電子はないが,電子の軌道がずれることにより原子が分極する。
 その結果帯電体に近いほうの表面には異種の電気が,反対側には同種の電荷が現れる。
画像
6 フランクリンモーター
(1) 図の上から回転子に電荷が飛んだとすれば,同種の電荷の反発力で回転する。
 図の下側ではアース(接地)してあるので電荷は逃げる。回転が続けば上から下に次々に電荷が移動する。
画像
(2) 普通のモーターに比べコイルが必要ない分小さく作ることができるので,マイクロマシーンの動力として脚光を浴びている。
(3) 回転子は軽く息を吹きかけて回転する程度に針を調節する。
(4) 静電高圧発生装置(ヴァン・デ・グラーフ起電機)や誘導コイルの使用は必ずアースを取ること。
 電圧が高いのでもっと質量の大きいもの,例えばフィルムケースなども楽に回すことができる。必ず付き添うことが必要である。
(4) 圧電素子は電圧がさほど高くないので回すのは難しい。