グラフ電卓を用いた高校理科実験方法の開発・工夫


【目的】
 高校理科においては,観測された実験データをグラフ等の数学的手段を用いることによって,データの
関係性を明確にし,法則を公式として決定するため,グラフ電卓を用いる。グラフ電卓の次のような利点を
生かした活用の在り方を探る。
@ 電卓であるので起動時間が短く,準備から実験開始までに要する時間を短縮できる。
A パソコンに比べ小型・軽量であるので,持ち運びやすく取り扱いやすい。
B 計測したデータをその場で簡単にグラフ化して確認したり,簡単に解析することができる。
C 計測したデータをパソコンに転送し,より詳細な解析を行ったり,まとめや発表を行ったりすることもできる。
【グラフ電卓の主な機能】
 使用したグラフ電卓は図1のvoyage200である(米国Texas Instruments社製)。この電卓は,機能を
機能を表すアイコンで,容易にアプリケーションを選択し操作することができる。次に主な機能を挙げる。
@ 数式処理(図2参照)
A 関数のグラフ(図3参照)
B 3次元グラフ(図4参照)
C 数列とグラフ
D 微分方程式の解曲線
E 統計処理
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【データ収集器とセンサー】
 温度や距離,音などのセンサーからの出力信号はアナログ量であるので,それらの出力信号をデジタル
信号に変換するために図5のCBL2TM (Calculator-Based LaboratoryTM2)というデータ収集器を用いる。こ
の装置をグラフ電卓と接続して使うことにより,実験データを簡単に収集することができる。データの収
集条件や解析には,グラフ電卓側で用意されるプログラムやグラフ電卓の機能を使う。データをリアルタ
イムで収集してグラフ表示することもできれば,いったん電卓と切り離してデータを収集することもでき
る。CBL2TMは4つのセンサー接続用チャネル(各種センサー用アナログチャンネル3つ,音波/双方向のデ
ジタルチャンネル1つ)を持ち,そのデータ収集能力は50,000個/秒(最大速度)の速度で,最大12,000
個のデータを収集できる。また,収集したデータや実験に使ったプログラムなどの設定をフラッシュメモ
リに保存できる。
 CBL2TMには,距離や温度センサーなど,約40種類以上のセンサー(Vernier社製)を取り付けることができる。
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【実験例】
 グラフ電卓を用いた4つの実験例を示します。(以下の例については、「理科の玉手箱」の高校物理の実
験の場所にあります。)
A 実験「冷却のしくみ」(理科総合A)
B 実験「自由落下運動」(物理T)
C 実験「音の速さ」(物理T)
D 実験「単振り子」(物理U)
【まとめと今後の課題】
 グラフ電卓を用いることで,実験開始からグラフを描くまでの時間が短くなった。しかし,色々なグラフ(図
形)から数式(関数)を作るときに,どの数式を適用するのが妥当であるかという数学的な問題が生じる。ま
た,パソコンに比べ安価であるが,グループ数の装置を用意しようとすると予算的問題も生じる。これらを
解消できれば,グラフ電卓を用いた実験は,より有意義で現実的なものになる。
【参考資料】
 グラフ電卓の参考資料
  http://education.ti.com/educationportal/
  http://www.naoco.com/index.html
 実験についての参考資料
  http://www.vernier.com.au/
  http://www.physics.niu.edu/


                    (鹿児島県立鹿屋工業高等学校  西 雄高)