エネルギー保存


【目的】
 重力だけが仕事をするときの物体の得る運動エネルギーを調べる。
 重力のする仕事は道筋によらないことを確認する。
【教科・単元】
 中学校理科1分野,物理T
【原理】
 ディスポーザブル注射器のピストンとシリンダー管の摩擦力は一定である。これを利用して,高いところから滑らせた物体の得た運動エネルギーを,摩擦力のした仕事として計測する。
【工夫した点】
・ 球が衝突時にピストンを押し,空気を勢いよく押し出すが,穴が(注射針の取り付け穴)小さいので,大きくした。穴が小さいと,特に球の質量が大きいとき満足な結果が得られない。
・ 何回か実験を繰り返すとピストンの劣化が見られるので,簡単に取り替えられるように,注射器はパイプに差し込むだけにした。
【準備】
金属製レール(バリアフリー住宅の敷居に使われるもので,ホームセンターなどで市販されている。),クランプ(2個),ディスポーザブル注射器(10mL用),アクリルパイプ(内径17mm),金属球,スタンド,金属球
【組立て】
@ 金属製レールの一端をスタンドに,もう一端を実験テーブルに取り付ける。
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A アクリルパイプと金属レールの取り付けは,ベニア板(12mm厚)にビス・ナットでしっかりと固定する。また,板もテーブルにクランプでしっかりと固定する。
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B 金属球が衝突時に注射器のピストンを押す。このときシリンダー内の空気が出やすいように,注射器のノズルを取り,大きな穴を開けておく。
【結果】
1 測定結果は次のようになった。
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2 補正
 摩擦や衝突により失われるエネルギーの分を,一律に0.65cmとして,ピストンの移動距離を補正してみると次のようになる。
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 また,補正値を基に,高さによりピストンの移動距離が何倍になるかをまとめてみると次のようになる。
 グラフを見ると,およそ球の質量とピストンの移動距離が比例していることが分かる。
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【留意点】
・ 衝突部分はテーブルにしっかりと取付けないと満足な結果が得られない。
・ 注射器を締め付けるとピストンとシリンダー間の摩擦力が変化するので,アクリルパイプは大きめのサイズを使用する。
・ エネルギーの原理から働く力が保存力だけの場合,力学的エネルギー保存が成立する。垂直抗力が仕事をしないことも確認させる必要がある。
・ 補正値を正しく求めるには,ピストンとシリンダーの摩擦力,レールの角度と球の摩擦力,球のレール上での移動距離,球の回転のエネルギー,衝突の際に失われるエネルギーなどが考えられる。
 それらは現実には測定不可能なので,球の質量とピストンの移動距離が比例するような値を求めて使用した。


              (鹿屋市立大姶良中学校  平原 金智)


【参考資料】
 注射器を利用したエネルギー実験器(山口県教育研修所 吉村高男)http://www.toray.co.jp/tsf/rika/pdf/rik_013.pdf