植物組織の観察法


【目的】
 植物の各器官の組織を観察し,各組織の働きや分類(単子葉類と双子葉類)を確認する。
【単元】
 中学校理科2分野「植物の生活と種類」,理科総合B「生物の多様性」,生物T「細胞」
【工夫した点】
 植物組織を観察するためには,カミソリ刃で薄い切片を作製する必要がある。多くの生徒がこの作業を苦手としており,切片作製に相当な時間を費やさなければならない。そこで,切片作製の簡便な方法を幾つか紹介する。
【準備】
 カミソリ刃,T字形2枚刃カミソリ,簡易切片作製器,ピス,柄付き針,ピンセット,ペトリ皿,サフラニン,ファーストグリーン
【手順】
T カミソリ刃を使う方法(通常法)
<茎>
@ ハサミで,茎を5cm程度の長さに切る。
A カミソリ刃で茎の断面をできるだけ薄く切って,切片を幾つか作る。茎が軟らかいものはピスに挟んで切る。切片は乾燥しないように,水を入れたペトリ皿に入れておく。
B 作製した中で,最も薄い切片をスライドガラスに採る。水を1滴加え,カバーガラスを掛けて顕微鏡で観察し,スケッチする。
<葉>
@ ツバキやサザンカの葉を,縦に2回折る(写真1)。
A カミソリ刃で葉の断面をできるだけ薄く切って,切片をいくつか作る(写真2,1回切れば4枚の切片ができる)。切片は乾燥しないように,水を入れたペトリ皿に入れておく。
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B 作製した中で,最も薄い切片をスライドガラスに採る。水を1滴加え,カバーガラスを掛けて顕微鏡で観察し,スケッチする。
U T字形2枚刃カミソリを使う方法
@ 2枚刃カミソリで,茎や葉を切る(写真3)。軟らかいものはピスに挟んで切る。
A 何回か切った後,水を入れたビーカーに2枚刃カミソリを入れてゆすぎ,切片を取る。2枚刃の間に詰まっている切片は,柄付き針を使って取る(写真4)。
B 作製した中で,最も薄い切片をスライドガラスに採る。水を1滴加え,カバーガラスを掛けて顕微鏡で観察し,スケッチする。
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V 簡易切片作製器を使う方法
@ 茎など太いものは葉や茎をピスに挟み(写真5),簡易切片作製器(写真6)を用いる方が簡単に切片を作製できる。
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A 切片をスライドガラスに採って水を1滴加え,カバーガラスを掛けて顕微鏡で観察し,スケッチする。
【結果】顕微鏡での観察例
<T字形2枚刃カミソリ>
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<簡易切片作製器>
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【留意点】
・ サフラニンで染色すると道管が赤く染まり(写真11),ファーストグリーンで染色すると師管が緑色に染まって観察できる(写真12)。
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・ 教科書では茎の断面の例として,トウモロコシ(単子葉類)とホウセンカ(双子葉類)がよく登場する。しかし,下記のような校庭や学校近辺でよく見られる草本を使用しても,十分な結果が得られる(写真13〜15)。
(例)単子葉類:ツユクサ,カヤツリグサ,スズメノカタビラ,チューリップ など
   双子葉類:アレチノギク,ナズナ,ホトケノザ,セイタカアワダチソウ,ヒメジョオン など
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・ 生徒がカミソリ刃を使うとき,実験台をまな板代わりにして切ることが多い。カミソリ刃の刃先がつぶれて使えなくなるので,必ず植物組織を手に持って切片を作製させる。
【参考】
・ 『T字型カミソリを利用した植物の組織の切片作製』鵜飼信行・川上昭吾,2002,理科の教育(VOL.51,通巻603号),東洋館出版社


                 (鹿児島県立国分高等学校 讃岐  斉)