ブラインシュリンプ(アルテミア)はどんな刺激に反応するのだろうか?
  育てたい資質や能力

 動物は生命や種族を維持するために,外的刺激に対して巧みな反応を示すことがあるという見方や考え方を育てる。
  学習のポイントと配慮事項

1 光以外の刺激(音や振動など)をなるべく与えないようにして行う。
2 動物の行動の中に方向性のある刺激に対して方向性のある反応があること(走性)を実験によって検証する。
  理論的な背景

1 ブラインシュリンプについて
 ブラインシュリンプは,アルテミア(学名Artemia salina)と呼ばれる塩水で生活しているエビの仲間で,日本の水田などで見られる淡水産のホウネンエビの近縁種である。
 アメリカのソルトレイクなどでその卵が採取され,日本に輸入されている。
 その卵は,24時間でノープリウス幼生としてふ化し,栽培漁業において稚魚などの餌として用いられている。
 パン酵母などを餌として与えると,約一か月で成体(8〜15mm)になり,産卵することができるようになる。
 卵はペットショップやホームセンターのペットコーナーなどで300〜500円程度で購入することができる。
2 ブラインシュリンプの行動について
 ブラインシュリンプは,ノープリウス幼生のころに正の走光性を示す。
 成体になってからも正の走光性を示すかは不明である。
 また,走電性や走化性についても調べてみたが顕著な走性は観察することができなかった。
 実験においては,光に対する反応が他の刺激に対する反応に比べて非常に強い反応を示すことがわかり,そこから走光性がブラインシュリンプの生活にどのようにかかわっているかを考察させていけばよいと思われる。
 走光性を調べるときには,ふ化させた塩水をそのまま利用して実験してもかまわないが,走電性を調べる場合,塩水のままで電圧をかけると電極で電気分解が起こり,発生した塩素によってブラインシュリンプが死んでしまうことがあるので,目の細かい網などでブラインシュリンプのみを取り出し,淡水(水道水を汲み置きしたものや蒸留水)を満たした容器の中で実験する必要がある。
 淡水でもしばらくの間は運動性が失われることはないようである。
 3 何故走性があるか。
 人との伝達手段をもたない生物の行動に対して「何故〜するのか。」という問いには完全に答えられないが,推定することは可能である。
 基本的には子孫を残すため,あるいは自己の生命維持のためと考えられる。
 ブラインシュリンプが暗い光に対して走光性があるのは,そこに餌となる植物プランクトンが光を求めて集まるためと考えられる。
 強い酸やアルカリに対して避けるのは身の危険を感じてさけるからで,もし,弱いアルカリに寄るということであれば動物食,弱い酸に寄れば植物食の可能性を考える。
 電気に対しては筋肉の運動の一つとして否応なく反応していると考えられる。