内容(5)では,身近な自然を,興味・関心をもって観察したり,季節や地域の行事に関わる活動を行ったりして,四季の変化を体全体で感じ取り,季節によって生活の様子が変わることに気付き,自分たちの生活を工夫したり楽しくできるようにすることを目指しています。ここで取り上げる身近な自然とは,児童が繰り返し関わることができる自然であるとともに,四季の変化を実感するのにふさわしい自然です。
四季の変化を感じやすいということで,木の実探しや虫探しの活動を取り入れる学校が多いのですが,都市部の学校ではそれらの活動が難しいことも考えられます。そのような場合,学校や近くの公園にある木々や草花,街路樹など地域の中で感じられる季節の変化に気付かせる活動を取り入れるとともに,自然とたっぷり関わることができる校外学習等を季節ごとに位置付けるなど年間指導計画を工夫することも考えられます。

 また,自然だけに注目するのでなく,季節にちなんだ地域の行事にも関わることで,季節の移り変わりや季節と自分たちとの生活との関連に気付かせることも大切です。
  内容(3)では,児童の生活の場の広がりを背景に,地域に出かけることで,様々な人々や場所との出会いをつくり,それらに心を寄せ,自分の生活との関わりをさらに広げたり深めたりすることを期待しています。ここで取り上げる,「地域で生活したり働いたりしている人々や様々な場所」については,「小学校学習指導要領解説 生活編」p.27に例示されてあるとおり,必ずしも商店や施設でないといけないということではなく,働いている人でなくても構いません。大切なのは,例示してあるような人々と直接関わることで,自分の身の回りに幼児や高齢者,障害のある人など多様な人たちが生活していることや,地域には様々な仕事があり,それらの仕事に携わっている人たちがいることに気付いたり,それらの人々に心を寄せ,「わたしも頑張りたい」と,夢や希望をもち,児童が意欲をもって生活するようにしたりすることです。

  また,内容(4)についても,公共物や公共施設を解説書で例示しています。地域にあるものということで,公共物や公共施設を幅広く捉えましょう。その上で,さらに図書館や博物館を利用させたい時は,遠足や校外学習の機会を利用する方法も考えられます。

生活科指導Q&A

 

1 内容(3)「地域と生活」,内容(4)「公共物や公共施設の利用」に関すること   

 ア 「まちたんけん」では,近くに商店や公共施設がほとんどなく,そのような場所で働く人について調べることができない。











 イ いくつかのグループに分かれて「まちたんけん」に出かけた時の安全面が心配である。

      生活科は,一人一人の思いや願いが尊重され,その実現に向けた具体的な活動や体験が重視されるため,個々の活動は多様なものとなります。児童の活動内容や活動の場の多様性にこたえるためにも,管理職をはじめとする全ての教職員による協力体制を整えることが大切です(解説書p.56)。さらに,保護者や学校支援ボランティアなど地域の人々への協力依頼をすることも考えられます。

その際は,生活科の趣旨をはじめ,指導計画や活動の目的,具体的な支援の内容や範囲などを明確に伝え,児童が主体的な活動を行えるよう配慮することが大切です(解説書p.57)。

 

 

2 内容(5)「自然との関わりに関すること」

ア 学校の周りに,秋探しや虫探しができる自然環境がない。 
 
 










            

イ 身の回りの季節の変化と教科書が合わない。 

    生活科の活動は季節と密接に関連しています。指導計画の作成に当たっては,季節の変化に対応させることが大切です。その際,季節の訪
れは地域によって異なることから,地域の気候の違いに配慮した指導計画を作成することが求められます。例えば,南北に長い本県において
は,県北と県南では,生き物の動きが活発さを増す季節,栽培活動を始める時期,暮らしや遊びの様子が変わる節目に大きな差があります。
従って,四季の変化に伴う活動を織り込んだ指導計画を作成する際には,活動に最適な季節はいつか,どの時期から始めるのがより適切か,
なども検討する必要があります。このように,生活科は,児童の実態や地域の環境を踏まえて展開する教科です。教科書を教える,あるいは
教科書で学習する,という考え方は馴染みません。ただ,教科書には,活動のイメージをもたせたり,多様な活動例を参考にしたりできるよ
さ,学習の進め方や活動する際の留意事項などを学ぶことができるよさもあるので,有効に活用することで学習活動をより充実させることが
できると考えます。

ウ 虫探しで見つけた虫を飼いたいと言い出した。 
     自分で見つけた生き物を飼いたくなるのは,この時期の児童ならではの思いや願いです。このような場合,「生き物を飼う」と
    いう良い機会と捉えて,飼育の仕方やえさの与え方などを図鑑等で調べさせ,世話をさせてみましょう。ただし,生き物の中には
    飼育に適さないものもあります。児童の活動の様子を事前に想定しておき,飼育期間を決めるなど,実際 の活動の中で柔軟に
    対応できるようにしておくことが大切です。

    

 

3 内容(7)「動植物の飼育・栽培」に関すること

 ア アサガオやミニトマトの生育が,天候に左右される。  

      内容(7)では,児童自らが,継続的に動物を飼ったり植物を育てたりすることを通して,身近な動物や植物に興味・関心をもち,それらが生命を
   もっていることや成長していることに気付くとともに,動物や植物を大切にすることができるようにすることを目指しています。

    
そのため,どのような植物を栽培するかについては,各学校が, 地域や児童の実態に応じて適切なものを取り上げることが大切です。栽培する植物と
    しては,種まき,発芽,開花,結実の時期が適切なもの,低学年児童でも栽培が容易なもの,植物の成長の様子や特徴が捉えやすいもの,確かな実り
    を実感でき満足感や成就感を得られるもの,などの観点を考慮しながら選択します。これらのことを考慮して,多くの学校ではアサガオやミニトマトを栽
    培しています。しかしながら,これらの植物も,生育の特徴をよく把握しておかなければ水のやり過ぎや肥料不足等で枯れてしまうことがあります。例えば
    夜間に水分が残っていると徒長しやすくなることから,雨が降り続いたときなどは鉢を屋根のある場所へ移動させ,水分過多にならないようにすることが
    必要です。また,本葉が増え始めると養分が行き渡らなくなるため,早めに苗の間引きをすることも大切です。間引いた苗は,別の場所へ植え替えておく
    ことで,不測の事態に備えることもできます。

 イ 観察の時間を確保するのが難しい。
      生活科の学習活動をより充実させていくには,毎日の学校生活の様々な場面に飼育・栽培活動を位置付けるようにすることが
   大事です。例えば,児童の生活場面での動きを考えて,登校してきた児童が朝一番にアサガオを見ることができるように,アサガ
   オの鉢を児童の玄関に並べることなども考えられます。また,休み時間等に動植物の世話をするなど,一日の学校生活に生活科
   を位置付けることによって,観察の時間や回数を確保することができます。

    その際は,児童が新たな発見や感動を自由に記録できるように,観察ミニカード等を常備しておき,必要に応じて自由に使える
   ようにしておくとよいでしょう。そのような継続的な関わりの中で,児童は,植物の日々の成長や変化,実りなど生命の営みを実感
   するようになります。また,成長や変化に気付く中で,「もっと元気に育ってほしい。」という願いもち,それを実現するために,自分
   の力で工夫して栽培しようとするなど,植物への親しみをもち,世話をする楽しさや喜びも味わうこともできます。

  

 ウ 飼っていた生き物が死んでしまった時の対応が分からない。

    飼育や栽培の過程では,新しい生命の誕生や突然の死,病気など,生命の尊さを身をもって感じる出来事に直面することがあります。成長することの素晴らしさや尊さ,死んだり枯れたり病気になったりしたときの悲しさやつらさ,恐ろしさは,児童の成長に必要な体験です。動植物との関わり方を真剣に振り返り,その生命を守っていた自分の存在に児童自らが気付く機会と捉えることが大切である。

そこで, まず命あるものは必ず終わりの死があることを説明することが必要です。また,死に対する理解の程度によって悲しみの内容や程度に違いができるので,個々の理解を深める努力が大切です。

一方,嘆きや悲しみをみんなで話し合い,打ち明けあったり,作文に書いたりすることも大切です。このような取組によって,児童の間に悲しみを分かち合う機会ができ, 死別の持つ悲しさや恐ろしさを軽減できることもあります。死の否認,怒り,自責,そして受け入れが段階的に訪れるので,死別に関する教育は細心の注意を払って進めなければなりません。

      さらに,「家畜伝染病予防法」の改正により,従来の家畜に加えウサギの疾病や死亡についても,近くの獣医師に連絡することが必要となりました。これは、家畜伝染病のまん延防止のためであり,学校で飼育している家畜(ニワトリ,ウズラ,アヒルも含む)にも適用されます。したがって,事故で死亡した場合などを除き,理由がはっきりしない場合には勝手に校庭などに埋葬せず,獣医師に相談しましょう。

 

4 指導計画や評価に関すること

ア 教科書会社の年間指導計画が地域の実態と合わない。
     生活科の学習を充実したものとして展開するに当たっては,学習指導要領の目標及び内容を踏まえ,年間指導計画,単元計
   画などの指導計画を綿密に作成することが必要です。その際,児童の実態に対応することはもちろん,地域の環境を生かすこ
   とが何よりも大事です。地域は,児童にとって生活の場であり学習の場でもあります。したがって,地域の素材や活動の場など
   を見出す観点から地域の環境を繰り返し調査し,それらを教材化して最大限に生かすことが重要です。

    特に,動植物の飼育や栽培の活動をはじめとして,生活科の活動は季節と密接に関連しています。指導計画の作成に当たっ
   ては,季節の変化に対応させることが大切です。その際,季節の訪れは地域によって異なることから,地域の気候の違いに配
   慮した指導計画が求められます。    
 
  
    教科書会社の年間指導計画は,あくまでも参考として作成されています。指導計画を作成する際は,学校がある地域において,生き物の動きが活発
   さを増す季節はいつ頃か,栽培活動を始めるのはどの時期がよいか,暮らしや遊びの様子が変わる大きな節目はいつか,などを十分検討する必要が
   あります。その上で,単元や学習活動を適切に配置し,学校の特色を生かした指導計画の作成に努めましょう。 


イ 授業の最後に「振り返りカード」を書かせるが,マンネリ化してくる。 

 生活科では振り返りの活動として,これまでも言葉などによる表現活動が位置付けられてきました。活動や体験してきたことを言葉などによって振り返
    ることで,無自覚だった気付きが自分の中で明確になったり,それぞれの気付きを共有し関連付けたりすることが可能になるからです。振り返りの活動と
    して,活動や体験の後に「振り返りカード」を書かせる授業を多く見かけますが,低学年の児童は本当に振り返り たいと思って書いているので しょうか。
    教師が,児童の気付きを見取るためだけに書かせていないでしょうか。気付きの質を高めるためにも 「振り返る」ことは必要ですが,毎時間同じように,
    「気付いたことや思ったことを書きましょう。」では,児童は受け身になり,次第に,先生に言われないと書かないという態度が育ま れていきます。時には,
    「ひみつはっけんカード」,「おたからしょうかいカード」など,低学年の児童の思いを生かしたカードを工夫しましょう。

充実した活動や体験をたっぷり行った後の児童は,見付けたことや気付いたことなどを友達や先生に「紹介したい」,「自慢したい」という思いでいっぱいです。振り返りの活動で気付きの質を高めるためには,まずは,活動や体験そのものが没頭できるような充実したものであることが大切であり,そのような体験をした児童は,自ら表現活動も楽しむことでしょう。 

ウ 生活科の評価の進め方が分からない。 

具体的な活動や体験を重視する生活科では,とりわけ評価は重要な意味をもっています。生活科では,結果に至る過程を重視した評価が大切です。学習過程における児童の関心・意欲・態度,思考や表現,気付き等を評価し,目標の達成に向けた指導と評価の一体化が行われることが求められています。そのためにも,単元の目標を明確にするとともに,評価計画(何を,いつ,どのように評価するか)を立てて,評価規準をあらかじめ設定しておかなければなりません。評価計画の立て方や評価規準の設定の仕方は,国立教育政策研究所発行の「評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料」を参考にしましょう。

    生活科の評価が難しく感じられるのは,「活動や体験についての思考・表現」の評価の仕方が分かりづらいところにあると思われます。特に,「思考」は見えにくいため,評価がしにくいと感じている教師が多いようです。この評価の観点は,児童が調べたり,育てたり,作ったりするなどの具体的な活動や自分の生活について,児童なりに考えたり,工夫したり,振り返ったりするなどの思考の様相を見取っていくことが大切です。そのためには,一つのカードや一つの作品からの情報だけで判断するのではなく,複数のカードを関連付けたり時系列に並べたりして,視点の広がりや工夫したり試行錯誤したりしたことを見取ることが必要です。

      なお,生活科においては学習活動における評価規準を設定した上で,実際の評価場面における具体的な児童の姿を想定し評価することが大切です。そうすることで,教師は評価がしやすくなるだけでなく,具体的な活動も設定しやすくなります。

              
                        <具体的な児童の姿と評価方法の設定例>

 単元名 わたしのアサガオ 第1学年 内容(7)「動植物の飼育・栽培」   
 【評価規準】「アサガオの変化や成長について考え,アサガオの立場になって世話の仕方を工夫している。 (6/16時)
 【具体的な児童の姿と評価方法】

  ○ アサガオのツルの成長に合わせて,支柱を立てている。(観察カード・行動観察)

  ○ 天候や土の様子を見て,水やりをしている。(観察カード・行動観察)

  ○ 友達のアサガオと比較しながら,観察をしたり世話をしたりしている。(観察カード・行動観察)

  ○ これまでの栽培経験を生かして世話をしている。(観察カード・行動観察)

  ○ 世話の仕方を人に聞いたり本で調べたりしている。(観察カード・行動観察)

                              国立教育政策研究所「評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料」から

※ この他にも質問事項がありましたら,気軽にお問合せください。