原形質分離の観察


【単元】
 生物T「細胞」
【工夫した点】
 ユキノシタは半常緑多年生草本で,湿った地上や岩上に自生し,かつては民家の周辺等によく見られる植物であった。しかし,最近は宅地の整備・開発や庭園の乾燥化が進み,民家の周辺等では見られなくなってきている。ユキノシタの葉は,裏面が赤いものとそうでないものがあり,試料作成のとき,表皮をはがしにくいという欠点もある。そこで,もっと身近にある植物の中に観察・実験に適した材料があれば,生徒もより簡単に原形質分離の観察ができ,細胞膜や細胞壁の性質をよく理解できると思われる。
【準備】
 いろいろな植物の花弁(サルビア〔赤・青〕,インパチェンス,マリーゴールド,ベゴニア,トレニア,グラジオラスなど)
【結果】顕微鏡での観察例
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【授業の流れと結果及び考察】
(1) 授業の流れ
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(2) 結果及び考察
 生徒の中には,特定の実験材料でしか,特定の現象は観察できないと考えている者が多い。いろいろな植物組織を観察することで,教科書に掲載されている材料以外でも原形質分離が起こることが分かり,細胞膜の基本的な性質についての理解が深まる。高張液中で原形質分離が見られない植物細胞はどういう状態にあるのか等,細胞膜と細胞壁の接着状況を考察するのによい材料を与えたようである。細胞膜と細胞壁との接着物質を分解する酵素を作用させると,原形質分離が観察できると思われる。細胞内に多くの有機物を溶かしている浸透圧の高い植物細胞では,更に高濃度のショ糖溶液に浸すと,原形質分離を起こすと考えられる。


                 (鹿児島県立鹿児島水産高等学校 末吉 徳雄)
                 (鹿児島県立甲陵高等学校 宇都慎一朗)