第6学年理科学習指導案
平成16年9月15日(水)1校時
第6学年 計29人 (男子14人,女子15人)
指導者 宮内 見奈子
1 単元名 水溶液の性質とはたらき
2 単元について
本単元では,水溶液の性質(気体が溶けているものがあること,酸性・中性・アルカリ性のものがあること,金属を変化させるものがあること)等をとらえるとともに,水溶液の性質と働きを多面的に追究する能力や,日常生活に見られる水溶液を興味・関心をもって見直す態度を育てることがねらいである。
3 児童の実態
本学級の児童は,様々な実験器具を使用したり,色や形が変化したりするような実験を行う理科学習が好きであり,興味を持つと意欲的に取り組む。しかし,日常生活においてはほとんど意識されることのない内容や実験そのものに興味をもてない児童は,学習が進むにつれて意欲を失っていく様子も見られる。そこで,単元の導入を工夫することにより,学習意欲を高めることにした。一つの手段として,児童の身の回りにあり,一人一鉢でも育て,なじみ深い植物(ハイビスカス)から水溶液の色の変化を調べる試薬を作り,身近な水溶液を調べることにした。
4 単元の目標
(1) 水溶液の性質と働きについて興味・関心をもち,意欲的に調べようとする。
(2) 水溶液に溶けているものや性質による仲間分けなどについて,多面的に追究し,総合的に判断することができる。
(3) 安全に水溶液を取り扱ったり,リトマス紙を正しく使ったりして調べるとともに,多様な事実を整理して記録することができる。
(4) 水溶液は3種類に分類できることや気体が溶けているものがあること,金属の性質を変化させるものがあることについて説明できる。
5 単元の指導計画 (全12時間)
小単元 |
時数 |
主な学習内容 |
水溶液にはどんな仲間があるか |
4 (本時) |
・ リトマス紙を使って水溶液を分類する。 ・ ハイビスカスの試薬の色が水溶液によってどのように変わるか調べる。 ・ 各実験結果を基に話し合い,水溶液の仲間分けをする。 ・ 酸性,中性,アルカリ性に分けられることをまとめる。 |
水溶液には何が溶けているか |
3 |
・ 各自が調べたものについて,溶けているものを考える。 ・ 溶けているものを蒸発乾固によって特定できない水溶液について調べ る(炭酸水,塩酸,アンモニア水)。 |
金属を水溶液に入れるとどうなるか |
5 |
・ 酸性雨の話題を取り上げ,日常生活との関連を図り,水溶液には金属を 溶かす働きがあるかを調べる。 ・ 塩酸にアルミニウムはくを入れて変化を見る。また,溶けた液を蒸発さ せて観察する。 ・ 水溶液には,金属を変化させるものがあることについてまとめる。 ・ 学習を整理し,水溶液の性質と働きについてまとめる。 |
6 本時の実際(4/12)
(1) 目標
身の回りにある水溶液がハイビスカスの試薬によってどのように変わるか,興味・関心をもって調べ,水溶液の仲間分けをすることができる。
(2) 指導にあたって
○ 「つかむ,見通す」段階では,自分たちの身近な素材であるハイビスカスで試薬を作り,身の回りの水溶液がどのような色に変わるか予想を立てて取り組めるようにする。
○ 「調べる,深める」段階では,児童が水溶液を簡単に調べやすくするために,試験管の代わりに卵パックを用い,実験器具や試薬の扱い方に気をつけて実験を行えるようにする。また,赤系統の色,緑系統の色に変化することに気づかせたい。
○ 「確かめる」段階では,グループでのまとめを参考にし,試薬の色が薄くなるものも含め,水溶液は3つの仲間に分けられるということをおさえるようにする。
(3) 展開
過程 |
主な学習活動と予想される児童の反応 |
時間 (分) |
指導上の留意点 |
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つ か む 見 通 す 調 べ る 深 め る 確 か め る |
1 学習のめあてをつかむ。
2 実験の方法を考える。 ・ 自分で探してきた水溶液に試薬をス ポイトでたらし,色の変化を観察する。 3 実験する。 ・ スポーツドリンクがうすいピンク色になった。 ・ 水はうすいピンク色だよ。 ・ 洗剤は緑色になったよ。 ・ 黄色になった洗剤もあるよ。 4 実験結果を話し合い,色別に仲間分けする。 5 仲間ごとの性質や働きの特徴を考え, グループでまとめをする。 ・ 赤いものが多いね。 ・ 緑色に変わったものは少ないね。 6 学習のまとめをする。
7 次時の学習について知る。 ・ 水溶液には何が溶けているのかな。 |
(5) (35) (5) |
○ 前時のリトマス紙での色の変化を思い出させる。 ○ 食品や薬品を扱うので,衛生面や取り扱いには気をつけるよう指示する。 ○ 中性のものはハイビスカスの色が薄まるだけであるが,児童は色が変化したととらえて酸性の仲間に加えてしまうかもしれないので,あらかじめ指導しておく。 ○ 同じ水溶液であっても濃度によって色は異なってくるので,おおまかに赤系統,うすピンク,緑系統としてとらえさせる。 ※ 実験結果を的確に整理し,記録することができたか【評価】。 ○ 水溶液の性質や働きに気づかせるために,製品ラベルに目を向けさせるようにする。 ○ 仲間分けをするために,調べたものを黒板にはり出す活動を行う。 ※ 身の回りの水溶液を3つの仲間に分けることができたか【評価】。 |
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取り組んだ 観察,実験 |
ハイビスカスの試薬を使って,身の回りの水溶液の仲間分けをする。 |
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観察,実験のねらい |
身の回りにある水溶液が,ハイビスカスの試薬によってどのように変わるか興味・関心をもって調べ,水溶液の色の変化を的確に記録し,仲間分けをすることができる。 |
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1 観察・実験の実際 (1) 身の回りの水溶液を10種類ほど蒸留水で薄めながら卵パック(無色透明)に入れる。 (2) ハイビスカスの試薬をスポイトで2〜3滴加え,色の変化を観察する。 (3) リトマス紙での色の変化と比べ,水溶液を酸性,中性,アルカリ性に仲間分けする。
2 観察・実験のポイント (1) ハイビスカスの試薬の作り方 【準備するもの】 (ハイビスカス10個分の花びら,エタノール150mL) @ ハイビスカスの花びらを1枚ずつ剥ぎ取り,水で洗った後,小さくちぎる。 A エタノールで色素を抽出し,ろ過する。 B 長期保存する場合は薄い塩酸を少し加えて弱酸性にし,冷暗所で保存する。 (2) ハイビスカスの試薬の変色域
(3) 身の回りの水溶液を何でも自由に探させると,コーラなど色のついたものもあるので,濃い色がついていないものにする。 (4) どんな液体も必ず蒸留水で薄めてから使い,毎回ガラス棒は蒸留水で洗う。 3 反省,問題点及び改善点 ○ 前時にリトマス紙で実験をしていない水溶液を用いているグループがあり,リトマス紙の結果と比較することができなかったので,結果が分かっているものについてハイビスカスを使い確認するようにする。 ○ ハイビスカスからとった試薬で,各水溶液は赤,オレンジ,うすいピンク,黄,黄緑,緑など多くの色に分けられる。子どもの興味をひきつける面ではよいが,弱酸性と中性のものが薄いピンク色になり見分けがつかなかったので,酸性,中性,アルカリ性の3つに分類するには,やや困難な教材であるように感じた。 ○ 水溶液をそのまま持って来てしまい,実験場所が狭くなってしまう場合もあったので,フィルムケース等の小さな箱で持って来させ,余計なものは机の下にしまわせるようにした。 ○ 板書の構造化を図り,視覚に訴えるために板書は色紙等を使って工夫する。 ○ 試薬を活用する際にスポイトも大切であるが,ピペットも使えるようにした。ピペットは牛乳用のストローでも代用できる。 4 感想 奄美では馴染み深く,手に入りやすいハイビスカスの花を用いた実験に,子どもたちは水溶液を探す段階から変色までは興味を持って取り組んだ。どの水溶液が何色に変化したという事実は理解させることができたが,色が変化した結果から性質ごとに分類する学習,さらに,リトマス紙の色の変化と照らし合わせて酸性,中性,アルカリ性に分ける学習では戸惑う子どもも多く見られた。6年生では複数の事実を分析,統合し,いくつかの事実を説明する力を付けさせていきたいのだが,この時間にどのような事実を与え,どんな考えをもたせるのか,十分吟味する必要があると感じた授業であった。 |
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