ヒントカードへの対応[クモの巣をさがそう]
  1 クモの巣でどうして獲物がかかるのだろうか。

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◎ クモの巣をよく観察してみよう。
(1) クモの巣を張る位置はどこか。
  それはクモの種類によって異なる。ジョロウグモやコガネグモは森の入り口,森の縁の部分につくる。クモの巣の張る位置についてさらに次の視点で観察する。
 ・ 高さは地上からどの程度か
 ・ 巣の大きさはどれくらいか。
 ・ 巣を張る方向があるか。
(2) どの順序で巣を張っていくか
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  まず,縦糸の外形である足場糸から張り始める。その後図のような順序で張っていく。
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◎ クモの巣の大きさと糸の間隔
 クモの巣の大きさを測定してみよう。縦糸の間隔と横糸の間隔はどう違うか。
(3) クモは何故自分の糸に絡まないか。
クモの糸は縦糸と横糸からなる。横糸には粘球といって接着剤を含んだ成分が付着している。
クモは縦糸と粘球の付いていない横糸(足場糸という)をたどることで自身の体には付着しない。また,足先から,粘球に触れても接着しないような物質が分泌されているために接着しない。
(4) クモはどのようにして餌をとるか。
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◎ クモの巣の震動とクモの反応
 クモの巣に棒を触れ,震動を与えてみる。どのような場合近づいてくるか,どのようなときに逃げるか,実験してみよう。
 @ 臭いに反応するのか。
   ひき肉とか,魚肉を近づけてみる。
 A 色や形に反応するのか。
   チョウの形をした紙を準備し,色が付いたもの,色が付いていないものを準備してクモの巣にかける。
 B 振動に反応するのか。
   チョウやハエなどがクモの巣にかかったときの振動にあわせてみる。
  2 クモの特徴は何だろうか。昆虫とどこが違うのかな。

 まずクモを巣の上で観察する。次に手で捕まえて管瓶の中に入れて観察するか,管瓶の中に入れ,エタノールで殺して管瓶からとりだし,観察すればよい。
 観察に当たっては,昆虫とのちがいを念頭に置き体節,頭部,腹部等に注目する。
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◎ クモの標本の作り方
 (1) クモの採集のしかた
  クモは昆虫のように羽をもたず飛ぶことがないので,採集は比較的容易である。
 【用意する器具・薬品】
  捕虫網,管びん,採集管,フィルムケース,棒,傘,白い布など。昆虫採集に用いるものと同じでよい。(殺して持ち帰る場合,70%エタノール,それを入れるインスタントコーヒーの空きびんなどが別途必要)
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 【方法】
 @ 管びんや捕虫網などを下にあてがい,その中に落とす。(造網性の種)
 A 上から容器をかぶせる。(地上徘徊性の種)
 B スイーピング:捕虫網で草むらを掃くようにかきまわす。(ただし,造網性のものは網の形がわからなくなるのでこの方法はあまり勧められない。)
 C ビーティング:木の枝の下に捕虫網や布,傘などをあてがい,枝を棒でたたいてクモを落とす。
 D シフティング:目の粗いふるいに落ち葉のかたまりを入れ,白い布の上でふるう。(地上徘徊性の微少種)
 【容器に入れる際の注意】
 採集したクモは,スクリュー管やフィルムケースなどに1個体ずつ分けて入れる。
 生きたものを同じ容器に複数入れると,共食いの恐れがあるので,止むを得ないときは1個体ずつ脱脂綿などで仕切って入れる。
 殺して持ち帰る場合は,標本をつくるときに用いる採集管に70%エタノールに浸しておいてこの中に入れる。
 あるいはインスタントコーヒーの空きびんなど,大きなびんにまとめて入れてもよい。(ただし,異なる採集地のものが混ざらないようにする。)
 (2) 標本の作り方
 クモ類の標本は,昆虫のような乾燥標本でなく,アルコール液浸標本が一般的である。この方法では,赤色や緑色などの鮮やかな色がすぐにあせてしまうので,必要であれば液浸にする前に写真を撮っておく必要がある。
 【用意する器具・薬品】
  管びん,スクリュー管,薬の空びんなどのガラス容器,脱脂綿,ビニールテープ,ラベル,70%エタノール(「消毒用エタノール」の名前で市販されている),以下用意できれば,グリセリン,氷酢酸,コルク栓,ねじ込み式ふた,焔管びん,スクリュー管
 【方法】
 @ 容器の3分の2位までエタノールを入れる。
 A クモ本体と一緒にラベルも中に入れる。ラベルは,鉛筆,タイプライタ,ワープロ・パソコンなどで作成。(ドットインパクト式,熱転写式,レーザー式プリンタ,コピー機による複写は可。インクジェット式プリンタ,感熱紙はインクがアルコールに溶け出したりして,判別不能になるため不可)
 B ラベルには,学名,和名,科名,採集地,採集日,採集者を記載する。
 C 管びんはコルク栓をして口にビニールテープを巻く。より完全には脱脂綿で栓をして,数本をまとめて大きなビンに口を下にして入れ,管びんごとエタノールに浸す(綿栓倒立法という)。スクリュー管の場合は,ふたがきっちりと締まっていればそのままで保存可能である。
 D 誤ってとれてしまった脚なども本体と一緒に同じ容器に入れておく。
 E グリセリンを1滴加えておくと,エタノールが蒸発しても乾燥しない。また,氷酢酸を少量加えておくと,関節が固くならないので,後で標本を調べるときに扱いやすくなる。
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◎ クモの体の特徴
 クモはよく虫と間違われる。体のつくりのちがいをじっくり観察する。
 @ 体の大きなくびれ
 A 足の数
 B 羽があるか
 C 眼はどんな眼か
 以上を大まかにつかんだ後,ルーペや実体顕微鏡で詳しく見ると新たな発見がある。
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  3 どんな獲物がかかるのだろうか。

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◎ クモの巣にかかる獲物をさがそう
クモの巣で糸に巻きつかれている獲物をさがす。
 以下のようなチョウやトンボ,甲虫などがクモの巣で見つかる。
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 クモの犠牲になる生物は,クモの巣がある位置まで移動する能力があり,クモの巣の粘着力より活動の弱いグループである。
 すなわち最も犠牲になるのは昆虫ということになる。
昆虫の採集法
 捕虫網を使う場合は,虫を見付けて捕る方法,草むらを掃くようにすくい捕る方法,樹木の枝葉,花などを叩いて,落ちる虫を下で受けて捕る方法(叩き網法)などがある。
 網を使わないで,樹皮を剥ぐ,朽木をくずす方法も意外に効果がある。
 灯火採集(ライト・トラップ)は,白幕と電灯を設置して集まる虫を捕る。街灯,自動販売機なども活用できる。
 餌で集めるベイト・トラップは,地表性甲虫類の採集用で,腐肉や糖蜜をビンに入れて,ビンの口が地面と同じ高さになるように埋めて虫を誘引する(落とし穴)。
 アリ類は糖蜜をカット綿に含ませて置き,集まったアリをピンセットでとる。
 腐果を好むチョウ・ガ,甲虫などは,餌を入れた網を吊るす方法がある。
 マツムシは鳴いている雄の近くにスイカなどの餌を置いて誘引するとよい。
 採集した虫は,体が変形,変色,分解しないよう,毒ビン(市販品あり)に酢酸エチルを入れて殺す。冷凍庫も利用できる。
 またチョウなどは胸をつまむように押す。
 肉食性のトンボ,大量の草を食べるバッタなどは,糞を排出させるために三角紙などに包んで餓死させる。
 注射器は大型のガ類以外は使わない。
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◎ 昆虫の標本をつくろう。
・ 器具・薬品と製作方法
 【水生昆虫】
 幼虫は,エタノールの70〜80%液に保存する(液浸標本)。
 薬局などで消毒用アルコール(70%)として市販されているものも利用できる。
 ただ,脱色しやすいので,色を保存したい場合はホルマリン4%液を使う。
 成虫は陸生昆虫と同じく乾燥標本にする。展翅するとき触角や尾,足などが長すぎて破損しやすいものは,液浸標本の方が簡単でまた安全である。
 【陸生昆虫】
 基本は,虫を乾燥し,ラベルをつけて,標本箱に入れるだけである。乾燥標本に出来ない虫(体が柔らかいカゲロウ,アブラムシ,チョウの幼虫など)は,アルコールの液浸標本がよい。標本箱は市販品を使いたい。自作品は湿気と標本を食べる虫が入りやすく,短期間の保存しかできない。蓋を金具で押さえる弁当箱式の合成樹脂容器も利用可能である。昆虫針も市販品を使う。事務用ピンはすぐに錆びる。
 1cm以上の虫は体(胸部)に針をさす。これだけでもよい標本ができる。必要なら羽や足の形を整えて乾燥させる。そのための展翅板,展足板などは自作可能である。1cm以下の虫は,紙に接着剤で張り付けて針をさす。
 ラベルは,必ずつけよう。採集した地名,年月日,採集者名を書く。
 保存中は,ナフタリンを切らさないこと。パラジクロルベンゼンは避ける。
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◎ 昆虫の採集
  昆虫を採集するためには下のことを考えてみる。
 (1) 昆虫の行動を考えてみる。
 ・ 集団生活か,孤立生活か。
 ・ 巣を造るか造らないか。
 ・ どんな生活があるか。
 ・ 何を食べるか。
 ・ 年間のうち活動する期間は。
 ・ 1日のスケジュールは。
 ・ どうやって雌雄は出会うのか。
 ・ どこに産卵するか
 ・ どうやって成長するか。
 (2) 昆虫の食性を考えてみる。
 ・ 花蜜を吸う     ミツバチ,チョウ
 ・ 花粉を食べる    ミツバチ,甲虫
 ・ 樹液を吸う     セミ,アブラムシ
 ・ 果実を食べる    ショウジョウバエ
 ・ 血液を吸う     カ
 ・ 肉を食べる     スズメバチ,トンボ,マイマイカブリ,ホタル
 ・ 腐った肉を食べる  ハエ,シデムシ
 ・ 動物の糞を食べる  糞虫類
 ・ 枯れた木を食べる  甲虫類
 (3) どんな採り方が適当か
 ・ 昆虫の行動を考えて出会う機会を増やす。
 ・ 大きさを考える。
 ・ 防衛反応を考えて,毒虫には気をつける。
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  * 攻撃的な虫には気をつける。
 引用 川の生きもの図鑑 鹿児島の自然を記録する会 編 南方新社発行