単元名

6年 水溶液の性質とはたらき

 

 

単元のねらい

水溶液には何が溶けているかに問題意識をもち,水溶液には気体や固体が溶けているものがあることを調べるようにする。また,リトマス紙等を使うと水溶液を酸性,中性,アルカリ性に仲間分けできることをとらえられるようにする。さらに,水溶液は金属を変化させることに問題意識をもち,多面的に追究させながら水溶液は金属を質的に変化させることをとらえることができるようにする。


学習の活動

(児童の素朴な見方や考え方)

教師の支援・対応

(納得・実感させるために必要な観察,実験)

【児童の実態】

アンケートの結果,以下の実態が分かった。

水溶液を見分ける方法は計25

・ 飲む(1人)

・ においをかぐ(8人)

・ 砂糖等を入れて変化を見る(2人)

・ 温めて,蒸発させる(3人)

・ 振ってみる(1人)

・ 顕微鏡で観察する(2人)

・ しばらくおく(1人)

・ 分からない(7人)

 

 

 

アルカリ性,酸性について知っていること

・ 酸性(酸素)の溶けている水は,脳をよくする。

・ アルカリ性は元気の出る物が入っている。

・ 雨のことだと思う。

・ アルカリ性はアンモニア等のにおいのあるものだと思う。酸性はものを溶かすものだ。

・ 酸性は,工場でできる悪いものである(2人)。

・ アルカリ性は,エネルギーになるものである(2人)。

・ いけない物である。

・ 分からない(16人)

○ 酸性・中性・アルカリ性などの性質に関する子どもなりの見方・考え方をもたせる必要がある。

○ 生活と関連させながら,子どもたちが主体的に取り組める実験を取り入れ,多面的にとらえさせなければ,知識や概念として身に付かない。

(予想)

10種類の水溶液に何が溶けているかを予想させる。

・ におい ・ 蒸発 

・ 何かを入れてみる

 (リトマス液,ブドウ液,アルミ箔)

(実験1)蒸発実験

 

・ 蒸発しても取り出せないものがある。何か溶けているはずなのにどうして取り出せないのか。

(実験2)リトマス液実験・ぶどう液実験

 

・ 水溶液を赤と青に分けることができた。

 

・ 水溶液を緑,ピンク,赤に分けることができた。

・ 他の水溶液を加えることで,色で性質を比べることができた。

(実験3)アルミニウムの変化

アルミニウムを入れて,変化を調べる。

・ 1日おくと,水酸化ナトリウム,塩酸,アンモニアに入れたアルミニュウムはとけている。

(実験4)紙を入れてみる実験

小さく切った紙を入れて,変化を調べる。

・ 1日おいてもあまり変化がみられなかった。

○ 5年生の学習「もののとけかた」で,水に何かが溶けているものが水溶液であることの学習を想起させ,10種類の水溶液に何が溶けているかを考えさせる。

    水(中性)

教科書の5種類に加え,発展としてとらえさせるための5つを加え,実験を行う。

・ 食塩水(中性)

・ 焼酎(中性)

・ 塩酸(酸性)

・ 酢(酸性)

・ 炭酸水(酸性)

・ アンモニア(水)

・ 石けん水(アルカリ性)

・ 石灰水(アルカリ性)

・ 水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性)

 

☆ 中学校での中和実験を踏まえて,水酸化

ナトリウム水溶液を取り扱った。

☆ 水溶液の数を増やすことや調べる方法

を増やし,問題解決的な学習形態を組むことで,水溶液の性質を多面的にとらえ,子どもなりの考えをつくり出すことができると考えた。

行う実験

・ におい,蒸発,リトマス液,ブドウの汁,アルミニウムの溶け方の実験を行う。

・ リトマス紙を作る実験を通して,リトマス紙の使い方や水溶液の性質について考えさせる。

・ リトマスビーズを使い,身近な水溶液の性質を調べる。

 

・ 水溶液の量が多いので,スライドガラスを使って蒸発実験を行った。スライドガラスを用いると,手に取り,すかして見ることができたり,比べたりすることができた。また,時間も短縮することもできた。

 

 

 

ぶどう液実験

・ ぶどうの皮を煮て,水溶液を取り出す。

また100%のぶどうジュースを使う。

リトマス液実験

・ リトマスをお湯でとかし,濾過し,水溶液を作る。

★ リトマス液を使うと,水溶液の変化が赤,青の2つにきれいに分かれる。問題点として,中性の区別ができない。

★ ぶどう液は,色の変化が大きい。

○ 2つの実験を組み合わせることで,リトマス紙の使い方を考えさせる。

○ 組み合わせてとらえさせることで,アルカリ性,酸性,中性の色の変化をとらえやすくなった。また,リトマス紙の使い方へとつなげることができた。

 

○ 教科書では,リトマス紙の実験と金属の変化の実験を分けて行っているが,同時に行うことで,指示薬の変化と関連してとらえることができた。

 

児童の素朴な見方や考え方

教師の支援・対応           

(実験5)においの実験

まとめる活動を通して,

・ リトマス液とぶどう液で反応が似ているところがあるぞ。

・ 酸性,アルカリ性どちらでも金属は溶ける。

・ 中性になるものは,飲んでいる物が多い。

リトマス紙を作る。

・ リトマス紙は,赤と青がある。

赤のリトマス紙はどうやって作るのだろうか。

・ 濃い青を作るにはアンモニアがいいと思う。

・ 手で触ると,青のリトマス紙は赤くなるぞ。二酸化炭素がでているからか。

・ どうして,赤と青の2枚が必要なのだろうか。

 

(家庭の実験を終えて)

子どもから出た疑問

・ 強い塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜると,危ないガスが発生するのか。

・ 酸性・アルカリ性のものを混ぜると爆発するのか。

・ 酸性・アルカリ性が合わさると,アルミニウムがもっととけると思う。

5つの活動について,結果を表にまとめたり,話し合いをもったりすることで多面的にとらえることができた。

 

リトマス紙の使い方を見てからリトマス紙を作る活動を取り入れる。

・ リトマスを水(お湯)で溶かす。

・ ろ過する。

・ 薄いアンモニア水につける(アルカリ性)。

・ 炭酸水につける(酸性)。

 

・ リトマス紙を作る活動を通して,2枚必要なこと,手でさわってはいけないことなどを自分たちで確認することができた。

 

・ リトマス紙を持ち帰り,いろいろな水溶液を調べる活動をおこなうことができた。

※ 家庭実験で取り組ませたい実験,開発中(粒シリカゲルを使ったリトマス実験)

@ リトマス液にシリカゲルを入れる。

A 酸性,アルカリ性の溶液に入れて赤と青のシリカゲルを作る。

    中和に対する疑問ができてきたので,今後発展として実施していきたい。

 

金属の変化については,溶けたものが取り出せるのか,取り出したものがもとの金属と同じであるかの実験を行う。

(成果と課題)

中学・高校との連携を考える上で,試薬を使って区別するだけでなく,それぞれの水溶液の共通点を見つける活動やリトマス紙を作る活動を取り入れたことで,子どもなりの水溶液に関する見方や考え方が深まった。シリカゲルを使ったリトマスボールがまだできていないので,今後家庭で気軽に取り組める実験を提示したい。

(鹿児島市立牟礼岡小学校 教諭 鈴東 淳)