1 研究に取り組んだ観察、実験 1分野下 身近な物質で電池をつくり、電気をとり出してみよう。
2 研究のねらい 化学変化にともなって電気エネルギーがとり出されることを、電池を手作りしながら 確かめるために行う。備長炭電池は、身の回りにあるもので簡単に電気エネルギーをとり出すことができ、また長時間電流を流した後にアルミニウムはくがぼろぼろになることから、化学変化が起こったことに気づきやすい。そのため、化学エネルギーが電気エネルギーに変換されたことを教える実験として適している。しかし、授業の中で電流が流れないことがあり、必ずしも良い結果が得られるとは限らない。そのため、今回備長炭電池について調べ、改良して実験を行うことにした。
3 観察、実験の実際と問題点 (1) 観察、実験の実際 @ 備長炭に食塩水をしみこませたキッチンペーパーを巻く。 A @の上からアルミニウムはくを巻いて、電池をつくる。 B 目玉クリップを備長炭にはさむ。 C クリップつき導線のクリップをアルミはくと目玉クリップにはさみ、豆電球や光電池用モーターなどをつなぎ、電流を流し続ける。 D 数時間後に、電池のアルミニウムはくをはがして、そのようすを観察する。 (2) 観察・実験の問題点 グループによって電流が流れたり、流れなかったりした。また、豆電球や電子オルゴールなどの種類によっても結果がでやすいものとでにくいものとがあった。 そこで、原因はどこにあるのか、どのようにしたら起電力があがるのかという疑問点を解明するために、備長炭の大きさ、食塩水の濃度、アルミニウムはくの面積などを変えて、電流の大きさや電圧の大きさがどのように変わるかを調べることにした。
4 観察・実験の改善のポイント、改善した教材教具 (1) 観察・実験の改善のポイント 材料や分量などの条件を変えて、実験を行った。 ア 備長炭の形状と大きさ ・・・3×10cm、 4×20cm イ 食塩水の濃度 ・・・10%、20%、飽和 ウ アルミニウムはくの大きさ・・・5×15cm、10×15cm エ モーターや電子オルゴールの種類・・・太陽電池用 オ 豆電球の規格 ・・・1.5V−0.3A カ アルミニウムはく以外の材料・・・マグネシウムリボン *ろ紙のかわりに破れにくいキッチンペーパーを使用した。 (2) 改善した教材教具 ア 備長炭の形状 備長炭は高温で焼いてあり電気抵抗が小さいので、この実験では必ず備長炭を用いる。普通の木炭ではほとんど電流を流すことができない。また、食塩水やアルミニウムはくが密着しやすいように丸い(円柱状)ものがよい。また、3×10cmと4×20cmの2つの大きさのものを使ったが、下の実験結果のようにほとんど同じ結果が得られた。よって、備長炭の大きさにはあまり関係がないと考えられる。
イ 食塩水の濃度 食塩水の濃度は、10%、20%、飽和の3種類を使った。10%でも電流は流れるが、20%程度の濃度が一番よく流れる。 ウ アルミニウムはくの大きさ アルミニウムはくの大きさは5×15cmと10×15cmのものを使ったが、下の実験結果のようにほとんど同じ結果が得られた。よって、アルミニウムはくの大きさにはあまり関係がないと考えられる。備長炭は4×20cmを使用。
また、アルミニウムはくは備長炭を一周させなくても、電池としてのはたらきは変わらなかった。 エ 太陽電池モーターや電子オルゴールの種類 太陽電池モーターや電子オルゴールの種類は、低電圧・低電流でも作動する太陽電池用を使用した。0.7V以上の電圧が得られればはっきりと作動するので、実験に用いるのに適している。 オ 豆電球の規格 豆電球は、一番低電圧・低電流で作動する1.5V−0.3Aのものを使用した。豆電球は強い電流が流れないと作動しないので、光らせることは難しい。今回はかすかに点いた。 カ アルミニウムはく以外の材料 アルミニウムはく以外の材料として、マグネシウムリボン(90cm以上)をヤスリでこすり使用すると1.5Aの電流が得られ、電子オルゴール、モーター、豆電球のすべてを作動することができた。
備長炭電池は、1時間ほど電池としてはたらいた。電流が流れている間は、炭酸がはじけるような音がする。アルミニウムはくは、10分ほどで穴が開き始めた。太陽電池モーターや電子オルゴールなどの負荷がうまく作動しない場合は、食塩水を足したり、過酸化水素水を加えたりすると、効果が上がる。また、電圧を上げるには、電池をいくつか直列にするとよい。電流を強くするには、電池を並列にするとよい。 しかし、電池によって生じる電圧や流れる電流、負荷や様々な要因によって結果が変わることが多いので注意が必要である。 鹿児島市立 坂元中学校 吉田 智美 |