タマシダはどうして木の上で生きていけるか。
  育てたい資質や能力

1 植物にとって,水分は欠くことのできない物質で,水分を吸収,保持する地下部には生きるための知恵が隠されているという見方や考え方を育てる。
2 植物の体は似たような細胞からできているという見方や考え方を育てる。
  学習のポイントと配慮事項

1 植物の環境への適応の一つとして根を肥大化させ水分を保持する一つの機能をもたしていることに気付かせる。
2 タマシダの根を引き離した後をそのまま放置せず,根を埋めて元に戻したり,形を整えたりすること。
3 また,根を取り出すとき,生えているタマシダの玉の量が少ないときは採取しない。
  理論的な背景

1 タマシダ
 タマシダは東アジア,四国,九州の日当たりのよい乾いた海岸沿いに群生するが,本州では観賞用に栽培されることが多い。地上生又は岩上・樹幹に着生し,地上茎,あるいは地下茎が芽を生じて繁殖し,群生する。茎には鱗片があり,根ではなく,茎であることが分かる。根茎の一部に球状の径1.5p内外のいも(塊茎)をもつ。
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2 着生植物
 大きな樹木に木とは異なった植物が付いていることがある。このとき木から養分をもらってなければ着生といい,根を植物体に食い込ませ,養分をもらっていれば寄生である。
 タマシダも,しばしば大きな樹木や石垣で見かける。引っ張ると簡単にはがれることから,着生植物である。
 着生植物は土のない乾燥しやすい環境に生きている。このため水を蓄え,水を放出しないように葉が厚かったり,先端部がとがっていたりする。
 しかしタマシダは葉に蓄えるだけでは少ないので,特別な水瓶をつくっておく必要がある。タマシダのイモは水瓶としての役割をもち機能している。
3 イモの正体を確認する方法
 (1)このイモは貯蔵庫か,ガン化した組織か,もし貯蔵庫の時は何を蓄えているか。
 植物にできるイモは養分や水分を蓄える貯蔵庫としてある場合と,寄生あるいは共生する生物が住み着いてガン化を起こしてできている場合がある。
 養分を根に蓄えるとき一般的にはデンプンとして蓄える。デンプンを確認する反応としてヨウ素デンプン反応がある。ヨウ素デンプン反応の起こらない場合,その他の物質が蓄積していることになる。
 デンプン以外の貯蔵物質としては水がある。水を蓄えている組織を貯水組織と呼ぶが,その時はイモの細胞中には水分を蓄える機能をもつことになる。
 水がイモの主成分であることを確認するには,予め計量していたタマシダの塊根をすりつぶしてガーゼでこし,水分を飛ばせばよい。水の量を測定すると,タマシダの根には多量の水分を含むことが理解される。
 また,イモがくっついたままであれば長期間土から掘り出した後も生きていける。
 でんぷんが貯まっていればさわれば,ぬるぬるしたり,べとべとしたりする。
 イモの中に生物が住んでいたら,肉眼で見える大きさであれば,イモを割ってその痕跡をみればよい。また,微小な生物だったら,顕微鏡で確認すればよい。
 また,イモの中で微生物が住んでいると言うことであれば,核酸を含むため酢酸カーミンで染まる。
 (2) イモは地下茎か,根か
 イモの発生起源は,ジャガイモのように茎が肥大化する場合と,サツマイモのように根が肥大化するの場合の2種類がある。
 地下茎は茎の一部であるので,もし,茎に鱗片等があれば,イモにも鱗片が付くことになる。
 根であれば,イモから枝分かれしたひげ根のようなものが出る。
 地下茎であれば,芽が出るときはツルの付いている方でなく,その反対側の先端部からでる。
 根であれば,ツルの付いている方から芽は出る。
 イモの形は茎であれば,先端が肥大化していくので球形をおびる。逆に根であれば,線状の根が肥大化するので,流線型をおびることになる。
4 寄生植物
  木の上や植物体に根を食い込ませ,養分をもらっていれば寄生である。寄生植物によって養分を吸収する植物の種は限定されている。
  例 ヤドリギ       エノキ,ムクノキ などの落葉樹
    ヒノキバヤドリギ   ネズミモチ,サザンカ,ツバキ などの落葉樹