カタラーゼによる酵素反応


【目的】
 酵素(カタラーゼ)の性質や,酵素反応の特徴を調べる。
【単元】
 生物U「タンパク質と生物体の機能」
【工夫した点】
 電子てんびんを重量センサーとして利用し,コンピュータによる自動測定を行う。このことにより,酵素反応による気体発生量を定量的に調べることができる。
【準備】
 OSがWindows95・98・2000・me・xpのパーソナルコンピュータ。必要に応じてプロジェクターとスクリーン
 電子てんびん(風防つき,読取限度1mg,RS-232Cポートのあるもの),自作RS-232Cケーブル,100mLビーカー,過酸化水素水,ドライイースト,蒸留水
【手順】
 「理科実験シミュレーションと計測」をインストール後,メニュー画面から「酵素の反応」を起動する。次の画面が表示される。(kouso_tenbin.exe)
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※ RS-232Cケーブルの製作
 電子てんびんの取扱説明書を参考にして,電子てんびんとコンピュータを接続するRS-232Cケーブルを製作する。まず,コネクタとケーブルをはんだ付けでつなぎ(写真1),コネクタカバーを付ける。材料費は約2,000円程度である。
 コンピュータにRS-232Cポートがない場合には,USBへの変換ケーブルが販売されており,利用できる。
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※ 酵素液の調整
 ドライイースト5gを水300mLに溶いて,よく撹拌(かくはん)する。蒸留水で2倍に希釈した酵素液(50%酵素液),4倍に希釈した酵素液(25%酵素液),と,希釈しない酵素液(100%酵素液)の3種類を作る。
※ 基質液の調整
 市販の過酸化水素水を蒸留水で希釈して,5.0%,2.5%,1.25%の各濃度の過酸化水素水(基質液)を作る。
@ 電子てんびんとコンピュータを,自作RS-232Cケーブルで接続する。
A コンピュータの「酵素の反応」プログラムを起動する。
B 通信回線のCOMポート番号を選んでクリックすると,測定値がコンピュータ画面に表示される。
C 100mLビーカーに酵素液30mLを入れてから,基質液を30mL入れる。電子てんびんにビーカーを載せて風防を閉じる。電子てんびんの「TAREキー」を押して風袋重量を消去すると表示が0になる。「測定開始」ボタンをクリックすると,1秒ごとにグラフが自動的に作成されていく。気体の発生により重量が減少し,電子てんびんの表示値はマイナスになるが,コンピュータでは絶対値として処理される。
<例>
 ア 100%酵素液+5.0%,2.5%,1.25%の各濃度の過酸化水素水
 イ 100%,50%,25%の各濃度の酵素液+5.0%過酸化水素水
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D 一定時間測定を行った後,「測定終了」ボタンをクリックして,測定を終了する。次の測定を開始する前に「画面消去」ボタンをクリックすると,グラフが消去される。前の測定グラフと比較したい場合には,グラフ画面を消去せずに次の測定に入ると,新たなグラフが追加されていく。
E 作製されたグラフを基に,酵素反応の特徴を考察する
【結果】
<基質濃度による変化> 100%酵素液を使用
 最終的な生成物量は,基質濃度に比例する(図2)。
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<酵素濃度による変化> 5.0%過酸化水素水を使用
 最終的な生成物量は等しくなるが,酵素濃度が高いほど反応速度は高くなる(図3)。
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【留意点】
・ 酵素液を100mLビーカーに移し入れる際は,調整した酵素液をよく撹拌(かくはん)してドライイーストが均一になるようにしてから移す。
・ 酵素反応は,温度の影響を強く受ける。実験に使用するビーカーや過酸化水素水,蒸留水は数時間実験室に置いて,室温と同じ温度にしたものを用いる。
・ ビーカーを電子てんびんに載せた直後の重量表示は,一時的に変動する。表示値が安定してから電子てんびんの「TAREキー」を押して,測定を開始する。
・ 実験内容に応じて,測定時間は適宜変更できる(10分以内)。実験項目が多ければ,100〜200秒間の測定でも,初期反応速度を調べるには十分である。
・ 温度やpHの影響を調べるなど,様々な実験も可能である。
・ 重量の減少量の中には,生成物の酸素の他に,蒸発した水が含まれる。液面からの蒸発量はごくわずかではあるが(図4),気泡内に蒸発した水蒸気が酸素とともに放出される量は少なくないと考えられる。そのため,気体発生量の測定値は,過酸化水素濃度から計算される酸素発生量よりも少し大きくなる傾向が見られる。
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【参考】
・ 『カタラーゼの性質と働き−コンピュータを活用した実験−』1998,指導資料 理科第212号(通巻1236号),鹿児島県総合教育センター