全校朝会3(令和8年7月6日)

最終更新日 2026年07月06日

スライド1

 みなさん、おはようございます。
 今週から連日最高気温の30度超える夏日が続く予報が出ています。体育館は熱いので、今日の全校朝会はリモートでお話をしてみたいと思います。
 それぞれのタブレットの中にもスライドの資料があると思いますが、こちらでも共有してみますね。

 スライド2

 それでは【2枚目のシート】に掲載されている詩を読んでみてください。(2枚目のシートには黒田三郎の詩「支度」が掲載)
 7月に入りましたので令和8年という年も半分が終わったことになります。今年度にしても4・5・6月と3か月が過ぎ、もう1年の4分の1が終わりました。
 1年生はどうでしょう。真新しい制服や鞄を抱えて入学し、3か月がたちましたが、高校生としての「心の支度」はできあがりましたか。 1年生は、これまで、なかなか不安な気持ちだったと思います。まず、「授業のスピードについていけるかどうか」ということもあるでしょうし、環境がガラッと変わりましたから「新しい友達とうまく話せないなぁ」とか、「学級や部活動で自分の居場所が見つからない」・・・こういう不安な思いをしている人が、今もいるかもしれませんね。
 授業について行けるかはそれぞれが頑張っていかなくては、というところがあるかもしれませんが、友達関係とか自分の居場所の問題で「心の支度」をする際に少しアドバイスをするとすれば、誰かと話す時に「自分の言葉を心の中で整える」ということを考えてほしいなと思っています。
 コミュニケーションをとる入り口として入りやすいのは、やはり「共感」と「感謝」の言葉です。「そうだよね」「ですよね~」「ありがとう」「助かった」「一緒にやろう」「私が手伝います」といった小さな言葉が、人の輪に入っていったり、居場所をつくることにつながるのではないかと思います。 「心の支度」って詰まるところは、心の中で自分の考えとかやろうとしている行動を言語化して準備する作業に他なりません。
 人間関係を構築する時は言葉で人間と人間はつながっていきます。自分が一歩踏み出すときにどんな言葉を持っているか、そして、それをどう伝えるかを「丁寧」に考えることは人間の誠実さが問われるとても大切なことだと思っています。

 【シートの3枚目】を見てください。
 さて、この「支度」という作品は10年ほど前まで鹿児島県でも広く採用されていた小学校6年生の教科書にも載っていた有名な作品です。この「支度」の作者・黒田三郎さん、実は、本校の卒業生なんです。
 1919年に広島で生まれ、幼い頃に鹿児島へ移り、旧制第一鹿児島中学校(現在の鶴丸高校)で青春期を過ごしました。
 戦後、NHKで働きながら詩作を続け、1947年頃から現代詩の世界で大きな存在感を示すようになります。難解と思われがちだった現代詩に、生活の言葉で深い感情を描くという新しい風を吹き込んだ詩人だと言われています。
 その後はNHKを離れ、詩作に専念、1980年、60歳で生涯を閉じました。
 黒田さんの詩は、「平明さの中に強さがある」 と高く評価され、一昨年亡くなった詩人・谷川俊太郎さんも「黒田の詩に大きな影響を受けた」と語っています。

 【シートの4枚目】を見てください。(シート4枚目は黒田三郎の評論『内部と外部の世界~詩人と言葉』(1957年)からの引用文)
 黒田三郎の評論には、こんな一節があります。二段落目の言葉をよみますね。
 「自分たちの言葉をもつということは、言葉を現代日本の社会に生きている一人の人間の行動において考えるということになる。言葉とそれがあらわす事実や経験との間に激しい緊張感があってはじめて、言葉は生きる。」
 戦後まもなく、欧米の言葉が日本に入ってきます。それらの言葉がしっかりと自分自身に消化されずに使用される当時の文学界に対しての批判だったのだろうと思います。かっこいい今どきの言葉を深く考えず簡単に使うことに対して、黒田さんは、そのような作品や発言を、とても乱暴で、薄っぺらいと感じていたのだろうと思います。
 私はこの言葉を読むたびに、「言葉を発する前に、相手の心にどんな影響を与えるか」その想像力の大切さを思います。言葉を発する前に「激しい緊張感」を持たねば、ということです。
 最近、若い人たちの言葉を聞いていて少し心配になることがあります。相手の気持ちを想像しないまま発せられる「不用意な」言葉、意味を理解しないまま使われる言葉、軽い気持ちで投げられた言葉が誰かを深く傷つけてしまうことがあります。
 言葉は、人を励ますこともできるし、人を孤独に追い込むこともできます。
 仲間を増やすこともできるし、誰かを遠ざけてしまうこともあります。
 だからこそ、自分の言葉を心の中で言葉を口に出す前に緊張感を持って整えるという、そういう「心の支度」はとても大切だと思うのです。

 最後に、【シートの5枚目】です。黒田三郎と親交があり、一昨年亡くなった谷川俊太郎さんの私が最も好きな詩『生きる』を紹介して、今日の話を終えたいと思います。(シート5枚目には谷川俊太郎「生きる」を掲載)
 難しい言葉は何も使っていないのに、どうしてこうも人の心を動かすんでしょうね。最後の5連目だけ読んでみますね

  生きているということ     いま生きているということ
  鳥ははばたくということ    海はとどろくということ
  かたつむりははうということ  人は愛するということ
  あなたの手のぬくみ      いのちということ

 私たちは、ぬくもりを持った人間として今を生きています。
 そして、そのぬくもりを自分の中だけにしまっておくのは、どこかもったいないことです。
 困っている友達にそっと声をかけること。
 誰かの努力を見つけて「いいね」と言えること。
 自分の弱さを認めながら、それでも前に進もうとすること。

 この鶴丸という場所で出会った仲間と、その温かさを分かち合いながら成長していける人であってほしい。そして、そうした生徒たちが集う学校であり続けてほしいと願っています。そういう一つひとつの行動が、この鶴丸高校の温かい空気をつくり、皆さん自身の未来を形づくっていきます。
 どうか、鶴丸での日々の学びの中で、自分の言葉と行動に“ぬくもり”を宿す人になってください。
 以上で今日の全校朝会の講話を終わります。
 7月も頑張りましょう。終わります。