授業が変わる教材教具「光合成と呼吸を確かめる」

水草とペットボトルを使った光合成実験の工夫

 

1 研究に取り組んだ観察,実験

 光合成の観察,実験において,オオカナダモを用いた気泡の観察が一般的である。この実験方法を元に,生物の代謝を簡単に知ることができる実験方法を研究した。

 

2 観察,実験のねらい

 生物は呼吸によって酸素を消費し,植物は光合成によって二酸化炭素を吸収し,酸素を放出していることを確かめる。

 

3 観察実験の実際と問題点

1)材料

  市販の500 mlペットボトル(炭酸飲料のものが観察しやすい),マツモやオオカナダモなどの水草(比較的成長がはやく,生育しやすいものがいい),メダカ

  ケメット簡易DO計((株)共立理化学研究所),pH試薬(pH assay kit pH測定試薬キット‐ aquamind laboratory),(メルクpHスティック MERCK KH試薬(KH assay kit ‐炭酸塩硬度測定試薬キット‐ aquamind laboratory),駒込ピペット,試験管

2)方法

  @ 500 mlペットボトルにカルキ抜きをした水と水草,メダカ1匹を入れたものを2本準備する

A 500 mlペットボトルにカルキ抜きをした水とメダカ1匹を入れたものを2本準備する

B 500 mlペットボトルにカルキ抜きをした水と水草を入れたものを2本準備する。

C 500 mlペットボトルにカルキ抜きをした水を入れたものを2本準備する。

D @〜Cのペットボトルを明るい場所と暗所にそれぞれ1本ずつ置き,数時間〜1日程度放置する。

  E 放置後のメダカの呼吸数(エラの動き)を観察する。

  F それぞれのペットボトルの水の溶存酸素をケメット簡易DO計で測定する。

  G それぞれのペットボトルの水を駒込ピペットで試験管に5 mlとり,pHを測定する。

  H それぞれのペットボトルの水を駒込ピペットで試験管に5 mlとり,KHを測定する。

I G,Hの結果からCO2濃度※を算出する。

CO2濃度の算出法 CO2(mg/L)=KH×10(-pH)×3.72×107

3)実験の結果と考察

  実験開始日時 9281115

24時間後の様子を検査する。

写真:実験の様子

以下のように実験に用いたペットボトルに番号をつけて,実験を行った。

実験番号

ペットボトルの内容

実験番号

ペットボトルの内容

@−1

光・オオカナダモ・メダカ

B−1

光・オオカナダモ

@−2

光・マツモ・メダカ

B−2

光・マツモ

@−3

暗・オオカナダモ・メダカ

B−3

暗・オオカナダモ

@−4

暗・マツモ・メダカ

B−4

暗・マツモ

A−明

光・メダカ

C−明

A−暗

暗・メダカ

C−暗

  

写真 pH測定         実験中の様子

 

  @ 実験,観察の結果

実験番号

気温

水温

DO

pH

KH

CO2濃度

呼吸状況

ppm

dH

mg / l

@−1

26.4

32

12以上

8.5

3

0.35

穏やか

@−2

26.4

32

12以上

9.0

3.5

0.13

穏やか

@−3

26.4

26

1以下

6.5

3.5

41.17

@−4

26.4

26

1以下

6.4

3.5

51.83

A−明

26.4

32

3

6.8

3.5

20.64

激しい

A−暗

26.4

26

3

6.8

3.5

20.64

激しい

B−1

26.4

32

12以上

8.7

3

0.22

B−2

26.4

32

12以上

9.5

3

0.04

B−3

26.4

26

2

6.8

3.5

20.64

B−4

26.4

26

1以下

6.6

3.5

32.70

C−明

26.4

32

7

7.2

4

9.39

C−暗

26.4

26

8

7.4

3.5

5.18

実験前の水

26.1

26

9

7.4

4

5.92

        実験前の水とは,実験用に準備した水を実験直前に測定したもの

        KHとは炭酸水素イオンの量を表す。

        KHの単位dHとはドイツの硬度を表す単位で,1 dH=約28.9 mg/lCa(HCO3)2に相当する。

        今回は発泡スチロールの箱でペットボトルを覆うことで暗所とした。

A 実験の考察

  明所と暗所にそれぞれ置いたメダカと水草を入れたペットボトルを比較すると,暗所のメダカは死んでいたことから,酸欠の状態になったと考えられ,DOの測定結果を見ても,呼吸による酸素消費の状況がはっきりとわかる。また,ペットボトルにメダカのみを入れたもののメダカの様子を観察すると,呼吸がかなり激しいことからも呼吸で酸素を消費していることが確認できる。

明所に置いたメダカの呼吸状況,DO測定からも,光合成により,酸素が放出されていることも確認できる。

また,呼吸,光合成による二酸化炭素の放出,吸収の状況もpHKHの測定結果から確認できる。pHの測定結果からだけでも,二酸化酸素の吸収,放出状況が推定できるので,光合成の様子を知る実験として有効ではないかと考える。

4 観察,実験の改善のポイント,開発した教材教具

1)多くの実験材料が簡単に入手できる。また,メダカや水草は繁殖,栽培が容易であるため,飼育環境さえ整えれば,さまざまな実験に長期的に用いることができる。

2)実験の方法が非常に簡単である。

3pHDOKH等水質検査の方法を知ることができる。また,それらを測定しなくても,メダカの呼吸の様子を観察することで溶存酸素の量を定量的ではないが大まかに知ることができ,光合成による酸素の放出,呼吸による酸素の消費を知ることができる。

なお,光合成によって水草から放出される気泡を数えられなくても光合成速度の違いを見るができる。

4)実験の用いる水草の種類,重量はできる限り統一すると比較しやすい。

5)水草にオオカナダモを用いた際は,原形質流動やデンプンの合成等の観察にも応用できる。

 

県立出水工業高等学校

教諭 野間口 元