酵素のはたらきを実感
1 研究に取り組んだ観察実験 酵素の働き
2 観察,実験のねらい 動物の消化については小学校6年次に,中学校2年次でも消化や呼吸について学んでおり,だ液に含まれるアミラーゼの実験も行っている。今回,アミラーゼのはたらきを確認するとともに,アミラーゼはだ液だけに限らず,他の生物にも含まれることを認識できる。また,酵素反応の速やかさを実感できる。
3 観察実験の実際と問題点 ”大根おろし”をガーゼでこしとり酵素液とする。また,基質のデンプンは同様にサツマイモをすりつぶしこしとったものと市販のデンプンを水に溶かしたものを用いる。
4 観察実験の改善のポイント,開発した教材教具 本校の生徒は農業の授業で,ダイコンにアミラーゼが含まれていることを学んでいるが,それを実験で確認してはいない。高等学校生物の教科書では酵素の実験はカタラーゼが主であるが,あえてダイコンを用いてアミラーゼの働きを確認することにより,より強く興味関心をもち,酵素作用に対する定着がはかれるのではないかと考えた。
5 実証授業の流れと結果及び考察
6 実証授業の成果と課題 農業科の先生の協力もありダイコンだけではなく,デンプンとして生徒が育てたサツマイモも用いることができた。 ダイコンに含まれるアミラーゼの働きの強さに感動した生徒も数名いた。また,アンケートの中には「もっと他の食べ物でも試してみたい。」という意見も多く見られた。 サツマイモは抽出液が茶色に濁り,使用することをあきらめかけたが,上澄みを捨て沈殿したデンプンを用いることによりヨウ素反応を確認させることができた。 また,2週間前に準備しておいたヨウ素液がヨウ素反応を示さずやや慌てた。前日にもきちんと予備実験を行わねばならないと感じた。 今後も校内で作られる作物を用いた実験を行っていきたい。
生徒の感想(一部抜粋) ・ 人のアミラーゼよりダイコンのアミラーゼの方が強いことがわかってよかったと思ったし,楽しかった。 ・ ヨウ素液を久々に使ってダイコンはデンプンを分解できることを知った。 ・ 食べ物には色々な酵素があると思った。 ・ 濃い青紫色が一瞬で消えることに驚いた。 ・ ダイコンとイモを擦るのが大変だった。ダイコンおろしのアミラーゼがすごくきれいに分解したのが驚いた。 ・ デンプンとヨウ素液をあわせたら,色が変わってとても神秘的だなあと思った。 ・ 普段食べているものがこんなにすごいとは思いませんでした。 ・ ご飯を食べた後,大根を食べるようにしたらよいかも。 ・ ダイコンがくさかった。
7 小中高連携の観点から 消化酵素に関係する指導内容の系統性をとらえると次の表のようになる。
小学校・中学校においては,「酵素」による化学反応としてではなく「動物の消化」について学ぶ内容が中心である。消化が酵素による化学反応であること,また酵素は動物のみならず植物にも含まれ生物現象に関わっていることを感じ取るには有効な実験と思われる。
まとめプリント
県立伊佐農林高等学校 教諭 泊 雅一 |