1 研究に取り組んだ観察,実験(4 化学変化と原子・分子) 1分野下 実験6 金属を加熱したときの質量の変化を調べよう
2 観察,実験のねらい ( 1) 金属を熱して,反応の前後の質量を正しく測定し,その結果をグラフに表すことができる。 ( 2) 実験の結果から,ある質量の金属と化合する酸素の質量には限度があることを説明できる。 ( 3) 実験の結果から,ある質量の金属と化合する酸素の質量との関係をグラフに表し,そこから規則性を見いだすことができる。
3 観察,実験の問題点 教科書には,本実験は定量的な実験であり,実験結果からどのように質量が変化していくか,グラフを使って予想させることを大切にしている。 しかし,銅の酸素との化合の場合は,決まった割合で質量が増えていかないことが多い。その原因としては,粉末状の銅をうすく広げることが難しく,空気とふれあわない銅粉末があることやかき混ぜる際に金属をこぼしてしまうことなどが考えられる。 これまでの研究で,飛散防止ネットを利用し,その課題は解決しているが,質量が大きい場合には銅と酸素の比率が4:1になりにくいということであった。 そこで,今回は銅粉末の質量が1.0g以上の場合の実験を中心に研究を進め,生徒が実験 結果からグラフを作成し,規則性を見いだせるように,教材を工夫する試みを行った。
4 観察,実験のポイント,使用した教材教具 ( 1) 観察,実験のポイント 銅粉末を十分に広げ,空気とふれあうような大きな容器を使用する。また,大きな容器を使用することで,かき混ぜるときに銅粉末をこぼしにくくする。 ( 2) 使用した教材教具 ・ 銅粉末(古いもの&新しいもの) ・ 柄付きステンレスボウル(100円ショップで購入) ・ 薬品さじ ・ 三脚 ・ 三角架 ・ ピンセット ・ ガスバーナー
5 実験の流れと結果及び考察 ( 1) 実証実験の流れ 【古い銅粉末】 @ 柄付きステンレスボウルを1度熱して冷ます。 A 柄付きステンレスボウルに銅粉末をうすく広げる。 B Aの質量をはかる。 C ステンレスボウルの柄を持ち,振りながらガスバーナーで加熱する。 D 冷めたら,質量をはかる。 E 銅粉末をかきまぜる。 ※ ステンレス皿に銅粉末をのせて加熱すると,銅粉末がステンレス皿にこびりつく。 そこで,柄付きステンレスボウルを使用し,振りながら加熱すれば,こびりつくことも少なく,銅粉末を空気と十分に触れあわせることができ,またかき混ぜるときも飛散の可能性を減少させられると考えた。 【新しい銅粉末】 上記の@〜Eをくり返す。 ( 2) 実験結果 【古い銅粉末】 ※ 30秒ごとではなく,300秒程度加熱した結果を載せた。 @ 銅粉末(1.00g)
結 果・・・銅粉末1.00gと酸素0.16gが化合 Cu:O2=4:0.64 A 銅粉末(1.20g)
結 果・・・銅粉末1.20gと酸素0.16gが化合 Cu:O2=4:0.53 B 銅粉末(1.40g)
結 果・・・銅粉末1.40gと酸素0.26gが化合 Cu:O2=4:0.74 C 銅粉末(1.60g)
結 果・・・銅粉末1.60gと酸素0.32gが化合 Cu:O2=4:0.8
【新しい銅粉末】 ※ 古い銅粉末と同様に,初めから300秒程度加熱した結果を載せた。 @ 銅粉末(1.00g)
結 果・・・銅粉末1.00gと酸素0.21gが化合 Cu:O2=4:0.84 A 銅粉末(1.20g)
結 果・・・銅粉末1.20gと酸素0.24gが化合 Cu:O2=4:0.8 B 銅粉末(1.40g)
結 果・・・銅粉末1.40gと酸素0.30gが化合 Cu:O2=4:0.86 C 銅粉末(1.60g)
結 果・・・銅粉末1.60gと酸素0.22gが化合 Cu:O2=4:0.55
6 成果と課題 古い銅粉末では,質量が大きくなるにつれて4:1の比率に近づけることができた。また,新しい銅粉末のほうが,どの質量でも4:1の比率に近づいたが,1.6gでは減少した。 考えた方法での結果は,定量的な実験としては誤差の範囲におさまるものではなかったので,今後,改善点を洗い出し,より4:1の比率に近づけられるようにした上で,実際の授業に取り入れ,生徒が自身の実験結果から規則性を導き出せるようにしたい。 出水市立米ノ津中学校 上 恭崇 |