本校は,平成14年度から16年度までの3年間,「学力向上フロンティアスクール」の研究指定を受け,毎日のドリルタイムやTT・少人数指導(習熟の程度に応じた指導,補充・発展的学習)・一部教科担任制などを導入し,学習の基礎作りや学びの実態に応じたきめ細かな学習指導を展開し,個々の学力を向上させるための指導方法改善や指導態勢の工夫に取り組んできた。
その中で,理科においては担任と指導法改善係でTT方式の授業を行っている。また,課題選択学習や補充・発展的学習においては,児童の興味関心や希望などを生かすために「チャレンジコース(発展的学習)」と「しっかりコース(補充学習)」に別れ学習を行っている。
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1 補充・発展的学習の実践
本校では,年間指導計画に補充・発展的学習の「位置付け表」を添付し,それをもとに,展開案およびワークシートを作成し,指導に当たっている。
【補充・発展的な学習の内容例】
単元
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5年 魚や人のたんじょう
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時 期
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終 末
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内
容
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〈 補 充 〉 〈 発 展 〉
メダカのたまごの中の変化を調べる 母体内での子どもの成長の様子を調べる
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【補充・発展的な学習の年間位置付け表】

「魚や人のたんじょう」では,単元の目標である『生命の誕生や成長のすばらしさに感動し,生命を大切にしようとする』により深く迫るために,「魚のたんじょう」を全員に学習させた。その後,補充・発展的学習へとつなげていった。さらに,一方のコースを選んだ児童も他方のコースでの学習内容を知ることができるように,ビデオ視聴をさせたり,それぞれのワークシートを掲示させたりした。
2 展開案
単元名
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5年 魚や人のたんじょう
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児童の活動と教師の支援
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しっかりコース(魚コース児童)
チャレンジコース(人コース児童)
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しっかりコース(人コース児童)
チャレンジコース(魚コース児童)
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メダカのたまごの中の変化を調べる。
(選択学習「魚のたんじょう」の内容)
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1 自分の課題を知る。
・ 小テストや評価テストを基に,自分が分からない点やメダカのたんじょうについて知りたいことを各自につかませる。
メダカの子どもたちは,たまごの中で,どのように育つのだろうか。
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2 予想する。
・ 人コースからの児童には予想させる。
・ 魚コースからの児童には既習内容を振り返らせる。
3 調べる,見通す。
@ 観察の方法を知る。
・ 解剖顕微鏡,実体顕微鏡で,採卵してからの日数の違うたまごをみる。
・ 中の様子を記録する。
A 観察する。
○ 雄と雌のからだの違いは?
○ たまごの中の変化の様子は?
○ 孵化してからのメダカの様子は?
4 結果をもとにまとめる。
魚には雄・雌があり,うまれたたまごは日がたつにつれて変化し,やがて小魚になる。かえったばかりのメダカのはらには,しばらく過ごすための栄養の入ったふくろがある。
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母体内の子どもの成長の様子を調べる。
(選択学習「人のたんじょう」の内容)
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1 自分の課題を知る。
・
小テストや評価テストを基に,自分が分からない点や,人の誕生について知りたいことを各自につかませる。
人は,母親の子宮の中で,たまごから赤ちゃんになるまで,どのように育つのだろうか。
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2 予想する。
・ 魚コースからの児童には予想させる。
・ 人コースからの児童には既習内容をふり
かえらせる。
3 調べる,見通す。
@ 観察の方法を知る。
・ 資料をもとに調べる。
・ ビデオで調べる。
A 観察する。
○ 母体内での成長の過程は?
○ へそのおと胎盤の割合は?
4 結果をもとにまとめる。
人は,受精したたまごが母体内で少しずつ成長してから,生まれる。へそのおは胎盤とつながっており,子どもはへそのおを通して母親から栄養分などを取り入れ,いらなくなったものを返している。
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備 考(準備など)
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※ 魚の誕生コース児童で「しっかり(補充的学習)」を希望した児童,人の誕生コース児童で「チャレンジ(発展的学習)」を希望した児童が対象
○ メダカ ○ 解剖顕微鏡または実体顕微鏡
○ 時計皿 ○ 顕微鏡用光源装置 ○ メダカの卵 ○ワークシート
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※ 人の誕生コース児童で「しっかり(補充的学習)」を希望した児童,魚の誕生コース児童で「チャレンジ(発展的学習)」を希望した児童が対象
○ 資料(参考図書・VTR等)
○ ワークシート
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※ 指導者2名で補充・発展的な学習を指導する際の展開例
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3 ワークシートの活用
(1) 魚コース(しっかり)・人コース(チャレンジ)

(2) 人コース(しっかり)・魚コース(チャレンジ)

「しっかりコース」は既習事項の復習的内容であり,「チャレンジコース」は調べ学習を中心とした発展的な内容である。それらのワークシートについては,理科学習の掲示コーナーに掲示して,他の児童へ紹介し,意欲付けを行っている。
4 評価規準簿の活用
個に応じた指導を充実し,基礎・基本を確実に習得させるためには,児童の学習状況を把握し指導の改善を図ることが重要である。そこで,「評価規準」を作成し,児童一人一人を確実に見取り,指導に生かすようにする。評価規準簿は,各教科(各単元)の評価規準と評価補助簿を一体化させたものである。担任と指導法改善係が一冊ずつ持って評価し,それらを互いに活用することで,児童一人一人に応じたきめ細かい指導を行い,基礎・基本事項の定着を図る。
(1) 担任が行った評価

(2) 指導法改善係が行った評価

担任と指導法改善係のそれぞれの評価を活用することで,児童一人一人への評価をきめ細かく行う。これらを基に,次の具体的な指導に生かす。
5 研究の成果と課題
(1) 補充・発展的学習の指導展開案とワークシートを年間指導計画に位置付けたことにより,具体的な実践につなげることができた。
(2) TT形式の授業により,児童一人一人への対応が充実し,実験,観察の際の互いの役割がしっかりできるようになった。
(3) 担任と指導法改善係の二人で評価規準簿を用いて評価を行なったことから,児童をより細かく評価でき,具体的な指導にまで高めることができた。
(4) 同じ学習を繰り返す活動が多い「しっかりコース」では,児童の実態や指導内容に応じて,学習の流れを変えたり内容を焦点化したりするなどの工夫が必要である。
(5) 担任と指導法改善係との事前の打ち合わせを,更に充実させていく必要がある。
(6) コース別学習を行なう際の場所の確保,実験,観察の教材教具の充実を図る必要がある。
湧水町立栗野小学校 教諭 谷口 善郎
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