1 研究に取り組んだ観察,実験

 

  地球の運動と天体の動きに関する教材教具の工夫  

 −「地球の自転や公転によって星や太陽はどのように動いて見えるか」の学習を通して− 

 

2 観察,実験のねらい

地球と宇宙に関する単元では,観察,実験や直接体験をさせることが難しい場合が多い。観察,実験を行わないと,生徒の知的好奇心を高め,科学的な見方や考え方を養うのは難しい。また,観察,実験を行ったとしても,日ごろから天体の観察が少ないので,正確な記録がとれず,自分の結果を地球や天体の動きと結びつけて考えられない面が見られる。

このような現状を改善するため,教室内において,生徒が観察した結果を表現できるような教材も必要である。また単元と特性からは,地球と天体の動きを関連付けて考えられるような教材の工夫も必要である。このような教材の開発・工夫は,生徒の理解に役立ち,学習指導要領の目標達成へとつながっていくと考える。

 

3 観察,実験の実際と問題点

  教科書(東京書籍)では,一つの観察「星や太陽の1日の動きを調べよう」と一つの実験「各季節に見られる星座を調べよう」が示されている。これらの観察や実験の問題点を以下に挙げてみる。

ア 事前に星座盤で学習していても,星座を見つけきれない。

  イ 観察は夜間になるため,保護者の協力を得たいのだが難しい面があり,安全面で不安が残る。

  ウ 方位磁針などを使うが,方位や角度などの特定が難しい。

  エ 全員が同じような結果にならない。

  オ 観察(宿題)をしない生徒がいる。

  カ 天候に左右される。

  キ 地球の公転モデルをつくって星の見え方を学習するが,全員が同じように見えない。

  このような問題点が挙げられるが,これらの問題点を全て解決することは困難である。一番の問題点は,観察,実験後におこなうまとめの段階として,自分の観測結果から,地球の動きと天体の動きを関連付けて考えられない生徒がいるということである。これに関しては,観察,実験前に十分な指導(関連付けて考えられるように)をしておくことで改善されることもある。しかし,観察や実験後のまとめの段階で,生徒のあまり正確でない結果からも,地球の動きと天体の動きを関連付けられるような教材教具があれば役立つのではないかと考える。

 

4 観察,実験の改善のポイント,開発した教材教具

 (1) 観察,実験の改善のポイント

ア 観察,実験の生徒の結果を生かす。

  イ まとめの段階で,地球の動きと天体の動きを関連付けられるようにする。

ウ 黒板で説明できるような教材教具で,生徒全員に同じような理解が得られるようにする。

 (2) 開発した教材教具

  ア 装置の概要

透明なプラスチック板の裏に紙をはり,図のような教材教具を開発した。プラスチックの円盤の大きさは直径90cmである。図1は太陽,図2は黄道12星座の円盤である。図3は,太陽と黄道12星座の円盤を重ねてある。これらの円盤をネジで留めて,回るようにしてある。これらは取り外し可能で,いろいろなパーツを作って交換が可能である。

なお,観測者の位置を生徒がイメージしやすいよう,人形を立ててある。

   【図1】太陽の円盤    【図2】黄道12星座の円盤 【図3】太陽と黄道12星座の円盤を重ねたもの

イ 教材を生かした学習展開

本教材の特徴の一つに,平面ながらも太陽や星の動きが容易につかめる点がある。円盤をまわすことで,太陽が東から南を通って西へ移動することが理解しやすくなる(図4)。太陽は東から西へ移動し,1日1回地球のまわりを回る日周運動の動きが容易に理解できるのではないかと考える。もちろんこの教材だけではなく,透明半球を使った太陽や星の観察をした後で活用し,総合的に考察することで,自分の結果と関連付けて具体的に理解しやすくなるのではないかと考える。

           【図4】円盤をまわして太陽の動きを考える

またこの教材を使うことで,同じ時刻の太陽と星座の位置関係の変化を知ることもできる(図5)。同様に,同時刻に見える星座の位置は,1日に1度ずつ東から西へ動き,季節ごとに見える星座が変わっていく。それぞれの方角の空の星座の移り変わりを理解させることにも活用できる。コンピュータのシュミレーションソフトを使用しなくても,黒板で1年間の天体の動きや,昼間見えない天体の動きを知ることができる。

       【図5】太陽が星座の中を移動して見える理由を考える

 

5 期待される効果

この教材は,教科書の実験,観察と関連付けて,地球の運動と天体の動きについての理解を深める学習の進め方に役に立つと考えられる。この教材だけで全てが説明できるわけではないし,全ての問題点が解決するわけではない。教科書にある観察,実験を行い,それを補助する教材教具としての活用が一番有効である。円盤が取り外し可能なので,いろいろな円盤を作ることで,さまざまな場面で利用できる可能性も持っている。開発した教材により,生徒が変容する様子が確認できればと考える。またさらに改良を加え,教材としての質をより一層充実させていきたい。

 

日置市立伊集院中学校 西丸松美