1 研究に取り組んだ観察,実験(1 身のまわりの現象)

 

  1分野上 音の大小や高低と物体の振動との関係を調べよう  

 

2 観察,実験のねらい

(1) 音の大小と振幅,音の高低と振動数の関係について理解させる。また,音の波形を視覚化し,発音体の振動の仕方と音の種類の関係について観察させる。

(2) オシログラフの時間軸を実感させる。

 

3 観察・実験の実際と問題点

教科書では,モノコード,ギターやスパイラルとじノートの針金の部分に厚紙を動かして音の高低を調べる実験などを行うこととなっている。また,コンピュータやオシロスコープを活用して音の大小や高低と振動数との関係を調べるということになっている。

弦の張力や長さに応じて音の高さが変わることが分かっても,それが振動数と結びつきにくいという弱点がある。例えば,ギターを弾いた時,音の高低を弦の長さや太さとの関係で感じることはできても,振動の速い,遅いを区別することはできない。

また,オシロスコープやコンピュータでも音波の波形を視覚的に観察させることができるが,装置の仕組みがどのようになっているのかを理解することは難しい。

 

4 観察,実験の改善のポイント,開発した教材教具

(1) 観察,実験のポイント

筒を用いて作成したマイクから声を発することで,声の振動がラップフィルムの前後の振動となり,アクリルミラーを振動させる。アクリルミラーにレーザー光を当てることで,音波の波形を視覚的に観察することができる。音程を変えて声を出すと,音の高低による振動数の変化を提示することができる。

また,回転鏡の回転装置では,オシロスコープ等のブラックボックス化している部分を観察することができ,波形として表す仕組みを考えさせることができる。

(2) 開発した教材教具

ア 材料

ベニヤ板,L型金具,木ねじ,モーター,銅線,ニクロム線,電池ホルダー,わに口クリップ,発泡ポリスチレン板,アクリルミラー,真ちゅう棒,滑車,輪ゴムなど

イ 製作過程

 () 回転鏡

@ 4cm四方の発泡ポリスチレン板を切り出し,中心に真ちゅう棒を取り付ける。

A 発泡ポリスチレン板にアクリルミラーを貼り付ける。

() 本体

@ 2枚の板に木ねじでL字型金具を取り付ける。

A モーター,乾電池ボックスを板に取り付ける。

B 電熱線を電池ボックスにはんだ付けし,取り付ける。

C 回転鏡を取り付ける。

() マイク

@ 塩ビパイプ2本を筒に取り付け,筒を安定させる。

A 筒の一方の口にラップフィルムを取り付ける。

B アクリルミラーを両面テープでラップフィルムに貼り付ける。

C ラップフィルムを付けていない口の方にもう一つの筒をつなげる。

 

5 実証授業の流れと結果及び考察

(1) 1年の授業

@ 「音の大小や高低と物体の振動との関係を調べよう」の実証授業の流れ

【1時間目】

【2時間目】

A 結果と考察

   生徒は興味をもって実験に取り組んでいた。

実験の前に音の高低についてのイメージを書かせた。図2に示すように,「高い音は振動が小刻みに,低い音は大きな振動である」というイメージをもって

いる生徒が割と多かった。

しかし,教科書の実験にあるように

モノコードやギターの弦からでは,生徒たちの実験前のイメージを確認することが難しい。そのため,自分の声を活用しながら,音の高低と振動数との関係を探ることができるこの装置は有効であると思われる。

(2) 3年選択の授業

  @「音について考えてみよう」の実証授業の流れ

A 結果と考察

 生徒は大変興味を持って,実験や話し合いに取り組んでいた。

「音さを動かすとレーザー光が波形になること」を考える場面では,図3のようにえんぴつを上下に動かすことを上下の振動にたとえ,紙を動かすと波形になって表われるということを考えた生徒もいた。

また,図4のように,ばねとおもりの上下運動とその軌跡を考えさせることで,回転鏡の回転によって時間が移りかわっていることを理解させることができたと思われる。

 

 

6 実証授業の成果と課題

レーザー光オシロスコープを用いることで,自分の声を確認することができるので,興味を持って実験・観察に取り組むことができる。また,レーザー光オシロスコープがグループ数分あれば,

一人一人がより主体的に実験に取り組むことができるものと思われる。

1年生の授業では,波形の時間軸の部分までは発展して学習することはできなかった。3年生の選択授業の感想を見てみると「授業ではそこまで深く考えなかったが,今日の実験をやってなるほどと思った」というもの,また「音の仕組みがよくわかった」という感想も多く見られた。1年生の授業の中でも波形と時間との関係の部分まで取り入れ,考えさせるような授業展開を検討していく必要がある。

 

引用・参考文献

 ・左巻健男 他:最新中学理科の授業2年 平成14

・樋之口 仁:理科の観察実験教材の開発―「理科の玉手箱2005」と波動教材の工夫,日本理科教育学会九州支部大会発表論文集第34p33-36 平成18

・文部科学省「中学校学習指導要領(平成1012月)解説―理科編―」平成11

いちき串木野市立市来中学校   上妻 恵美