1 研究に取り組んだ観察,実験(5 運動と力)


 第1分野下 観察1 物体の運動のようすを観察しよう

       基礎操作 記録タイマーの使い方



2 観察,実験のねらい
(1) ビデオカメラやストロボ写真を利用して物体の運動を調べることを通して,運動を観察する視点や,運動の記録方法を身に付ける。
(2) 記録タイマーに通した紙テープを引いたときの動きを記録する活動を行い,記録タイマーを操作できるようにする。また,記録された打点の間隔と速さの関係を理解できるようにする。


3 観察,実験の実際
(1) 観察1
 @ 運動している物体の速さや動く向きの変化に注目して,物体の運動を観察する。
 A 物体の運動を,ビデオカメラやストロボ写真で記録し,運動の様子を調べる。
(2) 基礎操作
 @ 記録タイマーの紙テープを手で引き,引く速さを変えて記録される打点の違いを調べる。
 A 6打点間隔ごとに紙テープを切り取って横に並べ,速さの変化を調べる。


4 問題点
(1) 教科書等に示されているストロボスコープを用いた撮影は,部屋を真っ暗な状態にできないと記録は困難であるとともに,装置も大がかりなものになる。
(2) 紙テープを手で引いて手の動く速さを調べる方法は,面白みに欠け,生徒の興味・関心を高めることが難しい。また,生徒によっては極端にゆっくり引いたり,極端に速く引いたりし,6打点ごとに切って張り付けるという結果処理をしづらいこともある。


5 観察,実験のポイント,改善した観察,実験


(1) 観察,実験のポイント
ア 生徒が興味・関心を高め,目的意識をもって取り組むことができるとともに,準備及び結果処理が容易にできるような教材にする。
イ 物体の運動を,デジタルビデオカメラなどで録画した映像をパソコンに取り込み,北海道立理科教育センターのホームページ(http://www.ricen.hokkaido-c.ed.jp/index.html#)上で公開されている,デジタルコンテンツ「どう見る君」(北海道札幌南高等学校 大久保 政俊 教諭作成)を用いて,観察しやすいストロボ写真画像を作成する。
ウ 記録タイマーの紙テープを手で引く方法以外に,様々な物体を使って紙テープを引き,結果処理がしやすく,また条件に左右されにくく,一様の結果が得られる素材を探す。


(2) 改善した観察,実験
ア デジタルカメラと北海道立理科教育センターデジタルコンテンツ「どう見る君」を用いた観察,実験
@ デジタルカメラの動画撮影機能(30秒程度)を用いて動画を録画し,パソコンに取り込む。このときの,ファイル形式はAVIファイルであることが望ましい(他の形式では,デジタルコンテンツとの相性がよくない場合がある)。
A あらかじめ北海道立理科教育センターのホームページからダウンロードしておいたデジタルコンテンツ「どう見る君」を用いて,動画を加工する。
B 必要に応じて,パソコンからテレビの画面に映したり,プロジェクターでスクリーン等に映したりすることができる。あるいは,パソコンのプリントスクリーン機能を用いてプリントアウトしたものを生徒に配布し,運動の様子を調べることもできる。
画像
画像
写真1は,北海道立理科教育センター「どう見る君X」の起動画面。
写真2は,「どう見る君X」によって加工したストロボ写真を拡大表示したもの。全画面表示もできるが,デジタルカメラの画素数とのかかわりが大きい。


イ プルバックモーターカーを使って記録タイマーの使い方を身に付ける実験
 プルバックモーターカー(商品名:チョロQ)を用いて,紙テープを引かせると,適度な速さで処理のしやすい結果を得ることができる。ただし,使用するプルバックモーターカーは,小さいものだと出力が弱くて紙テープが引っ掛かり,進まないことがある。少し大きめのタイプ(玩具店等で700円前後で市販されているもの)が適している(写真3)。
画像


 実験を行う前に,速さの変化のグラフを提示し,速さが時間とともにどのような変化をするか予想させておくと,生徒の興味・関心を高めることができる。写真4のように,等加速度運動を予想できる生徒は少ない。
画像
 プルバックモーターカーの後部に紙テープを張り付け,その紙テープを記録タイマーに通す(写真5,6)。
画像


 プルバックモーターのゼンマイをいっぱいに巻き,紙テープの長さを1m程度にして実験を行うと,写真7のように,等加速度運動を表す右上がりの直線のグラフを得ることができる。短時間で生徒が結果を得られるので,実物投影機やパソコンのスキャナ等を用いてその結果を提示すると,結果の確認もしやすい。
画像


 このように,生徒の予想とは違う結果が得られるため,生徒の問題意識が高まり,次の「斜面を下る物体の速さと働く力との関係を調べる実験」で生徒は意欲的に学習に取り組んだ。


                 (薩摩町立薩摩中学校  宮下 徳貴)