骨格標本作製


【単元】
 生物T「動物の組織・神経系」,生物U「生物の系統と進化」
【工夫した点】
 生物室には,巣から落ちてしまった鳥の雛(ひな)や,窓ガラスにぶつかって気絶したり骨折したりした親鳥が,生徒から持ち込まれることが多い。可能な限り手当てを施し,無事に戻すことができる場合もあるが,残念ながら死んでしまうものもいる。そこで,死んでしまった動物を教材に使えないかと思い,骨格標本を作成することにした。文献等で調べ,簡単に作成する方法をいくつか試してみたので報告する。
【手順】
(1) 材料入手
 以下の方法で材料を入手した。
・ 校内で入手:コウモリ,スズメ,ヘビ,台風で飛ばされてきたアジサシ
・ 肉屋で入手:ニワトリの手羽,豚足
・ 飼育場で入手:ダチョウ(志布志町のダチョウ牧場から無料で入手)
(2) 解体・解剖・肉取り
 以下のような方法が文献に載っていたので,試してみた。
@ 煮沸
 十分に煮込んだ後,肉を取り除く。前処理(皮剥ぎ,内臓除去など)も自分で体験したい人にはよい方法である(処理が苦手な人にはお勧めしない)。
A 薬品処理
A 水酸化ナトリウム:強力すぎて軟骨まで溶けてしまい,骨格をうまく組み立てられなかった。
B 入れ歯洗浄剤:タンパク質分解酵素が入っているが効き目が弱く,思っていた以上に時間がかかる。
C パイプ洗浄剤:軟骨やじん帯が残り,関節がつながったまま処理できる。
B 昆虫の利用
 ミルワームが効果的である。
※ ミルワーム(meal worm):ゴミムシダマシ科の甲虫の幼虫で,ペットショップ等で鳥や魚のえさとして購入できる。1パック120円(約150匹)。
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(3) 漂白・乾燥
 「3%過酸化水素水に数時間浸して漂白するとよい」と文献にあるが,今回は行わなかった。肉取り・洗浄後に自然乾燥させる。
(4) 骨格復元
 解体・肉取りの作業を丁寧に行えば,軟骨やじん帯がつながったままの大きなユニットとして処理でき,復元作業をスムーズに行うことができる。
 文献には「骨の接合にはホットボンドがよい」とあったが,接着力が強くないので,多目的用強力接着剤を用いた。脊椎骨には針金を入れて補強した。
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【今後の課題】
(1) 肉取りの作業で様々な方法を用いたが,加減が分からずに骨がバラバラになってしまい,復元作業がうまくいかないことがあった。特にダチョウの頭部を完成させられなかったことが悔やまれる。軟骨とじん帯が残る程度になるよう,濃度や時間を工夫していきたい。
(2) 標本作製の材料になる動物は,定期的に入手できるわけではない。授業で生徒全員に実施させるには,ニワトリの手羽や豚足を用いる等,工夫が必要である。また,拒否反応を示す生徒がいる。
(3) 今後は小型・中型のほ乳類を用いて,標本作製に取り組んでみたい。
【その他】
 授業が始まる前に教卓の上に骨を置いておくと,数人の生徒が興味を示す。授業が始まると全員に骨を見せるのだが,必ず「それ本物?」という反応がある。「できるだけ実物を見てもらいたいよねぇ」と返す。全員に手にとって見てもらう。恐る恐る触る生徒,「見たくもない」,「汚い」などと言って拒否反応を示す生徒など反応は様々である。授業内容に直接関係なくても,何か一つ教材を準備していくと,授業開始がスムーズにいくことが多い。
【参考文献】
(1) 盛口満・安田守「骨の学校」木塊社
(2) 盛口満「骨の学校2」木塊社
(3) 高橋善樹「骨格標本制作記録」理科教室(2001年6月号)星の環会
(4) 三上周治「簡単骨格標本づくり」理科教室(2002年11月号)星の環会


                 (鹿児島県立高山高等学校 野田 知幸)