1 研究に取り組んだ観察,実験(3 動物の世界)


 2分野上 実験2 だ液による消化のはたらきを調べよう



2 観察,実験のねらい
 だ液による消化の実験を通して,摂取した食物が消化酵素によって化学的に分解される(デンプンが糖に分解される)ことを見いださせる。


3 観察,実験の実際
 @ アルミニウムはくで容器を4個(A,B,C,D)作る。
 A 容器A,Bには,水を含ませた2重のろ紙を入れる。容器C,Dには,だ液を含ませた2重のろ紙を入れる。
 B A,B,C,Dの容器を,40℃ぐらいの湯を入れたペトリ皿のふたの上に置く。
 C 2〜3分後,それぞれの容器にデンプン溶液を2〜3滴滴下する。
 D Cの操作の5分後,A,Cはヨウ素デンプン反応の様子を,B,Dはベネジクト反応の様子を見る。Aはヨウ素デンプン反応で青紫色に,Dはベネジクト反応で赤褐色に変色し,B,Cは変化がないはずである。
4 問題点
(1) 教科書に示されている方法で実験を行ったところ,写真1〜写真4ような結果が得られた。アルミニウムはくの容器が焦げること,ベネジクト反応が明確に出ないことが問題である。
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(2) ベネジクト反応が明確に起こらないのは,火力が弱いからではないかと思い,火力を強くして実験してみた。(1)のとき炎の大きさは3cm程度であったので,炎を4〜5cmぐらいにして加熱してみたが,アルミニウムはく容器の底がかなり焦げてしまい,よい実験結果は得られなかった。
アルミニウムはく容器が焦げてしまうのは,糖やデンプンがろ紙を通り抜けてアルミニウムはく容器の底にたまるためであると考えられる。アルミニウムはく容器と,糖やデンプンを接触させないで加熱することができれば,ベネジクト反応が見られるはずである。
(3) 生徒にだ液を取らせると,恥ずかしがって十分な量のだ液が得られず,ベネジクト反応が起こりにくい場合が多い。だ液の採取の仕方も工夫する必要がある。


5 観察,実験のポイント,改善した観察,実験
(1) 観察,実験のポイント
ア デンプンや糖がろ紙を通り抜けてアルミニウムはく容器の底にたまらないように,アルミニウムはく容器を工夫して,焦げないようにする。
イ デンプンの分解に必要なだ液を採取する方法を工夫する。
(2) 改善した観察,実験
ア アルミニウムはく容器の工夫
 アルミニウムはく容器と糖・デンプンが接触しないように,アルミ容器の内側に薬包紙を重ねた容器を作った(写真5)。
 アルミニウムはく容器の上に薬包紙を置き,大きめのゴム栓(9号程度)を包むようにして成型する。容器の底に入れるろ紙も同じゴム栓から型を取って作ると,底にすき間のできないきれいなものができる。
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イ だ液の採取の工夫
 だ液をたくさん含んだろ紙を使うと実験も短時間に進む。そのため,前もって脱脂綿などを利用してだ液をペトリ皿にとり,それにろ紙を浸して十分にだ液をしみ込ませた。だ液の採取を生徒に行わせるときには,別室で行わせるとよい。
ウ 実験結果
 上述のような工夫をして実験を行い,その有効性を確認した。また,炎の大きさを4〜5cm程度にして,できるだけ早くベネジクト反応が起こるように加熱する。
(下の写真では,左側がだ液,右側が水を入れたものにデンプンを加えてある。)
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 アルミニウムはく容器だけのものと,アルミニウムはくに薬包紙を重ねた容器の二つでベネジクト反応の実験を行い,結果を比較した(写真11)。
 アルミニウムはく容器だけの実験では,底が黒く焦げてしまい,反応がよく分からない。それに対して,薬包紙を内側に重ねた容器では,はっきりとベネジクト反応が見られ,デンプンが糖に分解されたことが分かる。
 このことから,アルミニウムはく容器の内側に薬包紙を重ねる方法が有効であることが分かる。
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              (川内市立川内中央中学校  辻  俊之)