指導資料[視程を調べよう]
  育てたい資質や能力

1 気象条件により,大気中で見通せる距離が異なるという見方や考え方を育てる。
2 現象と原因の関係をとらえながら気候や季節の変化を関連付けて考察する力を育てる。
3 規準を設けて,記録を統計的に処理する能力を育てる。
  学習のポイントと配慮事項

1 校内の見晴らしのよい場所で,遠くの建物や山などを生徒に尋ね調べさせる。
2 なるべく同じ時刻(太陽高度が高い時間帯 午前9時〜午後3時)を決めて観察する。
3 1か月以上のデータが必要なので,他の課題を行いながら観察を継続する。
4 前日の天気や天気予報なども記録して,天気の変化と関連付けさせる。
  理論的な背景

 近年,天気予報は気象庁や気象予報士がきめ細かく発表するようになってきたが,昔の人たちは身近な自然現象から,天気の変化を経験的に天気を予想してきた。
 これを観天望気という。
 観天望気は「富士山に雲がかかると雨」などが有名であるが,地域に特有なものがあり,地域特有のことわざとして残っていることが多い。
 こうしたことわざを検証しながら,自然を観察することで,科学的な見方や考え方を育てる。
1 視程について
 ある方向を見たとき,建物や樹木などの目標を認めることができる最大の距離を視程という。
 遠方にある目標物が見えるかどうかは,飛行機の離着陸,列車・自動車の運行,船の航行などに重要な関係をもっている。
 また,気象学的には大気の混濁や汚染の目安になる。
画像
 視程を表す単位はkmである。
 しかし目測ではあまり正確な値が得られないので,有効数字は一桁程度である。
 視程は真っ黒の目標物までの距離を遠くして,判別できる最大の距離で表すが,実際にはいろいろな距離にある建物や樹木を目標物に選び,どの目標まで判別できるか観察して決める。
 したがって,よい観測値を得るためには,適当な目標を数多く選ぶようにしなければならない。
 視程観測を行っている例としては,70年以上富士山の観察を行っている成蹊気象観測所(成蹊学園中学高等学校の私設観測所)がある。
 http://www.seikei.ac.jp/obs/index-j.htm
2 大気の透明度について
 遠方がよく見えたり,見えなかったりするのは,大気中の水蒸気,砂塵やばい煙などの量が多いか少ないかが影響する。
 遠い山が青っぽく見えるのは,山と観測者の間の空気が青色などの波長の短い光線を散乱しているためである。
 しかし水蒸気が多くなると,青色の光線だけでなく波長の長い黄色や赤色の光線も散乱して混ざり合うので白っぽくなる。
 このことから山が白っぽく見えると湿度が高くなって天気が悪くなると予想される。
 大気の透明度が悪くなる原因として次のような現象がある。
(1) 煙霧
 ごく小さい多数の乾いた粒子が大気中に浮かんでいる現象で,大気は多少乳白色に濁ってみえる。煙霧があると,黒っぽい背景は青紫色がかって見え,雲などの明るい背景は黄褐色に見える。
(2) 黄砂
 大陸の黄土地帯で,風によって吹き上げられた多量の砂塵が,空高く飛揚して風で運ばれてきたもの。天空一面をおおい,徐々に降下する。春先の西日本で多く見られるが,近年大規模化しており,中国大陸の環境破壊との関連が心配される。