さびのできる条件を調べよう
  育てたい資質や能力

1 鉄くぎがさびる様子の観察を通して,自然界においては身の回りのほとんどの物質が空気中の酸素と反応し,さびていくという見方や考え方を養う。
2 鉄くぎがさびる要因を,条件制御しながら追究する能力を養う。
  学習のポイントと配慮事項

1 さびのできる三つの要因「水」「酸素」「食塩」について,それぞれの要因を入れるか入れないかに注目させながら追求させる。
2 イオンについては学習しないので,用いる試薬によって検出されるイオンの説明は事前に行う。
  理論的な背景

1 「さび」とは
 金属の表面は空気や水などと接している。表面の金属原子は電子を失って陽イオンになり,さらに変化して酸化物になる。
 このようにしてできた化合物がさびである。さびには,鉄の赤さびや銅の緑青(ろくしょう)などがある。
2 さびと燃焼の違い
 さびも燃焼も酸素と化合する酸化反応の一つである。さびはおだやかな酸化反応であるが,燃焼は熱や光をともなう急激な酸化反応である。
 さびも熱を出しているのだが反応がゆっくりなので発熱を感じない。
3 貴金属
 金属がさびるかどうかは,その金属が天然に産出する状態を見れば分かる。
 さびにくい金,白金などは金属の形で産出し,いつまでも美しく保たれている。
 このような金属を貴金属という。他のほとんどの金属は,酸素,硫黄などと化合して鉱石として産出する。
4 なぜさびる
 鉱石中に含まれる化合物から化学的な処理により還元して取り出した金属は,自然界では極めて不安定な存在である。
 そこで,金属は元の安定した状態に戻ろうとする。この安定した酸化物の状態に戻ろうとする現象がさびである。
5 鉄さびはどのようにしてできる
 鉄表面の鉄原子は空気中で水と接すると,電子を失って鉄(U)イオンFe2+となり水に溶け出す。
 失われた電子は水および酸素と反応し,水酸化物イオンOH-となる。
 生じた鉄(U)イオンと水酸化物イオンが反応し水に溶けない水酸化鉄(U)Fe(OH)2になる。
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   Fe → Fe2+ + 2e−
   H2O + 1/2O2 + 2e− → 2OH-
 全体の化学反応
   Fe + H2O + 1/2O2 → Fe(OH)2
 さらにFe(OH)2は水と酸素と反応してFe(OH)3になる。
 Fe(OH)2 + 1/2H2O + 1/4O2 → Fe(OH)3
 赤さびはFe(OH)3がさらに変化し,Fe2O3・nH2Oになったものである。
 酸素分子や水蒸気は表面にできたさびを通り抜けることができるので,さびは内部まで進行する。きずがついたり曲がったりしている部分は原子の並び方にひずみができているのでさびが進行しやすい。
 鉄がさびるときの反応は発熱反応である。このとき発生する熱エネルギーを利用したものが携帯用カイロである。
6 塩水がつくとさびるのはなぜか
 塩分には潮解性(固体が空気中の水分を吸って溶ける現象)があるので,さびに必要な水分を保つことができる。
 さらに,含まれる塩化物イオンCl-がさびの進行を速める触媒の働きをする。例えば,海岸近くでは,塩分の影響でさびが進行しやすい。
7 さびを防ぐにはどうすればいいのか
 (1) 塗料
 橋,船,車などはさびやすい環境の中で利用されるので,ペンキ等の塗料を塗って,さびを防いでいる。
 (2) めっき
 さびにくい金や銀などの金属で表面を覆うことにより金属を保護する。この方法をめっきという。
 水道の蛇口には鉄にクロムが,屋根などに使われているトタンには鉄に亜鉛が,缶詰などに使われているブリキには鉄にスズがめっきされている。
 (3) 表面処理
 アルミニウムは非常に反応しやすい金属であるが,緻密で薄い酸化被膜により内部が保護されているので(不動態),美しい金属光沢を保つことができる。
 アルミニウム製品は,人工的に酸化被膜をつくる処理(アルマイト加工)をしてさびにくくしている。南部鉄などは表面を黒い鉄の酸化物Fe3O4の被膜で覆うことにより内部を保護している。
8 さびない鉄があるか
 さびない鉄の製造は人類の長い夢であったが,19世紀の末に,鉄にクロムとニッケルを加えた合金であるステンレス綱が開発された。
 ステンレス綱がさびにくいのは,表面にクロムの酸化被膜ができるためである。現在利用されている金属の多くは合金として用いられている。
9 合金の種類
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