1 単元名 第5学年「台風と天気の変化」

2 研究のねらい

本研究では次の4点主なねらいとして展開していく。

(1) 天気の変化には規則性があるという学習をもとに,台風時の天気の変化にも規則性があるかを予測し,実際に確かめる。

(2) 台風による強風や大雨,高潮などと,それがもたらす災害について調べ,自然の脅威を確認し,災害を未然に防ぐための努力を理解する。

(3) テレビやラジオ,新聞などの情報を活用することにより,安全で豊かな生活が送れることに気づき,それらの情報を活用していこうとする態度を育てる。

(4) 自然界の不思議な現象も科学的に調べることができることを知る。

3 研究の視点

(1)    自然の力のすごさ・不思議さを実感させるために,台風のしくみについて考えさせる。

(2)    自然界の大きな力も科学的な視点から解明することができることを理解させ,様々な事象を科学的に解

決していこうとする態度を育てる。

(3)    理科の授業における教師が提供できるソーシャルサポート

ア 情緒的サポート

    実験,観察,発表場面などにおいて,「大丈夫だよ。落ち着いて取り組んでごらん。」,「ここを工夫すると,もっと分かりやすくなるよ。」などの情緒的働き掛けを行うことで,学習に対する安心感や意欲を高める支援を行う。

  イ 情報的サポート

    実験,観察器具の使い方,解決のヒント,学習を進めるためにどんな調べ方をすればいいかなどの情報を提供する支援を行う。

  ウ 道具的サポート

    子どもが納得・実感できるような実験,観察の提示,ワークシートの活用など学習に必要な道具,グループ編成,座席などの学習環境に至るまでの様々な具体的支援を行う。

  エ 評価的サポート

    学習活動の過程や結果について,「どこでつまずいているのか,どこを改善すればよいか」,「どのような学習がよかったか」など,教師が子どもの学習への取組を肯定的に受け止め,その評価をフィードバックする。

4 研究の実際

  (1) 観察,実験の問題点

   ア 台風時の天気の変化や災害については詳しく取り扱うが,原因についてはあまり触れていない。この大きなエネルギーをもつ自然の原因を考えさせることが,科学的な思考力を育てるためにも必要である。

  イ 児童は実験の結果が分かれば,満足しているところがある。しかし,「生きる力」には知識と同様に,不思議なことや問題点などに気づき,解決していく力が大切である。

(2) 観察,実験のポイント,新たに開発した教材

ア 導入の工夫

@ 台風についての情報をこれまでの経験やビデオや写真などで与え,台風の不思議さ,台風のもつエネルギーのすごさを感じ取らせる。

A    実験方法を考えさせ,実際に台風と同じような現象を作れないか考えさせる。

イ 実験装置の工夫

  ・ 簡単で,身の回りのものを利用し,事象を再現できないか工夫させる。

ウ 生活に生かす工夫

@   本単元の学習後も台風が発生する可能性があるので,実際に調べたことをもとに確認カードを配り,台風の進み方や災害の発生状況などを調べ,学習したことを生活に生かすことができるようにする。

 A その他の自然現象の不思議さに気づき,調べていくための意欲付けを行う。

(3) 単元構成

過程

主な学習活動

○ 教師の働き掛け ♢ 児童の気付きや考え

※ 教師のソーシャルサポート等

台風を調べよう(1本時)

○ 台風のビデオを見る。

○ 台風に関する疑問点を出す。

○ 自分が調べたい問題で調査方法を考える。

○ グループごとに集まり,調査方法の検討をする。

○ 分かりやすく絵や文で実験方法を考える。

○ 台風の大きさ,渦の巻き方などに興味をもたせるような資料を与える。          (※ 道具的サポート)

○ 出てこないようなものは教師が示す。

(※ 情緒的サポート)

 

○ できるだけ実験で確かめる方法を考えるようにアドバイスする。             (※ 評価的サポート)

台風のなぞにせまれ(2・3)

○ 実験する。

(排水溝で渦の調査)

(カップ麺の容器を使った実験)

○ それぞれが工夫したことを実験させる。

          (※ 道具的サポート)

○ できるだけ簡単なもので似たような現象が起きるものを観察することが,実験のスタートだと意識させる。

  (※ 情報的サポート)

♢ 台風には渦がある

・ 身の回りで渦を巻くものは何か

・ 水で調べてみよう

・ 渦の巻き方には決まりがあるのか

・ 空気の渦をつくる方法を考えよう

 

(たらいを使った実験)(掃除機を使った実験)

 

台風大解剖(4)

○ 資料で調べる。

○ 台風に関するビデオを見てノートにまとめる。

○ 調査したことを発表する。

○ 学習のまとめをする。

・ 自然の大きな力も実験,観察方法を工夫すればその仕組みを調べることができる。

・ 台風は南の海上で発生し,初めは西へ進むが,その後偏西風により東へ進む。天気もそれにともない変化する。

・ 台風は大雨,強風,高潮などにより大きな災害を引き起こす。

○ 今後の調査の進め方を確認する。

○ あらかじめインターネットの資料を印刷しておく。

(※ 道具的サポート)

○ インターネットの台風関連のアドレスを配布し,自宅学習などで活用させる。     (※ 情報的サポート)

○ グループごとに発表した内容を他のグループは,ノートにまとめさせる(※ 情報的サポート)

○ 児童の発表をもとにまとめていく。(※ 評価的サポート)

○ 今後発生することが予想される台風についても調べていこうとする意欲をもたせる。

(※ 評価的サポート)

○ 台風以外の自然の力にも興味をもたせ,実験や観察をしていこうという意欲をもたせる。(※ 評価的サポート)

 竜巻はどうなっているのか?

 地球の大気の動きは?

 海流の動きは?

 火山のはたらきは?

 地震のしくみ?

(4) 実証授業の実際(1/4)

学習の活動

(児童の素朴な見方や考え方)

教師の支援・対応,

※ 教師のソーシャルサポート等

1 天気の変化の決まりを確認する。

2 学習のめあての確認をする。

台風について調べよう。

 

3 台風の資料を見る(ビデオ)。

4 台風に関しての疑問点

を考える。

(個人)⇒(班)⇒発表⇒分類

・ なぜ,渦を巻くのか。

・ なぜ,渦は左巻きなのか。

・ なぜ,目ができるのか。

・ どうして日本に来るのか。

・ ハリケーンとどこが違うのか。

・ 動きにきまりはあるのか。

・ 天気の変化にきまりはあるのか。

○ 1学期に学習した内容を想起させる(春の頃の雲写真)。        (※ 情報的サポート)

○ 本時,本単元の学習の流れを説明する。

(※ 情報的サポート)

○ 台風の様子がはっきりと分かる資料を準備し,その大きさや形,渦の巻き方などに目が向くようにする。

(※ 情報的サポート,道具的サポート)

○ 出てこなかった疑問点は教師が取り上げ,様々な角度から事象を見つめることの必要性を感じ取らせる。

(※ 評価的サポート,情報的サポート)

 

 


5 調査方法を考える(個人)。6 グループごとに調査方法(実験,観察)を検討する。

【ワークシートへの記入】

7 発表

  他のグループの工夫に気づき,自分の調査方法を改良する。

8 次時の学習について

台風のなぞにせまれ。

 

○ 絵や文でできるだけ詳しく書くことが自分の考えをまとめることにもつながり,新しい工夫も生まれてくることを理解させる。      (※ 情報的サポート)

○ 資料で調べられるもの,実験,観察を必要とするものなどがあることに気づかせる。(※ 評価的サポート)

○ 出てこなかった疑問点を取り上げて教師がどのような考えで実験,観察をするのか例を示す。(※ 情報的サポート)

○ 発表された調査方法から,効果的で納得できそうな実験を選ばせる。  (※ 評価的サポート)

 

 

 

○ 各グループで資料が準備できそうなものは準備するように指導する。  (※ 情報的サポート)

 

 評価:台風についての疑問点を見つけ,それを解決するための方法を考えることができたか。

5 研究の成果と課題

(1) 成果

○ 自然界の大きな仕組みも実験や観察を通して,解明できることが分かった。

○ 身の回りにある物を使って,実験道具は工夫できるということが分かった。

○ 不思議なことや疑問点を解決するために実験を工夫する楽しさを経験した。

○ 他の人の考えを取り入れると,自分の解決方法に役立つことを学んだ。

(2) 課題

○ 時間が不足のためにできなかった実験は,自由研究として取り組ませる。

○ 自ら疑問点を見つけ,実験,観察方法を考え,解決していくという問題解決的な学習を継続的に指導していく。

姶良町立姶良小学校 教諭 奥山 建司