1 研究に取り組んだ観察,実験(3 電流)

 

  「静電気は電流なのか」(実験 はく検電器を使って電流の流れを調べよう)  

 

2 観察,実験のねらい

  本単元では,静電気や電流回路の実験を通して,電流や電圧の概念を理解させること,また,電流の磁気作用に関する観察,実験を通して,電流と磁界の相互作用についての初歩的な理解をさせることが主なねらいである。しかし,これらに関する現象は身近に存在しているにもかかわらず,静電気と電流との関係を見出すことが難しいのが実情である。

  そこで,まず,静電気の学習において,静電気には+の電気と−の電気があることを視覚的にとらえやすくするために,電子の流れに注目した実験の工夫を考えた。本実験は,「3 電流」の導入に視点を置いた導入実験の1つである。身近な静電気に興味をもたせ,電流の性質やはたらきについて様々な実験を行っていく中で,意欲的に追究していく態度を育成するための実験,観察の器具を開発することにした。

 

3 観察,実験の実際と問題点

  本単元の導入として,静電気をストローと布(ティッシュ)を使って発生させる実験を通して,物質の組み合わせから,「斥力」がはたらいたり,「引力」がはたらいたりすることを観察し,静電気には少なくとも2種類ありそうだと気付かせる方法がよく用いられている。

  しかし,生徒の中には,「磁力」と混合してしまうこともあり,静電気を電流としてとらえることが難しいことも少なくない。また,4W用の蛍光灯や小さいネオン管を使って明かりを灯す実験においても,静電気の発生量に左右され,うまくいかないことも多い。さらに,蛍光灯に放電させる際も,回路として全体がつながっていないために,発光した現象を「電流が流れることで光る」ととらえることができないようである。

 

4 観察,実験の改善のポイント,開発した教材教具

(1) 観察,実験の改善のポイント

@ 静電気発生装置(写真1)を使い,「100人おどし」で静電気を体感させる。

A はく検電器を2つ用意し,はく検電器どうしを針がね導線(写真2)でつなぎ,帯電してなかったはく検電器のはくが開くことで,はく検電器からはく検電器への放電(電子の移動)を視覚的に確認する。

B はく検電器を2つ用意し,はく検電器どうしを発光ダイオード(写真3)でつなぎ,発光ダイオードの発光により,はく検電器からはく検電器への放電(電子の移動)を視覚的に確認する。

@〜Bの実験,観察をすることで,小学校での既習事項と関連付け,静電気も,乾電池と同じように明かりを灯すことができることをとらえさせることができると考える。これにより,静電気と電流との関係をより具体的に理解させることができる。

テキスト ボックス: *制作方法
※教育センターの本講座で作成
塩化ビニル管 2種類
フェルト
流し台用アルミシート
導線  ワニグチクリップ
              など

写真1

 

(2) 開発した教材教具

  ア 静電気の放電をさせるための自作教具

テキスト ボックス: *制作方法
針金の両端を安定するように丸め,中央は,ストローで覆う。持ち手となる。
*材料
針金(スチール) 約50cm
ストロー 1本

写真2

 

  イ 発光を確認させるための自作教具

テキスト ボックス: *制作方法
 発光ダイオードにワニ口クリップをつけた導線をハンダで接着する。
 安定が悪いので,実験のときは手に持って行うものとする。
*材料
導線  ワニ口クリップ
発光ダイオード用のハンダ

写真3

 

 

5 教材を使用した結果及び考察

はく検電器は,帯電させたものを近づけたときだけ開くことが確認できた。つまり,静電気を貯めることは難しかった。静電気発生装置から静電気を常に送り続けると,はく検電器に移った電気で発光ダイオードを発光させることができた。はく検電器のはくが開いたままであったので,静電気が発生していることを視覚的にとらえることができると考える。

 

6 使用した結果から考えられる課題

この教材は,教科書の実験,観察と関連付けて,「3 電流」の導入用教材として,関心や理解を高めるのに役に立つと考える。この実験の結果,はく検電器は蓄電には向いていないことである。したがって,蓄電性を高めたはく検電器の自作が必要であると考える。

また更に改良を加え,教材としての質をより一層高めたい。

 

喜界町立早町中学校 小城孝洋