熱気球を上げてみよう
  育てたい資質や能力

1 気象現象が太陽の放射熱などによる大気の膨脹・収縮によって引き起こされるという見方や考え方を育てる。
2 小さな空間での空気の上昇・下降の現象を通して,地球上で起こっている空気の上昇・下降について説明できる力を育てる。
  学習のポイントと配慮事項

1 エタノールを使って加熱するので,安全面に十分配慮する。
2 熱気球がうまく上がるように工夫することを通して,空気が暖められて膨脹することによって気球が上がっていくことを意識づける。
  理論的な背景

 熱気球はフランスのモンゴルフィエ兄弟が,火を燃やしたときにでる煙に空気より軽い成分があると考えて,この煙を集めれば人間も空を飛べると作ったものである。彼らは1783年に人類史上初の有人飛行を熱気球で成功させた。
 煙が上昇するのは,暖められた空気が膨張し,密度が小さくなったためである。自然界では太陽光によって暖められた空気が上昇して雲をつくっている。熱気球と空気の上昇から大気の鉛直方向の運動を考えることができる。
1 気球の種類と原理
 気球には空気より軽い水素ガスやヘリウムガスを袋に詰めるガス気球と,袋内部の空気をバーナーなどで熱して軽くして浮かぶ熱気球がある。
 通常よく使われるスポーツ用の熱気球はナイロン又はテフロンの布にポリエステル又はポリウレタンのコーティングを施した球皮で作られ,直径18m程度の大きさである。
 気球の下には通常籐製のバスケットをつり下げ,バーナーでプロパンガスを燃やして高度3000mくらいまで浮揚できるようになっている。
 ガス気球では,袋に空気より密度の小さいガスを充てんすることによって浮力を得ている。熱気球では暖められた空気が膨張して,まわりの空気より密度が小さくなることを利用している。
 熱気球に働く力は,
  F1:ポリエチレン袋やゴンドラなど気球自体の重さ
  F2:気球内部の空気の重さ
  F3:同体積の周囲の空気の重さ
の三つで考慮でき,熱気球が浮かぶための条件は,
  F1+F2≦F3
で示される。
 空気の質量は気体の状態方程式pv=nRTから求めることができる。
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2 圧力の低下
 空気の圧力(大気圧)は5500m上昇するごとに半分になる。
 温度が一定の時,気体の体積は圧力に反比例する(ボイルの法則)。実際には気温も低下するので,上昇した空気の体積と圧力,気温はボイル−シャルルの法則に従って変化する。
   (圧力)×(体積)÷(絶対温度)=(一定)
3 断熱冷却
 上昇気流がまわりの大気圧の減少にともない膨張するとき,まわりと熱のやりとりをしないまま上昇すると,空気の温度が下がる(断熱冷却)。
飽和していない(湿度<100%の空気)が断熱的に上昇するときの温度低下の割合はほぼ一定で,100mにつき約1℃である(乾燥断熱減率)。
 空気塊の温度が低下すると相対湿度は上昇し,ある高さで飽和(湿度100%)する。このとき空気中の水蒸気が凝結して雲になり,凝結熱(潜熱)が放出される。
 そのため断熱膨張による温度低下は乾燥断熱減率より小さくなり,100mにつき約0.5℃となる(湿潤断熱減率)。