シラス露頭の観察


【目的】
 南九州に広く分布するシラスの露頭を観察し,大規模火砕流堆積物の特徴を確認する。
【工夫した点】
 シラスの構造についての文献は少ないので,特徴的な構造を写真と模式図で示した。
【教科・単元】
 理科総合B,地学T・U  「野外観察と地形・地質」
【準備】
○ 地形図(2.5万分の1,又は5万分の1)
○ 地質図:鹿児島県全体の地質図には,県企画調整課が作成した10万分の1地質図(平成2年発行)がある。日本全体の地質図は地質調査所がWebで公開している(日本地質図データベース http://www.gsj.go.jp/PSV/Map/mapIndex.html)。
○ 地質ガイド本:鹿児島県内の地学ガイドとして「鹿児島県 地学のガイド(上・下)」(鹿児島県地学会編,コロナ社)がある。
○ 地質調査用具:ハンマー,クリノメーター,記録用紙,カメラ
【手順】
@ シラスの層厚を測定し,下位の地層を確認する。
 下位に見られる地層の例:大隅降下軽石層,古土壌など
A シラス中の構造を観察する。
 例:亀割坂角レキ,ガスの吹き抜けパイプ,サージなど
B シラス中の軽石の最大直径,円磨度,淘汰(とうた)度を観察する。
C 角レキの岩石種を調べる。
D シラスより上位に見られる地層を調べる。
 上位に見られる地層の例:桜島の降下軽石層,アカホヤ火山灰層など
E シラスを教室に持ち帰り,顕微鏡で鉱物やガラス片を観察する。
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【露頭の例】
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【留意点】
○ 広義のシラスは,大規模火砕流の非溶結部を指し,鹿児島県内には十数枚の大規模火砕流が知られている。狭義のシラスは約2.5万年前に姶良カルデラ(現在の鹿児島湾奥部)から噴出した入戸(いと)火砕流の非溶結部で,南九州一帯に広く分布している。
○ シラスは水の作用による構造が見られないことから,数日程度の期間に一気に堆積したと考えられている。噴火の順序は,軽石の噴出(大隅降下軽石)→横なぐりの爆風(ベースサージ)→火砕流の流出(妻屋火砕流)→火口の大爆発(亀割坂角レキ)→大規模な火砕流の流出(入戸火砕流)と一連につながっている。このような大規模火砕流の例としては,1993年のピナツボ火山が知られているが,南九州の火砕流は,けた違いの規模であり,当時の西日本の生物は全滅したと考えられている。
○ 大隅降下軽石は大隅半島側で特徴的に見られることから,噴火は北西の季節風が卓越する冬に起こったと考えられる。
○ 入戸火砕流以前の大規模火砕流としては,阿多カルデラを起源とする”阿多火砕流”と,加久藤カルデラを起源とする”加久藤火砕流”が広く分布している。