最初に発明されたのはどんな電池だったのかな
  育てたい資質や能力

イオン化傾向の異なる金属を電解質の溶液に入れて導線で結ぶと電気が起きるという見方や考え方を育てる。
  学習のポイントと配慮事項

1 いろいろな金属を準備し,どの金属の組み合せの場合に起電力が大きいか調べさせる。
2 希硫酸等の薬品濃度の確認や取扱い方の説明を忘れないようにする。
  理論的な背景

1 電池
 電池は,酸化・還元反応を利用して化学変化のエネルギーを電気エネルギーに変える装置である。
2 ボルタ電池
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 1800年,イタリアの物理学者であるボルタが2種の金属のイオン化傾向の差を利用して発明したこのボルタ電池は,最初の一次電池として電気化学の研究・発展に貢献した。イオン化傾向の大きい亜鉛がイオンとして溶け出すことにより,亜鉛板に残った電子は,導線を通って銅板に移動する。
   (負極での反応)Zn → Zn2+ + 2e-
銅板に移動した電子を銅板付近の水素イオンが受け取り,銅板付近から水素が発生する。
   (正極での反応)2H+ + 2e- → H2
 起電力は最初約1.1Vであるが,銅板の表面を水素の気泡がおおうことにより,水素イオンが電子を受け取りにくくなり,やがて起電力が低下する(分極現象)。
 分極を防ぐためには 過酸化水素水など(減極剤)を加えると起電力は元に戻る。
   H2 + H2O2 → 2H2O
3 ダニエル電池
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 1836年,イギリスの物理学者であるダニエルが分極の生じないダニエル電池を発明。イオン化傾向の大きい亜鉛がイオンとして溶け出すことにより,亜鉛板に残った電子は,導線を通って銅板に移動する。
   (負極での反応)Zn → Zn2+ + 2e-
 銅板に移動した電子を銅板付近の銅(U)イオンが受け取り,銅が析出する。
   (正極での反応)Cu2+ + 2e- → Cu
 水素の発生がないので分極は起こらない。
5 マンガン乾電池の構造
 乾電池は,電池の電解液を糊状に固めて密閉し,使いやすくした実用電池である。よく使われる乾電池に,マンガン乾電池がある。
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 亜鉛容器は負極となり,使用時には反応して亜鉛イオンになる。正極の炭素棒では,二酸化マンガンMnO2がアンモニウムイオンNH4+と反応して還元される。
 このとき,二酸化マンガンと亜鉛が直接接触すると,電子は接触した部分で流れてしまい,外部の回路に電子を流すことができないので,乾電池では直接接触しないように特殊な紙が用いられている。
6 備長炭電池
 アルミニウムはくを巻いた備長炭電池は,炭が正極で,アルミニウムはくが負極になる。
 負極ではアルミニウムがアルミニウムイオンとして溶け出し,正極では炭に吸着している酸素が電子を受け取る。
   負極  Al → Al3+ + 3e-
   正極  1/2O2 + 2H2O + 2e- → 2OH-
 備長炭は密度が大きく,電流を流すことができる。木炭や竹炭は電流を流さないため電池にはならない。
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