Q11 温度と空気,水
 どんなに加熱しても,水の沸騰実験で97℃までしか上がりません。100℃で沸騰するようにするにはどうしたらよいのですか。

 確かに,理論値では水は,1気圧では,100℃で沸騰します。だから,海岸付近では100℃になると考えがちですが,小学校レベルの実験装置では,だれがどうやっても100℃にすることはできません。
 それは,温度計全体が沸騰する水の中にあるのではなく,目盛りの部分の多くは空気中に出ていて冷やされるからです。もし,100℃で沸騰するようなことがあるとすれば温度計の誤差によるものです。
 このことを確かめるには,温度計自体も沸騰する水の中に入れて調べてみましょう。


 Q12 温度と空気,水

 加熱したときの温度変化を調べさせようとしますがなかなか時間内に沸騰実験が終わりません。早く終わらせる方法はありませんか。

 1mLの水の温度を1℃上げるためには1cal必要です。したがって,水の量が増えると沸騰させるまでの時間はたくさん必要になります。しかしながら,水の量を少なくすると温度変化が激しく,児童が記録したり,様子をじっくり観察したりすることができなくなります。
 普通の実験では,アルコールランプを熱源に使うと,100mLのビーカーに50mLの水を入れた場合に約8分,100mLのビーカーに100mLの水を入れると約18分かかります。なお,三脚にセラミック金網を置いた場合のデータですが,金属金網の場合にはだいたい半分の時間で沸騰させることができます。
 できれば,200mLのビーカーで150mLの水を入れて実験を行いたいですね。そうすると,温度の変化を見取ることができ,しかも,水の変化の様子もしっかりと観察することができます。


 Q13 温度と空気,水

 水を氷にする実験を行うと,氷になる温度がはっきり分かりません。また,温度が0℃以下になっても凍らない場合があります。どうしてそんなことが起きるのですか。

 水は0℃で氷になります。しかし,私たちが実験を行っていると,0℃以下になっても凍らないことはよくあります。特に,純粋な水では起きやすくなります。このことを過冷却といいます。その場合,水の入った試験管をゆするなどの刺激を与えると急に凍ります。
 したがって,凍る温度を測定する場合には,そっと置いておくのではなく,絶えず静かにかき回すことも必要です。
 また,この実験の場合,かき回さないと外側の水はすぐに冷やされますが,中心部分の水はなかなか冷やされずに全体として凍らず,いつ凍ったかを判断しにくくなります。そういった意味からも,静かにかき回すことは大事です。
 なお,凍らす場合には寒剤として食塩を入れますが,多めに入れてください。(100gの水に30g程度)また,氷はできるだけ細かくし,シャーベット状にすると温度がよく下がります。


 Q14 温度と空気,水

 空気の膨張を調べる場合には石けん膜を使ってその膨張を調べることが有効です。しかし,そのためのシャボン玉液を作ることができません。シャボン玉液が作る良い方法はありませんか。

 空気の膨張実験で使うシャボンの液は台所用洗剤で十分だと思います。しかし,洗剤の種類によってはシャボンの膜ができにくいのがありますので事前に,薄めて使用し,ストローの先に付けて膨らませたときにシャボン玉ができるか確かめてください。経験からは,透明な洗剤がうまくシャボンの膜を作るようです。
 なお,科学遊び用のシャボンの液はいろいろな作り方がありますが,私は次のようにして作ります。
・ 水1リットル,台所用洗剤100mL,化学合成糊(PVA糊)10mL,砂糖100g
※ もっと大きい物にしたいときには,卵白を加える。


 Q15 温度と空気,水

 空気の膨張を調べるために,フラスコにシャボンの膜を作り,それをお湯に浸け,シャボンの膜の膨らみを調べて理解させるようにしますが,「温められた空気が上に上がろうとして膨らむ」と考えてしまいます。空気の熱膨張,収縮を簡単に調べる方法はありませんか。

 どうしても,フラスコとシャボンの膜の実験ではそういった理解をする児童が増えます。それを解決するためには,温めるだけでなく冷やす活動も同時に行うことです。そうすることで,温めたときの膨らみは空気が上に行くで説明可能ですが,下に膜が下がる方が説明ができなくなります。
 次に,空気の膨張を調べる別の方法ですが,弾性のある物で実験を行うと,その素材に目が向いてしまいます。したがって,固い物で覆われた空気がその覆っている物を動かす事象を観察させることが最もふさわしいと考えます。
 その意味で考えると,注射器にいくらか空気を入れた状態で栓をし,それをお湯や氷水に入れて膨張や収縮を調べさせるのは有効です。50mLのディスポーザブル注射器で実験を行ってみると,はっきりと分かります。
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 Q16 温度と空気,水

 金属の熱伝導実験で金属棒を使ったとき,金属棒の先まで熱が伝わらないのですが,どうしたらよいでしょうか。

 金属棒の端を加熱すると熱が伝導します。しかし,同時に熱は空気中にも放射します。したがって熱量と熱伝導率,さらには端までの距離の関係で端まで熱が伝わらないことになります。
 端まで伝わることを調べさせるとすれば,加熱する熱量を強くするか金属棒を短くするかなど工夫が必要です。学校で使う道具で予備実験をしてください。金属では,熱は伝導するという概念の形成のためであれば金属棒は短くしたいですね。
 金属の熱伝導がよく分かるのは,ろうそくを塗った金属板の中心部を加熱したときのロウの溶ける様子の観察がいいと思いますのでやってみてください。
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 Q17 温度と空気,水

 物は加熱すると膨張することを調べさせたいのですが,金属の熱膨張を調べる道具が金属球と金属輪の実験道具しかありません。他にいい方法はありませんか。

 金属の熱膨張量はさほど大きくなく,ノギスなどで測定するしかありませんが,児童にその使い方を教え,正しく使えるようにしようとするととても大変です。そこで,2枚のL型鉄板を使い,二つの鉄板の間を物が通り抜けることができるかで調べる方法があります。
 その場合には,加熱前に温める物をL型鉄板の間に置き,ぎりぎりで通るように輪ゴムを使って間隔を固定します。
 加熱後に,間を通るか調べます。そうすることで金属の膨張を調べることができます。その際には,鉛を加熱すると熔けて落ち危険ですので鉛は絶対に使わないでください。また,L型鉄板が平行ではありませんので,通す場所に印を付けておく必要があります。
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 Q18 温度と空気,水

 水の対流実験で,湿ったおがくずを入れて見るということになっていますがなかなか手に入りません。しかも,前日に用意しておかないといけなくて困ることがあります。何か代用品はありませんか。

 おがくずを作るには,使わなくなった木の棒を持ってきてのこぎりで切断する作業を繰り返すとできます。
 代用品としては,いろいろな物が考えられます。基本的には,密度が1になると水の動きに合わせて動くことになります。教科書等にはみそを使う方法もでています。みそも水と一緒に動くからです。しかし,みそが拡散してくると水が濁ってくる(みそ汁の色になる)という問題もあります。
 簡単に入手でき,よく分かるのはティッシュペーパーだと思います。すぐに水を吸い,水の動きに合わせて回ります。ティッシュペーパーは動きがゆっくりで水の動きがよく分かります。


 Q19 温度と空気,水

 水の対流実験で対流しながら温まっていることを押さえるのですが,水の動きは見えても熱の移動が見えず納得できない児童が出てきます。どのようにしたら納得させることができますか。

 確かに,水の対流実験で見ているものは,水の動きであり,温まった水の動きではありません。対流している水の中に温度計や液晶パネルを入れても温度の変化を見ることはできません。基本的には,温度差がでないように熱が伝導したり,対流したり,放射している訳ですから。
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 温まった水の動きを見ることができないので,水が動かないと熱が伝わらないことを調べるという方法を取り入れるとどうでしょう。
 具体的には,長い試験管に水をいっぱい入れ,試験管の途中を加熱すると,加熱したところから上は盛んに泡立ち沸騰しますが,下にはほとんど熱が伝わりません。
 そのことで,水は伝導によって熱を伝えることは難しいことを理解するとともに,水が回ることの意味を理解することになります。


 Q20 温度と空気,水

 気体の対流実験を行いたいのですが,どのような実験装置を組んでも,気体が対流している様子を観察することが難しいです。何か,良い方法はありませんか。

 気体の対流実験はどうしても閉じた空間で行うために,温められた空気は上に上がろうとするが,上に行けなくて下に降りてくると考えがちです。温められた空気が上に上がるという事実の把握が最も大切であると思います。
 そのためには,ストーブの上に細く軽い紙を置くと分かります。さらには,水の対流実験と関係付けてとらえさせることです。
 なお,ビーカーを逆さにして置き,ビーカーの注ぎ口から火のついた線香を入れて煙の動きを観察するという方法はうまく煙の動きを見ることができます。
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 Q21 温度と空気,水

 自然界における水の循環の学習で,空気中の水蒸気を調べる実験を行うのですが,なかなか水蒸気の存在を調べることができません。何か良い方法はないですか。

 空気中の水蒸気量が少ない場合には,さほど水蒸気を集めることはできません。したがって閉じた空間で水蒸気を集めることは難しいわけです。しかしながら,開放された空間であれば,いくらでも水蒸気を供給でき大量に集めることが可能です。
 たとえば,氷水を入れたコップを置いておくとコップの周りに水滴が付くなどの実験です。また,最近普及してきた除湿機を使うと時間はかかりますが,大量の水を集めることができます。
 面白い実験は,常温の水を入れたコップと氷水を入れたコップを用意し,てんびんで釣り合わせて置いておくと次第に水滴が付いたコップが重くなり傾きます。また,付いた水滴を拭き取るともとの釣り合いに戻ります。この方法を使うと,水滴はコップの中の水からきたのではなく,空気中からきたということを理解させることができます。
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