1 研究に取り組んだ観察,実験(3 電流)


 1分野 実験4 電熱線の発熱とワット数の関係を調べよう



2 観察,実験のねらい
 電力が大きくなると電熱線の発熱量は大きくなることを理解させる。


3 観察,実験の実際
 @ ポリエチレンのビーカーを3個用意して,それぞれにくみ置きしておいた水100p3(100g)を入れる。
 A 6V−6W,6V−9W,6V−18Wの投げ込みヒータで右図のような回路を作り,電源装置の目盛りで6Vの電圧をかける。
 (コップの下には,厚めの発泡ポリスチレンの板を置く。机やスタンドに熱を奪われないようにするためのものである。)
 B 5分間電流を流した後,水温を調べる。
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4 問題点
(1) ポリエチレンのビーカーでは,水温上昇が電力や時間に比例せず,明確なきまりを見付けられない。
(2) 特にワット数が大きくなるほど,温度上昇が鈍くなる傾向がみられ,熱が空気中に逃げていっているのではないかと考えられる。


5 観察,実験のポイント,改善した観察,実験
(1) 観察,実験のポイント
 熱が空気中に逃げるのを完全に防ぐことはできない。熱量計を使用したとしてもジュールの法則を導くことは難しい。したがって,この実験ではできるだけ熱が逃げないように工夫し,電力と発熱量が比例することを見いだせるようにすることが大切である。
(2) 改善した観察,実験
ア 使用する容器の条件
 使う容器によって,温度上昇に違いがあるのではないかと考え,6種類の容器について調べた。微妙なかき混ぜ方の違いも実験値に影響を与えるため,それぞれの容器について3回ずつ実験を行った。調べた結果は次のとおりである。
(○:ほぼ比例関係を見いだせたもの,△:それ以外のもの)

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 どの容器も,電力が大きくなると温度が上がりにくくなる傾向が見られた。しかし,3回の実験の結果を平均すると,発泡ポリスチレンコップやミニカップラーメンの容器でよい結果が得られた(図1)。
 この実験結果から,発泡ポリスチレンの中に入っている空気が断熱材の役割を果たしているのではないかと考えた。そこで,良い結果の得られなかった使い捨て用プラスチックコップを重ねて空気の層を作り,同様に実験を行った。
 プラスチックコップを2個重ねただけでは効果は得られなかったが,3個重ねると図2のように比例関係に近い値を得ることができた。


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 さらに,普通の大きさの,カップラーメンの容器に入った水に,発泡ポリスチレンを薄く切ったものを浮かべて実験したところ,ミニカップラーメンの値に近付いた。このことから,容器に入れた水の表面ができるだけ外気に触れないように,ふたをすることも有効であると言える。
 以上のことから,この実験に使う容器は次のような条件を備えておく必要があることが分かった。
○ 容器は,発泡ポリスチレンのように断熱性の高いものを3個程度重ねて使用する。
○ 空気と触れる水の断面積を小さくするために,できるだけ小さい容器を使用する。
○ 発泡ポリスチレンを薄く切ったものを水に浮かべたり,容器にラップフィルムでふたをしたりして,水ができるだけ外気に触れないように工夫する。
イ その他,注意すべき点
 この研究を通して生徒に実験させる際には,次のようなことにも注意させる必要があることが分かった。
○ 多くの生徒が同時に実験を始めると,教室の電圧が低下することがあった。電源装置のメーターで電圧を合わせるのではなく,回路に電圧計,電流計をつなぎ,常に電圧・電流の値が一定であることを確認させながら実験する必要がある。電圧が低下した場合は,すぐに電圧計を見ながらすぐに6Vに合わせさせる。
 このように,思いも掛けない要因で実験結果が左右される場合があるので,同じ実験を数回行わせたり,実験を個別化したりして,できるだけ多くの値を集めさせ,平均値を用いて考察させる必要がある。
○ 外気との熱のやりとりを防ぐために,室温と同じ温度になったくみ置きの水を,実験には用いる。多くの値を集めるためには,多量のくみ置きの水を準備しておく必要がある。


              (宇検村立名柄中学校  玉城 智代)