タマネギの気孔はどこにあるのだろう
  育てたい資質や能力

1 生物の種の多様性は細胞の多様性に関連しているという見方や考え方を育てる。
2 細胞を観察するのに必要な顕微鏡の操作の仕方を身につける。
  学習のポイントと配慮事項

1 気孔の配列が葉脈によって異なることを通して植物の種類によって細胞の形や配列も違っていることに気付かせる気づかせる。
2 植物が細胞でできていることを認識できること,気孔がガス交換,水分の調整に巧みに関与していることを理解させる。
3 顕微鏡の操作方法について繰り返し指導し,習熟させる。
4 被子植物と裸子植物の気孔の違いを見付けさせ植物の進化について触れることにも有効である。
  理論的な背景

1 表皮について
 植物の器官の外側は表皮の細胞でおおわれている。
 表皮細胞の空気に接する面では,細胞壁の外側にクチンとロウでできたクチクラと呼ばれる透明で水を通さない層がある。
 クチクラの表面にはさらに細かいロウの粒が一面に分布している。
 葉や茎・果実・種子の表面が水を弾くのは,クチクラと表面のロウのためで,雨水が内部に浸入したり,雨水に細胞内の水溶性物質がしみ出したり,また乾燥したときに水分が蒸発したりするのを防ぐはたらきがある。
 クチクラは一般に表面に光沢を与え,特に照葉樹と呼ばれる常緑広葉樹(ツバキ,シイ,カシ,タブノキ等)では発達し,テカテカと光っている。
 表皮の観察には容易にはぎ取りやすい植物を選ぶことが実験をスムースに行わせる。
 ツユクサ,ムラサキツユクサ,ハマオモト,スイセン,アダン,タマネギ,ニンニク等容易に表皮がはげる単子葉植物を薦める。
2 気孔について
 表皮の中には表皮細胞の隣り合った細胞の間にすきま=気孔ができていることがある。
 気孔の孔辺細胞は他の表皮細胞と異なり,葉緑体をもっている。
 気孔は主に葉の裏側に分布し,表側にはないことが多い。これは表側は一般にクチクラ層で覆われるのが一般的なため,孔辺細胞までクチクラ層で覆われると,孔辺細胞に柔軟性が失われ,水分調節の働きを失ってしまうからと考えられる。
 また気孔があると,降水などのとき,水の浸入を防ぐのに不利だからと思われる。
 常時葉の裏面が水に接しているスイレンのような葉には逆に葉の表側だけに気孔がある。
3 裸子植物の気孔
 裸子植物の気孔を見ると直線上に整然と並んでいる。
4 気孔による水分調節
 気孔は,両側の二つの細胞(孔辺細胞 )の形が浸透現象により水分が多いと膨圧が働いて2細胞間に空所ができ,水分が内部から放出されることになる。
 また,水分が不足すると,膨圧が働かなくなり,二つの細胞は接着し,もはや空所はできなくなり,水分は奪われなくなる。
5 その他
 裸子植物では,気孔に柔軟性が乏しく粉塵などを気孔で吸収してしまうと排出されずに蓄積してしまう。
 この性質を利用して大気の汚染度をはかる目安にも利用される。