原核生物(ラン藻)の観察


【目的】
 原核生物であるラン藻の観察を行い,細胞共生説について理解を深める。
【単元】
 生物T「細胞」,生物U「生物の分類と系統」「生物の進化」
【工夫した点】
 イシクラゲ,ソテツともに入手しやすい材料である。特に,ソテツは県内の大部分の学校で植栽されているので,容易に材料を準備できる。
【準備】
 イシクラゲ,ソテツのサンゴ根,カミソリ刃
【手順】
T イシクラゲ(ネンジュモ目,学名Nostoc commune)
@ イシクラゲを採取する。
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 イシクラゲは地上性のラン藻で,芝生や土,コンクリート等の水がたまりやすい場所でよく見られる。雨後には吸水してブヨブヨになり,晴天が続けば乾燥して「乾燥ワカメ」のような状態になる。
A 観察には,吸水した藻体を使用する。乾燥した藻体を用いる際は,数時間水に浸して使用する。
B 藻体の小片(数mm)をスライドガラスに採り,水を1滴掛けてカバーガラスを載せ,ろ紙で包んで押しつぶす。その際,必ず実験台の上で押しつぶしを行う(軟らかい物の上で行うと,カバーガラスが割れる恐れがある)。
C 顕微鏡で観察,スケッチする。大型の細胞(ヘテロシスト,写真4)では窒素固定が行われていることを説明する。
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U ソテツに共生するラン藻
@ ソテツの根元の周辺を掘って,サンゴ根(写真5)を採取する。
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A サンゴ根の先端部をカミソリ刃で切って,断面を観察する。表皮層内にラン藻が共生している,緑色の環状部が見える(写真6)。カミソリ刃で切片を薄く切り取る。
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B 顕微鏡で,内皮細胞の中に共生しているラン藻を観察,スケッチする(写真7)。
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【留意点】
・ ミクロメーターや顕微鏡投影装置を用いて,ラン藻の細胞と真核生物(オオカナダモなど)の葉緑体の大きさを比較させる。イシクラゲの細胞は長径3〜6µm,葉緑体は長径3〜10µmなので,ほぼ等しい大きさであることを確認し,葉緑体の由来(細胞共生説)について理解を深める。
・ ソテツとラン藻は,どのような相互作用をしているか。互いの物質のやり取りについて考えさせる。