エチレンによる伸長成長の抑制


【目的】
 リンゴやバナナの果実等から放出されるエチレンが植物の伸長成長を抑制することを確認し,植物ホルモンの働きについて理解を深める。
【教科・単元】
 生物T「環境と植物の反応」
【工夫した点】
 リンゴの果実を使用する以外に,エチレンそのものを使用して,その働きを確認できる。
【準備】
 ダイコンの種子,リンゴの果実,脱脂綿,ペトリ皿,プラスチック製密封容器,枝付きフラスコ,エタノール,濃硫酸,沸騰石,砂皿,砂
※ エチレンの生成方法
 @ 枝付きフラスコにエタノールを約15mL入れ,濃硫酸10mLを少量ずつ加える。
 A 沸騰石を入れ,砂浴で加熱する。
 B 約170℃になったら,発生する気体を水上置換で捕集する(写真1)。
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【手順】
@ ペトリ皿3個に脱脂綿を敷いて水を含ませ,ダイコンの種子を10個ずつ入れる。1〜2日後に発芽したものを実験に使用する(写真2)。
A ペトリ皿をそれぞれA(対照区),B(リンゴ区),C(エチレン区)として,ペトリ皿を別々のプラスチック製密封容器等に入れ,Bには熟したリンゴを,Cにはエチレンガスを入れる(写真3)。
B 3〜5日後に容器から出して,芽ばえの長さを比較する。
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【結果】
 B(リンゴ区)とC(エチレン区)では,A(対照区)と比較して著しく成長が抑制された(写真4)。Bでは,リンゴの果実から放出されたエチレンが作用したと考えられる。
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【留意点】
・ エチレンを生成する際,170℃より低い温度ではジエチルエーテルが生成するので,このときに発生する気体は捕集しない。
 約130℃ 2C2H5OH→C2H5・O・C2H5+H2O ジエチルエーテル生成
 約170℃ C2H5OH→CH2=CH2+H2O エチレン生成
・ エチレンを密封容器に入れるには,注射器に吸引したエチレンを容器に注入して,素早く封入するとよい。


                 (鹿児島県立串良商業高等学校 飯田 史郎)