1 研究に取り組んだ観察,実験(4 天気とその変化)


  第2分野下 実験2 雲のでき方を調べよう



2 観察,実験のねらい
 雲のできる様子を観察しながら,雲がどのようにしてできるかを,気圧,気温の変化と関連付けて推測できるようにする。


3 観察,実験の実際
@ 簡易真空容器の中に,デジタル温度計,気圧計を入れてからふたをする。
A 簡易真空容器の中の空気を抜いて,それぞれの変化を記録する。ゴム風船を入れた場合の風船の変化も調べる。
B 簡易真空容器の中を少量の水で湿らせて,線香の煙を入れる。次に空気を抜いて容器内の様子を観察する。


4 問題点
(1) 教科書に記載されている実験では,簡易真空容器のポンプを押して中の空気を抜いているが,この作業が,生徒には「中に空気を押し込んでいる」ように感じる。空気を抜くことで気圧を下げ,膨張させているのに,実際にやっている作業と矛盾していて理解しにくい。
(2) デジタル温度計による温度変化や風船による気圧変化が,はっきり現れない場合がある。
(3) 雲をつくる場合,線香の煙が雲だ(中に入れた線香の煙が再び現れた)と誤認識している生徒が多い。


5 観察,実験のポイント,新たに開発した教材教具


(1) 観察,実験のポイント
ア 簡易真空容器を使わない方法はないかを検証し,生徒がしっかり雲ができる様子を観察できるようにする。
イ 気温や気圧の変化がはっきり確認できるように工夫する。


(2) 新たに開発した教材教具
ア 炭酸飲料水用ペットボトルを利用した雲発生実験器
 炭酸飲料水用のペットボトル2本を下図のようにAとBに加工し,接着する。その場合,容器内に簡易気圧計と風船を入れておく。容器の下口はペットボトルロケットで使用する噴射ノズルを取り付ける。また,上口にはデジタル温度計を差し込んだゴム栓でふたをする(写真1)。
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 ※ AとBは超強力両面テープを利用して接着した。
イ デジタル温度計の感温部の工夫
 デジタル温度計の感温部のまわりの空気だけでは,感温部に温度変化させるだけの熱量が不足する。そこで,次のようにアルミニウムはくを付けることによって,温度変化を大きくすることができる(写真2)。
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 また,デジタル温度計によっては感温時間に10秒以上かかるものがあるので,空気を入れたり出したりする場合,その状態をしばらく維持しておく必要がある。
ウ 気圧の変化の調べ方
 ペットボトル内の気圧の変化を観察するには,気圧計よりも風船の方が生徒は理解しやすい。その場合,使い古した小さめの風船の方がはっきりと変化が分かりやすい。
エ 線香の煙の入れ方
 凝結核としての線香の煙を入れる場合,容器内が白くなるほど入れる必要はない。軽く,流し込む程度で十分である。
オ ペットボトル内に少量の水の入れ方
 容器内を水で湿らせる場合,霧吹きなどが便利である。湯やエタノールを利用すると,水の場合よりはっきりとした雲を観察することができる。
カ 観察,実験の方法
 @ デジタル温度計と気圧計,風船を入れた雲発生実験器に,少しだけ線香の煙を入れる。
 A 雲発生実験器の下口から,空気入れで空気を押し込み,中の空気を圧縮させる。その時のデジタル温度計や簡易気圧計の変化,風船の変化を記録しておく(写真3)。
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キ 研究の成果と今後の課題
 実験では,容器内に霧吹きで,水,湯,エタノールの3種類を吹き掛け,雲のでき方や温度変化を比較した。
 容器内に空気を押し込み,発射ノズルを引き,一気に中の空気を追い出したときの結果が以下のとおりである。
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 空気が膨張するときに雲ができる場面で,「わぁ!すごい」と驚きをもって観察できることを念頭におきながら,同時に,雲ができるときの気温や気圧の変化まで調べられたらより効果的であると考え,この研究を行った。
 結果的には,今回製作した教具を利用した場合,エタノールを利用したときが,雲のでき方もはっきりした。一方,温度変化については,湯を利用した場合が一番変化が大きかった。
 しかしながら,雲のでき方だけを調べるのであれば,1本のペットボトルで空気をできるだけ押し込み,ノズルを引いた方が,すごい音と同時にペットボトルの容器内が真っ白になり,雲のできる様子がはっきり観察できる。こちらの方が生徒も歓声があがり,納得していた様子だった(写真4)。
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 また,この実験では,二つのペットボトルを加工して接着しているが,接着には超強力両面テープを使用した。この方法が一番耐久性に優れ,空気漏れの課題を解決することができる。雲のでき方と気温や気圧の変化を調べる実験装置の開発には,まだまだ改善・開発の余地があるように思う。


                     (大根占町立池田中学校  野添 誠)