風の起こる原因はなんだろう
  育てたい資質や能力

 大きな空間で起きている現象を,小さな空間でのモデル実験を通して推測できるという見方や考え方を育てる。
  学習のポイントと配慮事項

1 温度差による弱い空気の流れなので,風がない日を選ぶ。
2 線香の煙があまり立ちこめないように留意する。
  理論的な背景

 空気は気圧の違いによって高圧部から低圧部へと移動する。この流れが風である。では気圧の違いはどのように生じるのだろうか。もっとも最初のきっかけは空気の温度差によって引き起こされる熱対流である。空気の温度差は,実験室内から地球規模のものまで様々なスケールで見られる。その原因は太陽からの日射量の違いと,地表付近の比熱である。温度と気圧・風を関連付けることにより,地球規模のエネルギーの循環を理解することができるようになる。
1 気圧傾度力
 高気圧から低気圧へ,等圧線に垂直に,空気を押し動かす力で,その大きさは2点間の気圧差(気圧傾度)に比例する。
 大気の運動では,気圧傾度力のほかに転向力(コリオリの力)がはたらくが,校舎内のスケール(数十m)では影響はほとんどみられない。
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2 転向力(コリオリの力)
 大規模な(数km以上)大気の運動では地球の自転によって起こる転向力(コリオリの力)の影響を受ける。転向力の向きは北半球では進行方向に向かって直角右向きである。
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 地上付近の風では,気圧傾度力のほかに転向力と摩擦力が関係し,等圧線を横切るように低気圧の方へ吹き込む。
 南半球では転向力の向きが逆になる。そのため南半球の低気圧は北半球と逆に時計回りに風が吹く。
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3 熱対流によって風が発生するしくみ
(1) 地表が太陽放射を吸収するとき,暖まりやすい地域と暖まりにくい地域があると,暖まりやすい地域の等圧面の間隔が広がる。
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(2) そのため上部の等圧面は高くなり,空気が周囲へ流れ出す。一方,地表では流れた空気の分だけ気圧が低くなる。
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(3) これによって暖まって気圧が低くなった地域に周囲から空気が流れ込み,熱対流が形成される。
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4 海陸風
 海水の比熱は1であるが,岩石の比熱は0.5程度である。そのため同じように日射があたっても温度の上がり方は岩石の方が大きく,海と陸では温度差が生じる。
 日中は日射によって陸地の温度が上がり,暖められた空気が上昇する。そのため不足した空気を補うように海から空気が移動する(海風)。
 夜間は陸地の温度が下がり,相対的に海の温度が高くなる。そのため海の空気が上昇し,それを補うように陸から空気が移動する(陸風)。
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5 季節風
 夏季は強い日射のために,比熱の小さい大陸で温度が上がり,空気が上昇する。そのため大陸では低気圧が発達し,不足した空気を補うように地表面では海洋から空気が移動する。日本付近ではこれが南東からの季節風となる。
 冬季の大陸は温度が下がり,定常的に高気圧が発達する。そのために地表面では大陸から海洋へと空気が移動する。日本付近ではこれが北西からの季節風となる。