式辞・挨拶等

公開日 2024年10月22日

全校朝会6(令和6年10月21日)

 みなさん,おはようございます。
 今日は,「芸術の秋」ということで,いくつか芸術作品,鹿児島県内にある銅像になっている彫刻作品を一緒に見てみることにしましょう。

全校朝会6 スライド1

 事前に一部画像をお届けしていますが,まず,最初はこの作品です。

 さて,これはどこにあるでしょう。もちろん,おわかりですよね。鹿児島中央駅前にある「若き薩摩の群像」です。薩英戦争後の1865年に薩摩藩がイギリスに派遣した4人の使節と15人の若者いわゆる「薩摩スチューデント」たちの像です。
 一番,名前が知られているのは,五代友厚あたりでしょうか。五代さんは,この位置に座っているようです。

 次の写真です。これは,誰だかわかりますよね。はい。西郷隆盛と並ぶ明治維新の立役者,大久保利通公です。高見橋の袂に立っています。

全校朝会6 スライド2

 これはどうですか。台座に天璋院と書いています。大河ドラマにもなった篤姫の像ですよね。県歴史資料センター黎明館の前にあります。

 次は,わかりますか。日本の警察制度を創設した川路利良です。今,漫画の主人公にもなっているんですかね。
 鹿児島県警の前にあります。台座に書いてある言葉がいいんですよ。
 「声なきに聞き,形なきに見る」
 日本の治安はこの精神で守られているのでしょうね。

 次の写真です。鎧兜の細かな表現や馬の躍動感をよく表した筋肉の動きなど,本当に迫力があります。誰の像でしょうか。島津義弘公ですね。関ヶ原の戦いでの的中突破で知られます。これは,日置市のJR伊集院駅前にあります。

 さて,これらの銅像に共通することはなんでしょうか。(話し合っていいですよ)
 そうです。作者が同じということなんですね。

 これらの銅像の作者は鹿児島市に在住の彫刻家,中村晋也先生です。中村晋也先生は1926年7月生まれ。ということは,現在,御年98歳です。
 三重県でお生まれになり,東京高等師範学校(現在の筑波大学)卒業後,鹿児島大学の教員として鹿児島にいらっしゃいました。
 以来,鹿児島大学で教鞭を執られながら,数多くの彫刻作品を残します。写真で紹介した鹿児島にゆかりのある作品はもちろんのこと,大阪には豊臣秀吉,秀頼の像,青森県には太宰治像,奈良県薬師寺には「釈迦十大弟子」「釈迦八相像」等の作品があります。2007(平成19)年に文化勲章を受章された日本を代表する彫刻家です。

 先生のアトリエを改装した「中村晋也美術館」が鹿児島市の旧松元町の地区にあります。先生の作品が近い距離で見ることができる本当に素晴らしい場所です。

全校朝会6 スライド3

 さて,この中村先生の作品を見るときに,私はこの言葉を思い出すんです。
「神は細部に宿る」  Der liebe Gott steckt im Detail 
 もともと古くからヨーロッパに伝わる言葉のようなのですが,ドイツの建築家や美術史家が建築論,美術論を述べた著作で好んで使い広まったとされています。

 この言葉を解説をした評論の文章などをみるとこのように書いてあります。
 「細部(ディテール)にこだわった丁寧な作品には作者の強い思いが込められており,まるで神が命を宿したかのごとく不朽の作品として生き続ける。」

 先生のインタビュー記事を見たことがあるのですが,中村先生のお仕事は,対象となる人物などについて資料を集めたりその人となりを調べるところから始まるそうです。伊集院駅の島津義弘の像は,トータルで3年ほどかけて完成させたのだそうですが,実際粘土を込めて作品を作り上げるのは1年ほど,つまり,その前の準備に約2年間かかったそうです。
 インタビュアーの方が,「先生,製作する過程では,たいへんなご苦労も多かったでしょうね」と尋ねるんですが,先生は,この作業は,全く苦にはならない。苦しい作業ではないということをおっしゃっています。
 そして,インタビューの最後で先生は,「何歳になっても仕事をさせていただけることをとても楽しく感じています。仕事がいやだと思ったらそれで終わりですからね」とも言われています。
 強い思いを込めて作品を丁寧に生み出していく先生にとって,その作業に打ち込んで「神が命を宿した」かのような素晴らしい作品を作り上げていく「時間」というものは「かかる」ものではなく「かける」ものなんだろうと思います。

 今日,君たちに伝えたいのは,君たちの学業に対する考え方も,「勉強は時間がかかる」ものではなく「時間をかける」ものだと考えるようにしてはどうでしょうか,ということです。
 前回,2学期の始業式で「鶴丸は勉強するところである」でお話ししたように勉強することに時間がかけられることは,平和で自由な時代の証であるし,「知らなかったことを知ることができる」「できなかったことができるようになる」「自分自身の視野が,世界が,深く,大きく広がっていく」ということは,本来,人として,本当は「楽しい」「素晴らしい」「美しい」「尊い」ことなのだと思います。
 このことは,高校時代に限ったことではなく,大学に行ってからも自分の研究にたっぷりと時間をかけてほしいし,自分が生業とする諸職業についたら,もっともっと時間をかけ,思いをこめて丁寧な仕事をしてほしいと思うのです。
 今日のお話は,そんなことを願いながら,中村晋也先生とその作品を紹介してみました。

 さて,あと2枚ほど,彫刻作品を見せます。これも中村先生の作品です。
この作品はどこにあるでしょう。

全校朝会6 スライド4
 知らないとは言わせません。これは,本校の百周年記念庭園の中にある,一中生・一高女生の像です。庭園の隅の銅板のプレートに中村先生の作品だと書いていますので休み時間などに,是非,探してみてください。
 私も,4月に赴任して,中村先生の作品が学校の中にあるということをはじめて知り,改めて,この鶴丸高校の環境の素晴らしさを認識することでした。

 それでは今日のお話を終わります。今週も頑張りましょう。

令和6年度 後期始業式(令和6年10月1日)

 皆さん,おはようございます。令和6年度後期の始まりにあたり,お話をします。先日の終業式では,鶴丸高校の前期は「動」,「動の前期」,これに対して後期は「静」「静の後期」であり,自分の夢に向かって「己を刻む」3年生を学校全体で応援するとともに,1年生,2年生にとっても学力の定着が確実に図られるよう,学習する,学ぶ雰囲気を創りましょう,まさに「鶴丸は勉強するところである」そんな後期にしましょうというお話をしました。

 さて,今日はその「鶴丸は勉強するところである」の言葉についてお話をしてみます。本校に古くから言い伝えられてきたこの言葉について2年生,3年生は,これまで,いろいろな機会でよく耳にしてきたと思うのですが,1年生はあまり聞く機会がなかったのではないかと思うのです。
 この言葉は,今から74年前,鶴丸高校が発足した次の年,昭和25年(1950年)にその年の新入生が入学した後の対面式において,当時の生徒会長が新入生に対して語った言葉だと言われています。
 このことについて,少し,当時の時代背景や鶴丸高校の沿革についてふれておきたいと思います。

 鶴丸高校は,今年創立130周年になりますが,130年前は西暦で言うと1894年,明治27年のことです。歴史の教科書では「日清戦争が起こった年」として知られます。

令和6年度後期始業式 スライド1 スライドを見てください。
 本校の起源は,この年に開校した「鹿児島県尋常中学校」に始まります。これは,旧制の(太平洋戦争終結までの)「中学校」は,今でいう中学1~3年,そして高校2年生までの5学年が通う形態です。男子校です。後に県内にいくつかの旧制の中学校ができると本校(鹿児島県尋常中学校)は,「鹿児島県第一中学校」,「鹿児島県立第一鹿児島中学校」と校名が変わります。(略して「一中」と呼ばれるようになります。)

 本校のもう一つの源流をなす学校に,明治35年(1902年)開校の「鹿児島県立高等女学校」があります。こちらは,もちろん女子校。この学校も後に「鹿児島県立第一高等女学校」と名称が変わります。(こちらは略して「一高女」)

令和6年度後期始業式 スライド2 次のスライドは,一中の校舎の写真です。当初,一中は,鹿児島市の山下町に建てられました。現在の県民交流センターの付近です。写真に赤い印のしてある正門跡は,今でも県民交流センターの10号線側にその一部が残っています。

 

 

 

令和6年度後期始業式 スライド3

 その次のスライドは,一高女の校舎です。一高女は,鹿児島市の加治屋町に建てられました。写真右のとおり,昭和10年(1935年)には新校舎に建て替えられました。加治屋町のこの形の建物,どこかで見た記憶がありませんか?(正解は後で話します。)

 

 

 

令和6年度後期始業式 スライド4

令和6年度後期始業式 スライド5 さて,昭和20年(1945年)に太平洋戦争が終結した後,学校制度も大きく変わっていきます。旧制の中学校は,新しい学制のもと,高等学校へ変わりました。本校は,昭和24年に旧一中と旧一高女が統合する形で「鶴丸高校」として発足することになりました。そして,その校舎は,昭和20年の6月に鹿児島市内への大空襲があり,旧制一中の校舎は焼失してしまっていたことから,戦争の被害が比較的少なかった加治屋町の旧一高女の校舎を使うことになりました。これは,今のどこですか? そうですね。現在の鹿児島中央高校の建物になります。

 さて,そのような中で,最初にお話しした昭和25年の対面式がやってきます。ですから,この対面式は,加治屋町の鹿児島中央高校の場所で行われたんですね。
 鶴丸高校は,その前の年に男子校である一中と女子校である一高女が合併する形でできていますので,新制の中学校から新入生を迎えるのは初めてのことになります。その入学式後の対面式で,生徒会長さんが,この言葉,「鶴丸は勉強するところである」と言ったのです。

 当時の記録にはこうあります。
 「生徒会長は壇上から『諸君,鶴丸高等学校をいかなる学校と思って入ってきましたか。』と言い,そして一段声を張り上げて『鶴丸は勉強するところである』『鶴丸高校生徒はいかなる学生であるか。それは勉強をする学生である』とだけ述べてすっと壇上から降りられた。」と。
 
 当時の2年生,3年生はその言葉を,我々の総意,我々の気持ちだ!として当然といったムードで受け止めていたようです。『会長,よくぞ言ってくれた』『これを言ってほしかった』という気分を代弁したという雰囲気だったようです。

 当時,昭和24年の鶴丸高校3年生の生徒会長(徳満さんというお名前の方のようですが)学年は,昭和20年の終戦の年を旧制一中の1年生として過ごした年代になるはずです。先ほど話した昭和20年6月の鹿児島の空襲も経験したことでしょう。また,終戦直前には,鹿児島一中の生徒たちも県内外の工場に動員されて労働に従事するという経験をしていたと聞きます。遠いところでは広島県の工場にも行ったという記録があります。のこの生徒会長さんが,県外の工場にまでいったかどうかはわかりませんが,この時期はとても勉強ができる状況ではなかったのだと思います。

 当時の高校進学率は,昭和25年(1950年)で42.5%
 大学進学率は昭和29年(1954年)のデータになりますが,7.9% です。

 戦争中は,もちろん勉強することにいろいろな制限を受けている状況がありました。また,戦後間もない,この当時は,戦争からの復興途中,満足に食べるものもない,高校に進んで,大学進学まで考えようとしている人たちにとって,そのような状況の中,高校で学ばせてもらっているということに感謝の気持ちがあったんだと思いますし,日本の国をこれからどうしていこうかという大きな志があったのでしょう。

 生徒会長の徳満さんは,この「鶴丸は勉強するところである」の言葉が一人歩きして曲解されているということもおっしゃられているようでした。確かにこの言葉だけを聞けば,誤解して受け止められるおそれのある言葉だと思うのですが,徳満さんの真意は,「ここは思いっきり勉強ができるところだぞ」「新入生よ,自分のやりたい勉強をやってくれ」「そして,やるからには真剣にやってくれ」そんな思いだったんだろうと思います。

 勉強ができることこそが,自由で平和な時代の証。皆さん,「勉強」って辛く,苦しいものですか?
 そのような面は確かにあると思いますが,学ぶことによって「知らなかったことを知ることができる」「わからなかったことがわかるように,できなかったことができるようになる」「自分自身の視野が,世界が,広がっていく」という,本来,「勉強」とは,人として,「楽しい」「素晴らしい」「尊い」ものなのだと思います。

 私自身,このエピソードで感激するのは,これを教師ではなく生徒が言っているということなんです。
 そのとき鶴丸高校に勤務されていた国語科の西村一意(かずおき)先生(後に鶴丸高校の教頭先生にもなられます)という先生も,こうおっしゃってるんです。「これを先生ではなく,生徒が言ったことで,伝統というものは生徒がつくるものだと感じた」と。
 西村先生の回想文は,翌年の昭和26年の対面式の事にも言及しているのですが,実は「次の年も次の生徒会長が『私も先輩の言葉を繰り返します。』と言って同じように『鶴丸は勉強するところです』と言った」とのことです。西村先生は「ああ,これでこの学校の校風が出来たと思った」と話されていますが,このように,鶴丸に受け継がれる伝統は,校風はまさに皆さん生徒の手で作られていくものかと思います。

 なお,当時の国語科の西村一意先生は「西村数」の名の俳人としても知られています。中庭の For Others の碑の近くに先生の俳句が彫られた碑があります。
令和6年度後期始業式 スライド6   「樗(おうち) 咲く
      学風ここに醇乎たり」

  樗の木はセンダンの木のことのようです。中庭に大きなセンダンの木がありますよね。我々の鶴丸高校の学風(「好学愛知」「自立敬愛」「質実剛健」)が混じりけなく,真っ直ぐなまま受け継がれてほしいという先生のお気持ちでしょうか。

 

令和6年度後期始業式 スライド7 今日の始業式にあたってのお話は,「鶴丸は勉強するところである」この言葉が深い意味を持って,皆さんに受け継がれていくことを願いたい,また,本校の学風である「好学愛知」「自立敬愛」「質実剛健」がまっすぐに受け継がれていくことを願いたいというお話でした。

 

 

 「動の前期」に対して「静の後期」。後期・2学期の皆さんの学校生活が充実したものとなることを期待して始業式の挨拶としたいと思います。
皆さん,後期も頑張っていきましょう。
 終わります。

令和6年度前期終業式(令和6年9月20日)

 本校は2学期制(前・後期制)をとっていますので,今日は,1学期=前期の終業式ということになります。

 鹿児島市内の一部の中学校でも2学期制をとっているようですが,3学期制の中学校からきた,特に1年生の皆さんには,2学期制について,イメージがわきにくいかもしれませんので,今日は,少しこのことについてお話をしておきます。

 私も,2学期制の学校に勤めるのは初めてのことでしたので,2学期制についていろいろと調べてみました。実は,ここ数年,2学期制を導入する学校が少しづつ増えている状況があるようです。文部科学省が実施している「教育課程の編成・実施状況調査」によりますと,小学校で平成30年度に2学期制を導入していたは全国の19.4%の学校だったようですが,これが令和4年度には22.3%に,2.9ポイント上昇しています。中学校では,18.6%から20.4%,1.8ポイントの上昇です。高校は平成27年度と令和5年度の比較になるんですが,19.7%→24.3%,4.6ポイントの増加です。
 現在,全国の小中高校の約2割が2学期制の学校と考えてよさそうです。

 報道等によれば,ここ数年の増加の理由として,先生方の「働き方改革」が挙げられることが多いようです。確かに,先生方にとっては,通知表の作成が年3回から2回ですむわけですから,成績処理業務の面から,忙しい先生方の働き方の改善を図るという面もあるだろうと思います。
 ただ,本校において2学期制が導入されたのは平成14年度(2002年度)のことになります。もう20年以上前のことなんですね。先生方の「働き方改革」などと言われ始めたのは,ここ数年のことですから,そのことが主な理由ではなかったのだろうと思います。
 では,なぜ,その時期に,本校は2学期制をはじめたのでしょうか。

 当時の学校の資料をみてみますと,本校が2学期制に踏み切った大きな理由として,この平成14年度に完全学校週5日制が始まったからということがあるようです。
 皆さん,昔,学校の授業は土曜日にもあったって知っていましたか。私が教員になったのは,平成元年,今から三十数年前のことです。この頃は毎週土曜日にも授業がありました。それが,平成4年から月1回の土曜日が休業日に,平成7年からは月2回に,そして,平成14年度からは完全5日制が実施され,現在のような形になったのです。
 この土曜日に行っていた授業時間を確保するということが,2学期制導入の大きな理由だったようです。3学期制を2学期制にして,今日のような終業式や始業式,そして中間・期末考査を1学期分なくすことで授業時間を確保しようとしたわけですね。

 もう一つの理由には,学校の1年間の流れを考えたときに,3学期制はバランスが悪いという意見もあったようです。
1枚目のシート タブレットの中の1枚目のシートを見てください。3学期のイメージです。こうしてみると確かにバランスが悪いかもしれませんね。
 まず,3学期制における1学期の時期というのは,とても慌ただしいのです。4月は入学式,創立記念日,遠足,甲鶴戦,5月はゴールデンウィークがあったり,ほぼ試験範囲がないのに中間考査があったり,6月には部活動の大会,7月には,期末考査やクラスマッチなどの学校行事が入るので,1学期の学習内容はとても薄くなります。夏休みは,7月の後半から,8月末までの長い期間です。長期休業の期間は,それまでに学習した内容の補充や定着のための時間がとれることに意義があると思うのですが,内容の薄い1学期の内容を振り返る期間としてこの長い夏休みの期間は少しもったいないように感じます。その後の2学期,3学期というのが立て続けに迫っている感じで,極端に短い3学期の在り方などを含めて,やはり,バランスは良くないかもしれませんね。

2枚目のシート

 パワーポイントの2枚目,これが本校の2学期制のイメージ図です。
こうしてみると,確かにバランスはいいですよね。
 学期が長いので,先生方にとっては細切れにならない継続した授業計画の組み立て,生徒の皆さんにとっては見通しをもった学習ができます。
 今年,本校では,中間・期末をなくしましたからね。考査期間で途切れることなく,「授業時間の確保」や「学習の継続性」が更に強化されたことになります。
 また,学期の中に夏休みとか冬休みの長期休業が間に組み込まれるので,これを,それまでに学習した内容の補充や定着のための時間とすることもできます。前期と後期の2つの長いスパンにすることで学校行事の配置等もバランスがとれてくると思います。

 さて,もう一つ,三つ目の理由です。
3枚目のシート

 3枚目のシートを見てください。これは,今年,本校を希望する中学生や保護者の方々に配布した本校の学校案内です。その最後のページに,こう書いてあります。
   ・「動の前期」
   ・「静の後期」
 先日の体育祭は3年生が学校行事に主役として参加する最後の学校行事でした。そして,いよいよ,現在は大学入学共通テストの出願するという時期となりました。
 後期の文化祭以降の学校行事からは,3年生はその運営等からは退き,それぞれの希望する夢に向かって自分と向き合っていくまさに,「己を刻む」時期になります。

 鶴丸高校の1年間を,学校行事や部活動などの活動を通して仲間との絆を深め,自分の可能性を高めていく動きのある時期である「前期」と,大学や次の学年などの新しいステージに飛び出していくために一人一人が静かな環境の中で「己と向き合い」知性と教養を身につける「後期」の二つの時期に分けて,メリハリをつけた学校生活を過ごしてもらうというのが2学期制導入の狙いだというのです。これは,私も本当に良くできた制度(高校生活の1年間にストーリー性を持たせたというんでしょうかね・・・)だと思います。今から20年前に2学期制を進めた当時の先生方が一番大事に考えていたのが,これだったのではないかなぁとも思います。

 さて,今日で,この「動の前期」が終わります。
 4月当初,私は,For Othersの校是のもと他者との関わり,社会との関わり,を意識しながら,授業や,学校行事,部活動に取り組んでほしい,特に,学校行事や部活動はその趣旨からも充実させてほしいという旨のお話をしましたが,令和6年度の前期に関しては,主な学校行事は,ほぼ天候に恵まれ,全て成功裏に終わりました。また,部活動も,素晴らしい結果を残してくれたと思っています。
 全国大会に出場した山岳部,百人一首部等,本校が伝統的に強い部活動はもちろんのことですが,今年は,競技人口の多い男子テニス部の県大会のベスト4,男子バスケットボール部,野球部のベスト8はこれは,立派な結果だと思っています。文化部では,九州大会に出場した音楽部,レベルの高い鹿児島県にあって金賞を受賞した吹奏楽部等々・・個人種目で頑張った人もたくさんいました。たくさんあってここでは言い切れませんが,皆さん,本当によく頑張ってくれました。そういった点から,前期の皆さんには,満点をあげたいと思います。そして,これらの学校の教育活動を引っ張ってくれた3年生には本当に感謝しています。

 さて,いよいよ後期にはいります。「動の前期」から「静の後期」への転換です。まず,前期,大変よく頑張ってくれた3年生は,いよいよ自分の進路に向かって,それぞれが頑張る時期になってきました。私たちも3年生を全力でサポートしたいと思います。もちろん3学年を中心とした先生方が直接的には,皆さんを支えていくわけですが,学校全体としても,3年生が学習しやすいような環境,それは,1年生や2年生も含めて学校全体が学びに向かうような静謐な環境をつくったりとか,あと,清掃などが行き届いたきれいな環境を作ったりというところを整えて3年生を後押ししたいと思います。3年生が頑張る雰囲気を見て,きっと1年生や2年生にも,良い効果が生まれると思うのです。

 鶴丸高校に代々伝えられてきた言葉「鶴丸は勉強するところである」を今こそ言うべき時なのかなと思います。私も校長として,後期は,何よりも皆さんに「勉強」してもらいたいということを強く訴えたいと思います。
「動の前期」は今日で終わり,早速,明日から「静の後期」この意識をもって日々過ごしてもらいたいと思います。

 前期の終業にあたり,前期1学期を無事に終えることができたことに感謝するとともに,後期の期間において,鶴丸生の皆さんが,さらに成長できることを願って終業式の言葉とします。
 以上で,終わります。

体育祭 閉会式挨拶(令和6年9月7日)

 令和6年度の創立130周年を記念する第76回鶴丸高校体育祭は,天候にも恵まれ,無事,全ての日程を終えることができました。
 まずは,一つ一つの競技に全力で取り組んでくれた皆さんの頑張りを称えたいと思います。また,この体育祭のために尽力してくれた生徒会の皆さんや放送部を始め各係の担当となった部活動の生徒の皆さん,そして,何よりもこの体育祭を盛り上げてくれた応援団の皆さんに感謝します。

 優勝した2年生,緑組の皆さん,優勝おめでとう。昨年優勝した学年である3年生に競り勝っての優勝。今年1年間で大きく体力が向上したということです。見事な優勝でした。3年生は,この学校行事を最後に,学業に専念することになり,これから先の学校行事は,2年生が中心になります。これからは,自分たちが学校の中心であるという意識で,自信を持って,全ての学校の教育活動に対してこれまで以上に積極的に,主体的に関わってほしいと思います。
 3年生,青組の皆さんもよく頑張りました。持てる力は全て出し尽くしましたか?
 応援の様子等,競技の様子を見ると本当に団結力のあるいい学年集団だなと感じました。ドリームのところでもお話ししましたが,3年生は今日を境に,なりたい自分になるために生まれ変わったのです。明日から,気持ちを切り替えて自分の夢に向かって頑張ってください。3年生が敗れたのは本当に残念ですが,部活動を引退した後の受験勉強が順調に進んでいることの現れだと思い,校長としては前向きに捉えたいと思います。
 赤組1年生の皆さんは,入学して半年たちましたが,学校には慣れてきたでしょうか。このような学校行事をとおして,もっともっと鶴丸高校好きになってほしいと思います。1年生には,これからは何事にも遠慮せずに,自分たちが持っている能力を堂々と発揮してほしいと思います。
 今日は,皆さん,本当によく頑張りました。素晴らしい体育祭でした。これからの鶴丸生に大いに期待しています。

 最後になりますが,同窓会長,PTA会長をはじめとするご来賓の皆様,保護者や地域の皆様,最後までご観覧いただきありがとうございました。鶴丸高校の教育活動は皆様に支えられております。今後ともよろしくお願いします。本日の体育祭に関わっていただきました全ての皆様に感謝申し上げまして,閉会の挨拶といたします。本日はどうもありがとうございました。

全校朝会5(令和6年8月19日)

 みなさん,おはようございます。
 先月7月の22日からの夏季悠学講座,その後,8月に入り,約2週間ほどの夏休みを挟んで,今日から通常の授業が再開します。

 今日は全校朝会になっていますが,その内容は,私のお話だけということですし,暑くて熱中症も心配ですから,体育館に全員集まってもらうのではなく,各教室で,放送で,校長講話を行うこととしました。

 それでは,今日のお話は,それぞれの端末に,事前にダウンロードしている資料2枚を使ってお話したいと思います。まず1枚目,【資料1】を見てください。

 これは,今の1年生が受検した高校入試の各教科の得点分布とそのグラフになります。各教科のグラフに注目してください。社会・数学・理科の3教科については,平均点近くの部分に山がくる,きれいな正規分布のグラフになっています。国語は,その教科の性格上(鹿児島の高校入試の場合,配点の大きな作文などがありますから)毎年,平均より山が右に来る傾向がありますが,これも検査としては適切な分布のグラフになっていると思います。

 注目してほしいのが,「英語」です。実は,毎年,英語は,このように,「きれいな山のグラフにはならない。きれいな分布にはならない」ことが多い教科なのです。資料の一番下,英語のグラフは,今年の1年生が受検した令和6年度のグラフと重なる形で,今の高校2年生が受験した令和5年度の折れ線グラフも載っています。こちらの令和5年度が,特に不思議な形をしていますが,この年,英語の平均点が47.4点です。この折れ線グラフで,その平均点のところに谷があってグラフ的にはアルファベットのMの文字というんでしょうか,少し台形の形をしたグラフになっています。本県の高校入試は約1万人の中学生が受検します。これだけの規模の学力検査で正規分布にならないのは不思議なんですけれども,「英語」に関していえば,これ以前の学力検査においても山の形ではなく,台形の形の折れ線グラフになることが多いんです。そして,これは,実は,本県だけでなく,他の都道府県の高校入試でも,同じような(グラフが山形ではなく,台形型になる)傾向がみられます。

 さて,これは,どういうことが考えられるでしょうか?
 私自身が,県の教育委員会にいるとき,英語の先生方に,この分析をしてもらったことがあります。それによるとまず,英語は小学校の5年生から学ぶ教科(一昔前は,中学校から始まる教科)でした。ですから中学生にとっては学習履歴の浅い教科ということになります。また,英語は,語学,言葉です。やはり,毎日,英語に触れているかどうか = 学習習慣がしっかりしているかどうかということが,ものをいいます。

 これらのことから,短い中学校時代の3年間を通してしっかりとした学習習慣を身につけ,力をつけてきた生徒さんと,そうでない生徒さんとの差が一番つきやすい特性を持つ教科が英語だ,ということなんですね。

 おそらく,本校のように高い倍率で入試が行われた高校においては,この英語が合否の分かれ目になった受検生も多かったのだと考えられます。皆さんの多くは,中学校時代に英語の学習習慣が身についており,英語を苦にしない,苦にしないどころか,どちらかというと,中学校時代の3年間で他の生徒さんたちに英語で差をつけてきた,英語が得意な人が多く入学してきている,データ上はそういう状況が把握できるんですね。
 そして,これは,他の都道府県の,本校と同じような難関大学をめざす生徒が多い全国の上位の進学校においても同様な状況(おそらく英語の強い生徒さんが入学してきている状況があるはず)なんです。

 私は,教員時代に進路指導の担当をしていたことがあるのですが,そういった各都道府県の上位進学校,いくつかの学校の進路指導の在り方について勉強させていただいたことがあります。これらの学校で共通していることは,その「英語」の教科に,非常に力を入れている学校が多いということです。
 このような学校は,もともと英語の基礎学力がしっかり身に付いている生徒がたくさん入学してきている学校のはずなんですが,そういう学校でも,生徒が高校に入学したあと,まずは,そのもともと強い英語の力を揺るぎないものにする,英語の学力を早めに高いレベルで安定したものにしていく,という考え方で進路指導をおこなっている学校が多いのです。
 その理由の一つには,当然,大学受験における英語という教科の重要性というものがあるでしょう。
 皆さんが目指そうとしている進学先の多くが,文理問わず,英語を重視していると思います。例えば,東京大学の2次試験の配点は440点満点中120点が英語,これは文系も理系も一緒です。
 二つ目の理由として,先ほども言いましたが,英語は,語学,言葉です。毎日,英語に触れ英語の学習習慣が身についている生徒は,一旦英語の力が身につけば,簡単にその力が落ちることはない,英語の学力はしっかりと身につけば,崩れにくい教科であるとも言われています。
 だから,英語についてはある程度,早い段階で自信を持った状態,不安のない状態にしてあげて大学受験の時期を迎えさせたい,英語の大きなアドバンテージを持った上で,他の教科をバランスよく得点していく,また,これに加えて自分の得点源となる教科はさらにプラスしていく,というような大学受験に向けての戦略を生徒たちにも,しっかりと意識させている高校が多いように感じました。
 三つ目の理由としては,「英語という教科は学習習慣が大事だから英語を勉強しない日がないようにしましょうね。」ということを意識させ,生徒に実践させることで,他の教科の学習習慣も自然と身についていくからだそうです。いったん勉強するぞと机に座ったら,流れとして英語だけでなく他の教科も頑張るでしょうからね。
 四つ目,最後の理由として,これは私が話を聞いた他の都道府県の進路指導担当者の言葉ですが,「そもそも大学受験でも英語は大切ですが,その先の,これからの時代を生きていく生徒たちのためには英語の能力が必ず必要になるから,我々の高校では英語を頑張らせるのです」ということでした。
 前回の全校朝会でインドの教育制度お話で触れたように,国際的に活躍できる人材を育てるために,日本のみならず,世界中の多くの大学で英語教育に力を入れています。理系の学生さんであっても大学で研究する際,優れた研究の論文等を英語で読むということは当然出てきますし,社会に出てからも海外の人たちと英語でやりとりするということも考えられます。そして,これからの人口が減少する日本社会においては,他国との交流は避けられなくなるでしょう。そのような意味でも英語学習はマスト,必ず取り組む意義があるということです。これは私自身もそう思います。

 鶴丸高校の,英語科の先生方も,皆さんに,確かな英語の力をつけさせたい,また,大学受験等を考える上でも,早い段階で英語が仕上がった状態に,不安のない状態にしてあげたい,という考え方のもと,(これは,かなり以前からと聞いていますが),いろいろな大学入試の問題等を研究され,また東京や大阪の洋書の専門店等に出かけられて英文解釈等に適切な教材となる本を探し,本校オリジナルの英語教材等を作成するなどいろいろと工夫されています。

 さて,今日から正規の授業が再開されます。こんなお話をすると英語の先生以外の先生からは怒られそうな気がするんですけど,少し「英語」の取組には,意識を高く持って,教科担任の先生方のアドバイスをしっかりと聞いて,授業そのものに集中すると共に,家では英語の勉強をしない日がないようにしっかりと自分の1日の計画をたてて,早い段階で,英語については不安のない状態,アドバンテージを持った状態をつくっておいてほしいと思います。3年生の中で,今,英語が少し不安だと感じている生徒さんがいれば,この8月~10月が,これを取り戻すラストチャンスじゃないですかね。秋を過ぎると共通テスト対策や教科書が終わった理科・社会等含めて本当にバランスが問われます。そういう意味で,3年生にとってのこの夏以降,本当に正念場です。頑張ってください。

 英語の話は,一旦,これで終わります。

 それでは,2枚目【資料2】です。7月の末に学校保健委員会というのがありました。これは,学校医の先生,学校薬剤師の先生方にきていただいて,本校での保健安全に関する実態や学校の取組について,それぞれのお立場からの御意見やご提言を頂く会です。そのときの資料の一部になります。

 この資料,「1 身体の状況」を見ると身長は全国平均と遜色ないですが,体重が平均値で2キロ近くマイナスというのが,やはり,大きく心配です。
 このことは「2 体力テストの結果」と組み合わせて考えてみたいんですが,本校生徒の体力テストをみると,反復横跳び,シャトルランは全国平均を大きく上回っている(特に2年生のシャトルランは高い数値),50M走もまずまず,立ち幅跳びもいいですね。
 つまり,脚力を必要とする種目はまずまずの状況にあります。問題は「ハンドボール投げ」です。本校生徒の課題は「上半身の筋力」なのかなと思います。肩はもちろん,腹筋,背筋等の筋力をつける必要があります。体重のマイナス分は上半身の筋力をつければいい,ということでしょうか。
 運動部系の部活動生1,2年生,特にボール競技の皆さんはしっかり強化を図ってほしいと思います。各部活動のミーティングにおいては,食事の面などからも選手一人一人のフィジカル面を強化するということも考えてみてください。上半身の筋力をつけるためタンパク質を意識しながら,もっともっと食べて,バランスのよい体作りを心がけてください。
 文化部の皆さんや部活動を行っていない皆さん,部活動を引退した3年生も,週2,3回は体を動かす時間を作ってください。特に,ウオーキング,ジョギングなどの有酸素運動,軽い運動を20~30分程度取り入れることで,体中の血流がよくなります。そうすると,血液中の不要な老廃物が分解排出され,結果的に疲労回復につながります。(最近,アクティブレストという言葉も聞きますよね)そして脳にも血流が行き渡ることで当然,脳の活性化につながり,落ち込んでいた気持ちがはれたり,勉強にもいい効果が生まれるといわれています。
 週2,3回も運動の機会なんてとれない,という人もいるかと思いますが,学校というところは実にいいところで,週に2,3回は体育の授業というものがあります。今日から正規授業が始まります。体育の授業もそう考えると,自分自身のブラッシュ・アップにつながると思います。しっかりと取り組んでください。

 さあ,夏休みもおわり,本格的に授業が再開します。それぞれ,ただ,漠然と過ごすのではなく,意図を持って行動してほしいと思います。最初の英語の学習習慣を確立しましょうというお話はあくまで,一般論でのお話で,「既に英語には全く不安がありません。校長先生に言われなくても,しっかりとした意識で英語に取り組んでいました」という人には,あまり関係のないお話です。そういう人は,「自分の今の課題はなにか,次の段階で必要なことはなにか」ということを意識して自分自身で工夫して行動することが大切です。
「意識が変われば行動が変わる」という言葉がありますよね。
 夏休み明けのいい区切りです。 
 是非,自分の中の今の課題は今なんだろうということを意識して,それを変えてみようと今日から行動してみてはいかがでしょうか。

 以上で今日のお話を終わります。
 まだまだ,暑い日が続きますが,元気を出して頑張っていきましょう。

全校朝会4(令和6年7月1日)

 おはようございます。
 今日のお話は,突然ですけど,「インド」のお話をします。
 いろいろな意味で,今,注目されている国なんですね。
 まず,インドの人口ですが,今,約14億2000万人,報道等によれば,今年中には,中国を抜いて世界一になるといわれています。前回の全校朝礼で日本の人口の話をしましたが,今,日本の人口は何人ですかね。約1億2000万人でしたよね。
 面積は,328.7万平方キロメートル,これは世界で7位,日本の8.7倍の面積になります。

 最近のニュースで,「グローバルサウス」という言葉をよく聞きませんか?グローバルサウスとは,インドやブラジル,タイ,南アフリカのような,南半球に位置するアジアやアフリカ,中南米地域の新興国・途上国の総称です。その多くの国は,かつての冷戦時代にはアメリカにもソ連にも属さない「第三世界」と呼ばれていた国々と重なります。
 以前は,北半球に位置する経済的に豊かな先進国との格差が「南北問題」といわれ,経済的にも厳しい状態にありましたが,2050年までに,グローバルサウスの国々の名目GDPの合計は,アメリカや中国を上回ると予測されています。
 さらには,人口面においても,グローバルサウスの国々で全世界の3分2を占めるようになると予測されており,国際社会における経済的・政治的な影響力の拡大に注目が集まっています。その牽引役,中心となっているのがこのインドなのです。

 この写真の人物たち(スライド:Google,IBM,YouTube,MicrosoftのCEOの写真),これら名だたるIT企業のCEOは皆インド出身です。
 また,IT企業だけでなく,スターバックスやシャネルのような他分野のグローバル企業でも,インド人のCEOが続々と生まれているそうです。
 このような優秀な人材はどのように育っているのか,私のように学校教育に携わっているものには,インドの教育制度がどのようなものなのかということに興味関心があります。

 スクリーンの資料にあるように,インドでは,義務教育期間が8年間となっています。日本は9年間ですね。その後,日本の中学校2年生から高校2年生までの期間が「中等学校」と呼ばれて4年間あります。大学に入学するまでのいわゆる初等中等教育の期間は日本と同じ12年間です。大学に入る前には,日本と同じように,全国共通試験があり,この結果によって進学できる大学が決まります。制度的には日本と大きくは変わらないような気がします。新年度は4月に始まるそうなのでこれも日本と同じです。

 注目すべきは,その教育内容です。
 まずは,英語教育。そもそも,インドという国は大変広い国ですから,各地の言語がバラバラです。公用語はヒンディー語と言われる言語ですが,地域によってベンガル語,タミル語,ウルドゥー語などの言葉が母語として使用されているようです。そして,インドは以前イギリスの植民地でしたから英語が浸透している土壌がありました。英語はヒンディー語に次ぐ準公用語とされています。
学校教育では,(1)地元の言葉(2)公用語ヒンディー語(3)準公用語の英語の3言語を小学1年生から取り入れる方式が採用されているそうです。日本で英語教育の早期化を行おうとする際には,まず母語の日本語をしっかりと定着させてからという意見もありましたが,このあたりはどうなんでしょうね。早期から多言語を学ばせる効果云々については興味深いテーマですね。

 教育内容におけるもう一つの特徴は,早期のIT教育の導入です。
 IT関連の選択授業は上級初等学校(日本でいう小学5年生から)から始まります。単にコンピュータの操作を覚えるだけではなく,AIやプログラミング(コーディング)について学ぶことができます。また,日本でいう中学1年生の学年ではデータサイエンスの授業も選択可能です。中等学校,上級高等学校と進むにつれて,更に高度な授業が行われていきます。

 最後に,インド教育の特徴としてよくいわれているのが,数学教育の重視だといわれています。インドは数字の「0(ゼロ)」の概念が生まれた国だといわれていますし,君たちもかけ算は九九どころか20×20まで学習するという話は聞いたことがあると思います。
 インドの数学教育の内容を調べてみますと,インドでは「データ処理」,つまり統計が重視されているようです。ビックデータ時代と呼ばれる現代において,一般企業が大量に集められたデータを分析し,それを集客や商品開発などマーケティングに活用することは当たり前となっています。
 近年では,先ほども触れた「データサイエンス」というデータ分析に基づき社会の様々な課題を解決する分野が注目を集めていますが,これにも統計の知識が必須です。このような状況を受けて,2000年頃から世界各国で統計を数学教育の重点に置く傾向がありますが,インドは,低学年の時期から,特にそこにかなり時間をかけたプログラムを組んでいるようです。
 日本においてもようやく統計的な学習に時間が割かれるようになってきていますが,インドに比べるとそのあたりはまだまだ弱いようです。

 実は,近年,インドの学習指導要領に当たる「National Education Policy」(NEP)が約35年ぶりに見直され,その新方針においては,学校制度を3歳から始めるということが示されたようです。
 これから,どんな人材が生まれていくのか。今後の動きに教育関係者は注目しているところです。

 さて,私,今日の話,残り二枚のシートを見せますが,この資料,特に,中国・インドの二カ国はあれだけ大きな面積と人口の国,平均的なデータになっているかどうかは少し疑問があります。こういうデータは批判的に見ることも大切です。おそらくトップ層を中心としたデータの取り方になっているのではないかと思っていますので,私自身は,このアンケートの結果に対して,殊更に,悲観的,自虐的にならなくてもいいと思っています。ですが,やはり,それを差し引いても「日本の若者に元気がない。自信がない」というところは明らかなようです。
 しかし,これからの時代を生きる皆さん,そして,各方面で活躍するであろう鶴丸高校の皆さんは,これら中国やインドのトップ層と互していく可能性のある人々です。彼らは,早期から英語教育やIT教育を行い,数学的な者の考え方が鍛えられている。そして,そのマインドはこのアンケートの結果のように,社会や世界を大胆に変革していこうというギラギラしたものを持ったそんな若者たちなんだろうと思います。皆さんは,このような外国の若者たちと接していくことになります。
 こんな話を聞いたら,気が引けて,「いや,私は日本から出ませんから」と思わないでくださいね。前回の全校朝会でお話ししたとおり,日本からは人がいなくなるんです。世界中からいろんな人が入ってくると思いますよ。おそらく,君たちの時代は,日本にいても,日本とは異なる文化的な政治的な背景や価値観を持ったいろいろな人々と接していかなければならない時代になります。やはり,内向きにならずに,広い視野を持って,他者との協働,社会への参画という意識は今の若い人たちには持っていてほしいと思います。

 日本的な価値を否定する必要はないと考えます。控えめで礼儀正しい日本人の気質,これを消極的だと捉える向きもありますが,私は悪いとは思いません。これ自体は世界に誇れる大事な日本人の特性だと思います。外国の方の積極性,ギラギラしたがむしゃらさ,これもいいと思います。これからは,異質な価値観にお互い敬意を表し,勉強し,理解することで新しい価値を皆さんが生み出していくことが大切です。日本人・外国人のボーダーも薄くなっていく時代になるのでしょうね。少子高齢化等をあまりに言い過ぎて,これからの将来少し,ネガティブに,悲観的に語られる向きもありますが,そう考えると,君たちの未来は,案外,面白い時代になるのかもしれません。

 君たちが主役になるその時のために,意識し,実行してほしいことを二つ申し上げますが,一つは,やっぱり,今,目の前にある授業をはじめとする学校の教育内容をしっかりと消化してほしいということです。
 先進国間の学習定着の状況等をみても日本の教育力は幸い世界の上位に位置しています。日本の学校教育のプログラムの内容は,インドほどとがった内容のプログラムではないですが,世界の若者たちにも十分ににも戦っていける最低限のミニマムな内容のプログラムです。それは確実にクリアしたい。その上で,今日話したように,理系の生徒であっても世界に通用するための英語学習であるとか,文系の生徒であっても統計学とかデータサイエンスにつながるような数学的なものの考え方を磨くということは少し意識してほしいと思います。

 もう一つは,(こちらがかなり大切だと思いますが,)「願わなければ,叶わない」という言葉がありますが,自分の行動やこれからの進路を考えるときに,夢に向かって強く願うということを恥ずかしがらないでほしいということです。このあたりのマインドが日本の若者に身につくかどうかが日本の若者が伸びるか否かの鍵となるものだと思っています。インドはじめ他国の若者の強さというのはこの辺にあるのではないかと思っています。3年生は進路選択において,受験生として一番伸びるはずのこの夏を迎える前にちょっと弱気になってないですか。しかるべき時がくれば折り合いをつけなければならないときはあるとは思いますが,今,この段階ではおおいに夢を語ってよろしい。語るべきだと思います。将来はこんな風になりたい,こんな職業に就きたい,絶対この大学に入りたい,世の中を社会をもっと良くしていきたい,と強く願ってください。その強い願いがないと受験勉強なんか頑張れないですよね。

 今日から7月です。3年生は教科書を終えつつある教科もあると思います。これまで習った内容で不安な分野等はないですか。時間のとれるこの夏,自分の弱点や不安な部分を補うチャンスだと思います。頑張ってください。
 今月も,1年生,2年生含めて皆さん一人一人が,学業はじめ,学校生活全般において高い意識と大きな志をもって毎日を過ごすことができるように願い本日の全校朝会の話としたいと思います。

全校朝会3(令和6年6月10日)

 おはようございます。
 今日は,先月のお話の続きです。
 先月は,本校の教育目標やスクール・ミッション,スクール・ポリシーについてのお話をしましたが,今日は「これからの時代を生きる皆さんに求められていること」と題して本校のみならず,日本や世界の若者に求められていることについてお話をします。

 では,スライドの2枚目を見てください。ここに写っているのは,少し古い資料ですが,平成23年に国土交通省が作成した「我が国における総人口の長期的推移」です。私は,1967年の生まれなのですが,ちょうどその頃に日本の人口が1億人を超えたと言われています。その後,日本の人口は2004~8年頃に1億2800万人くらいでピークが来て,その後,後退局面にはいっています。現在は約1億2400万,これが2040年代~50年代には,1億を切るだろうという予測です。

 現在でも宅配便,バス,タクシー等,各業種において人手不足がいわれています。人手不足になるのは予測はできましたが,こんなに早く人手が足りないという状況がやってくるとは・・・。
 この先,ただ単に人口が減るというだけでなく,その中身についてもこれまでと大きな違いがあります。同じ1億人の人口でも,私が生まれたときの1億人と今度やってくる1億人の時代では・・・,もう,わかりますよね。若い人の割合が大きく異なっている,当然若い人が,すごく少なくなっている1億人なんです。
 これから,どうなっていくのでしょうか。このような時代を今からの若い人たち(君たち)は生きていくのです。

 実は,一昨年,今後5年間の国の教育をどうしていくのかという教育振興基本計画というものが策定されました。これを策定する際,「現状の世の中は,このようになっていて,これからの時代はこうなっていく。そのためにこれからの時代を生きる子供たちにはこのような力 = 資質・能力を身につけてほしい」という議論がなされます。
 まず,これからの時代がどんな時代かということですよね。この計画を策定する議論の中で,これからの時代は「予測が困難な時代」だという表現が使われました。
 先ほど述べた,少子高齢化の他,国際情勢の不安定化,グローバル化・情報化の進展は,私たちの生活にどのような影響をあたえるでしょうか。経済は,地球環境はどうなるでしょうか。情報化の話でいえば,生成AIの登場は今後の教育の在り方に大きな影響を与えるかもしれません。どんな時代になるんでしょうかね。
 国の教育振興基本計画では,「予測が困難な」これからの時代に必要とされる人材は,「未来に向けて自らが社会の創り手となり,持続可能な社会を維持・発展させていく人材」だとされました。これだけ人口が減る,若い人が減るわけですからね。若いみんな一人一人が主役になって「社会の創り手」になるわけです。控えめな性格の人であっても,前に出ざるを得ない時代になっていくのかもしれません。
 このような問題意識は日本だけではなく,例えば,よく先進国間の学力検査を行うOECDという機関がありますが,ここが発表した報告書の中でも,「自ら考え,主体的に行動して,責任をもって社会変革を実現していく姿勢・意欲」を持った人材の育成が大切であるとされています。持続可能な社会の作り手になったり,社会変革を実現していく人材が必要であるという認識は,今や世界の教育の潮流なんですね。

 さて,国の教育振興基本計画では,このような人材に必要とされる「資質や能力」が示されています。それは,

  • 「主体性」
  • 「リーダーシップ」
  • 「創造力」
  • 「課題設定・解決能力」
  • 「論理的思考力」
  • 「表現力」
  • 「チームワーク」・・・

といったものです。

 それでは,このような資質・能力をどのように身につけていくのかということが,次のポイントになります。
 「主体性」や「リーダーシップ」,そして,「チームワーク」,こういった資質能力は,一人では身につきませんよね。ほぼ,他者との関わりの中で育つものだと思うのです。
 私は,ここで,本校の校是である「For Others(フォー・アザーズ)」の出番なんだろうなと思っています。

 他の人々のために自らが行動を起こす。そういう意味で,鶴丸高校の皆さんには少しアクティブになってほしいと思います。部活動や特別活動,総合的な探究の時間はこれまで以上に大事な時間になるだろうと思います。また,国や県などが募集するボランティアや国際交流,他県との交流など学校外で社会とつながる活動は,そのいい機会になるのではと思っています。是非,積極的に参加してもらえればと思っています。
 先日,県が主催するイギリスとの国際交流「薩摩スチューデント事業」の募集がありました。これは,県全体で2,3人の派遣枠なのですが本校からは10数名,手を挙げてくれて頼もしく思ったものです。学校でも気をつけて,いろいろな交流事業・派遣事業等を紹介していきますので,是非,積極的に挑戦してほしいと思います。
 また,肝心の学校の授業の中においても,先生方側が,一時間独演会のような講義形式だけを行うのではなく,他者との関わりの関わりの中で課題解決していくようなそのような,そんなアクティブな学習活動や場面を多くしてもらえるよう年度始めに先生方にお願いをしたところです。
 内向きにならず,社会への参画,社会とのつながりを意識することによって鶴丸高校の生徒たちが,本校のスクールミッションにもあるとおり「国家社会の繁栄と国際社会の進展に貢献できる,社会の各分野におけるリーダー」になってもらいたいと思っています。

 最後に,君たちにこうなってほしい,このような力を身につけてほしいといというお願いばかりではなく,私たち学校としてもここは頑張りたいということをお話しします。
 まず,私が校長職を拝命したときに,鶴丸高校でまず,何をしなければならないかということを考えたときに,はやり,本校の宝は,高い能力,豊かな才能持った皆さんの存在であり,その皆さんが,安心して伸び伸びと教育活動が行える,十分に自分の力を発揮できる,その環境を整えることだと考えました。
 ですから,スライドにもあるとおり,今,私が,一番大切にしたいと考えているのは,当たり前のことなんですけど「安全・安心な学校づくり」をしたいということです。

 安全・安心といえば,まず,施設設備の安全管理や事故予防,また,万が一のことが起きたときの対応等をどうするかということが思い浮かびますが,私はこれに加えて,皆さんの能力が最大限に発揮されるよう教育相談体制等を整備することにより「ストレスなく安心して気持ちよく」生活ができる環境や雰囲気を整えたいと考えています。
 もし,今,学校にいることに息苦しさだとか何かおかしいなと思ったら,担任の先生や話をしやすい先生方に声をかけてくれないでしょうか? 私たちは,必ず君たちの力になりたいと思います。
 学校という場所が,常に「安全・安心な状態にあること」そして「皆さんの心の中が安心して安定した状態にあること」が,学力の定着,学力の向上にも健康の増進・体力の向上等にも,必ず繋がるものだと思っています。
 私たちの学校の校歌(「はろばろと」)では,3番の歌詞に「誠持て人を愛せん」とあります。全ての生徒が個人として尊重され,それぞれの人格や人権が大切にされ,お互いがお互いを思いやる気風が学校に醸成されることを期待しています。また,校歌のメロディーのように,優しく,温かく,柔らかなそんな学校の雰囲気が生まれてくれれはいいなと思っています。

 私たち教職員一同,全ての生徒の皆さんが,学校が安心して楽しく通える,魅力ある場所となるよう力を尽くして行きたいと考えます。そして,この環境の中で,将来は,日本の宝になるであろう君たちが,学びたい勉強を思いっきり学べる,そんな鶴丸高校にしていきたいと思います。今日は,そういうお約束をして,私の今日の全校朝礼のお話としたいと思います。

 今週,2年生は,楽しみにしていた修学旅行が実施されます。多くの部活動も高校総体総体を終え,新チームに移行しました。先ほど会長に委任状をお渡ししましたが,今年度前期の生徒会役員も決まりました。学校も本格的に動き出した6月です。今月も頑張りましょう。
 以上で私の話をおわります。

全校朝会2(令和6年5月13日)

 皆さん,おはようございます。
 今日は皆さんにタブレット持ってきてもらいました。来る途中,落としませんでしたか?教室に帰るときも気をつけてください。
 忘れた人のために,前方にはスクリーンも準備しました。

 今から5年ほど前,令和元年度に,文部科学省から,いわゆる「ギガスクール構想」というものが打ち出されました。
  (1)各学校に高速大容量のネットワーク環境と
  (2)児童生徒向けの1人1台端末を整備して
日本の教育の内容を大胆に変えていこうという構想です。

 1人1台端末については,当初,もう少しゆっくりと整備される予定だったのですが,新型コロナウイルス感染拡大による臨時休業等の影響もああり,その実施が前倒しされ,令和3年度には,本県においても,ほぼ全ての義務教育段階の小学校,中学校等で,「1人1台」の環境が実現されたのです。

 本校では「学校評価」を実施しています。昨年度,生徒向けに行った本校の教育内容に関するアンケートの32項目の中で,最も評価が低かったのが「授業展開や教材にICT危機を活用している。」という項目でした。これは,同様な内容で先生方にもアンケートをとっているのですが,やはり,この項目の評価が一番低くなっています。
 今や6歳くらいの小学生1年生の全児童にもタブレットが行き渡っていて,小学校の授業の中で活用されているんですよね・・・。高校だけ乗り遅れるわけにはいかないと思うんです。

 今日,こうして,全校朝会で話す内容の資料を皆さんのタブレットに入れて持ってきてもらっています。紙を使わなくていいということも端末を活用する利点だと思います。
 全校朝会の校長講話は,たかだか15分程度。今日の資料を人数分,紙で印刷して配れば約5,000枚ほどになるでしょうか。学校って紙を使う所なんですね。
 これだけ地球温暖化で,CO2削減だ,カーボンニュートラルだといわれている中です。もったいないですよね。
 おそらく,学校のICT化の流れは,もう後戻りできない。と考えます。私が1番アナログ世代の人間だと思いますが,今日はICTを活用して頑張ってお話ししてみたいと思います。

 今日のお話は,実は,先週の金曜日がPTA総会がありまして,その時に,学校の教育目標など,学校の経営方針等について保護者の皆様方にお話しした内容なんです。
 学校の経営方針だなんて,あまり,生徒の皆さんの目に触れることなどなくて,私が職員会議で先生方に話したり,PTA総会で保護者の方々に話したり,するくらいだと思うのですが,実は,君たちこそ,自分の学校の教育目標や教育方針は何か,いう話は知っておかなければならないと思うんですよ。学校の主役は君たちですからね。

 それでは,タブレットの中の全校朝会資料というプリントを見てください。
 まず,レジメの1番,まず,本校の「好学愛知」,「自律敬愛」,「質実剛健」,これは,『校訓』とは言わず『建学の理念』といいます。
 校是はご存じのとおり「フォー・アザーズ」です。

 レジメの2番の教育目標は,教育基本法やこれら建学の理念を踏まえ,3番の努力目標は具体的に生徒指導,進路指導,教職員の研鑽等の面からまとめて示しています。

 さて,今日,始めてお披露目するのが,4番目の「スクール・ミッション」と5番目の「スクール・ポリシー」になります。
 こちらは,スライドでお示しさせていただきましたが,令和3年に学校教育法施行規則の改正に伴い,県立学校に関しては県教委において,それぞれの学校に期待される社会的な役割「スクール・ミッション」を策定しなさい。そして,それに応じて,学校においては,「育成を目指す資質・能力に関する方針(グラデュエーション・ポリシー),教育課程の編成及び実施に関する方針(カリキュラム・ポリシー),入学者の受入れに関する方針(アドミッション・ポリシー)」の3つの方針=「スクール・ポリシー」を策定し,公表しなさいということになりました。
 この策定に関しては,学校関係評価委員会の方々や,同窓会・PTAの役員の方々,また生徒会の皆さんの意見等も踏まえています。先週は,保護者の皆さんに,そして今日は皆さんに「公表」しました。時間があるときにじっくり見ておいてください。

 特にアンダーラインで引いた部分。鶴丸高校のスクール・ミッションにあるとおり「国家社会の繁栄と国際社会の進展に貢献できる,社会の各分野におけるリーダーの育成」が本校に求められているということ。そして,これを踏まえて,本校では,身につけさせたい資質・能力として「主体性」,「課題解決能力」,「深い思考力」,「他者との協働ができる力」をスクール・ポリシーに位置づけているということを,少し気に留めて読んでおいてください。

 次回の全校朝会では,身につけさせたい資質・能力のお話に関連して,近年の学校教育,高校教育に求められている教育の世界の大きな潮流について,説明をしたいと思います。

 5月に入り,良い季候になってきました。今週から教育実習の先生方もいらっしゃいました。充実した5月になることを願っています。以上で今日の話を終わります。

全校朝会1(令和6年4月15日)

 おはようございます。新学期が始まり,1週間がたちましたが,新しい環境には,少し慣れてきたでしょうか?
 今日は,少し個人的な,思い出話からお話をはじめます。

 今から20数年前,私は,1年生のクラスの担任をすることになりました。入学式も終わり,ちょうどこのくらいの時期です。一人,元気のない生徒(女子生徒)さんがいたんです。
 入学したての,この時期ですので,まだ緊張してるのかと思ったんですが,何日経ってもずーっと表情も暗い。元気がない。気になってたんですよね。

 ようやくゴールデンウィークの前にまとまった教育相談,面談の時間が持てたんです。話を聞くことができました。

 「元気がないけどどうしたの?」,「宿題がおおくて授業がたいへんなの?」,「おうちで何かあったの?」と聞いたのですが,最初は,なかなか話してくれませんでした。ようやく重い口を開いて,少し,涙ぐみながらこう言ったんですね。何て言ったと思います?

 「先生,休み時間が嫌なんです。」って言ったんですよ。
 「特に,昼休みが嫌で嫌で・・・」,「授業はまだいいんです。みん同じように静かだから」「宿題は,自分が頑張ればいいだけなので・・・そんなのも我慢できます。でも・・・」

 「あーっ」と思いましたね。確かに,名簿をよく見たらその子は,学校から離れたところから来ているので,同じ中学校の友達もクラスにいなかったんです。なかなか周りの人たちと話せずにいたんですね。

 私も,まだ若い未熟な教師だったんですね。「気づいていあげられなくてごめんね」という気持ちで,なんとかしなきゃと思って,本屋に行って学級づくりについて勉強したり,ロングホームルームの時間にすこしアイスブレーキングできる催し物を考えたり,昼休みに教室に行って一緒に弁当食べたり,今考えると,昼休みの弁当は,絶対に「ドン引きされていただろうと思うのですが・・・。いや,僕も必死だったんですね。

 鶴丸高校の1年生の中には,もしかすると,今,「その気持ち,わかるかも」「私もなんです」という人がいるかもしれませんね。でも,心配しなくてもいいですよ。若い君たち同士が仲良くなるというのは,意外に時間が解決してくれるものなんですね。

 先程,お話した私の件では,すべて杞憂におわったというか,その子は5月6月,1学期の半ば頃には,その生徒,なんか自然にクラスに溶け込んでくれてました。
 あとで,聞いたら,遠足があった日に,新しい友だちができたり,部活動に入ったのが良かったみたいでした。部活では,先輩たちが優しくしてくれたんだそうです。「学級や部活動の友達のおかげで元気になりました。」と笑顔で話せるようになってくれたんです。(「担任の黒木先生のおかげで元気になりました」と言われなかったのは残念ですが,それはそれでいいんです・・・。)
 こういった学校行事や部活動というのはやはり大事な意味を持つんだと感じるところでした。
 さて,今週は,18日の木曜日には創立記念式典と記念講演会,今年は,創立130周年の節目の年です。大事な式典になります。19日の金曜日には,皆さんお楽しみの甲鶴戦です。
 木曜日の創立記念式典の方は,また,その日にお話をする機会があるのですが,甲鶴戦については私から皆さんにお話するのはこの機会しかないかもしれないので,今日は,最後に,甲鶴戦に向けて君たちに期待することをお話をします。

 出場する選手の皆さんは,まずは,当日の勝負の大舞台に立つということが大事ですから,怪我や感染症にかかって本番に出られないとかがないように,特に3年生は泣くに泣けないですよね。今週は,当日に向けて,最高のパフォーマンスが発揮できるよう体調管理に努めてください。
 そして,試合当日は,「伸び伸び,思い切ってやってください」若い皆さんが,ひたむきに,そして,生き生きと,キラキラと躍動している姿は,それだけで観客の皆さんに感動をあたえるのです。自分の持てる力を十分に発揮して,私たちに元気を与えてくれるような,君たちの最高のプレーみせてください。

 応援する皆さん,特に1年生の皆さんにとっては,友達との仲がぐっと近づく日になると思いますし,おそらく,自分は鶴丸高校の一員なんだということを実感する一日になるでしょう。校歌はろばろとを早く覚えて,当日はみんなで肩でも組んで大きな声で歌ってみましょう。
 また,いろいろなスポーツの競技が一日に一気に見られる機会って滅多にないことなんです。これは,保健体育の学習の一貫また,知識や教養を深めるという意味においても,それぞれの競技のルール等に注意しながら見てください。スポーツ観戦の趣味の世界が広がり,豊かな人生を送るきっかけの日になるかもしれません。

 応援団のみなさん,皆さんは,ある意味,甲鶴戦の主役です。あなたたちが献身的に選手のみんなをそして鶴丸高校を応援してくれること,私たちは皆さんに敬意を表してますし,誇りに思います。応援団の力で鶴丸高校をひとつにまとめてください。よろしくお願いします。

 看板の作成では美術・書道部等が頑張ってくれているようです。当日は,吹奏楽部,放送部等の文化部の皆さんもいろいろな場面で甲鶴戦を支えてくれています。
 もちろん,ここに至るまでの準備を始め,当日,運営をおねがいする生徒会の皆さん,甲鶴戦の当日も,全体の動きを見ていろいろな所に気を配っていただけないでしょうか。会場の場所がわからなさそうにしている人には声をかけたり,道路にゴミが落ちていたら拾ってあげたり,会の運営というものは,案外そのような点が評価されるのです。鶴丸の生徒会,さすが,といわれるように,よろしくお願いします。

 この甲鶴戦に関わっていただいた方は学校関係者だけではありません。外部の審判員の方々にも,それから会場の鴨池の運動公園の方々始め地域のいろいろな方々の協力ももらいます。
 そして,このような学校の対抗戦ができるのもお相手の甲南高校さんがいてくれるからなんですよね。

 いろいろな方々への感謝の気持ちをもって当日は,一人一人が,思い出に残るような甲鶴戦にしてほしいと思います。そして,この学校行事をとおして,新しい友達,新しい仲間との絆が深まることを期待しています。

それでは以上で,全校朝礼のお話をおわります。

令和6年度入学式式辞(令和6年4月9日)

 穏やかな春光と桜の花びらが優しく降り注ぎ,校舎を取り巻く木々にも新緑が芽吹き始める彩り豊かな季節となりました。この佳き日にご来賓,保護者の皆様のご臨席を賜り,令和六年度鹿児島県立鶴丸高等学校第七十八回入学式を挙行できますことを職員一同心から感謝申し上げます。
 ただ今,入学を許可しました三百二十名の新入生の皆さん,入学おめでとうございます。本校の一員となられたことを祝福いたしますとともに,教職員並びに在校生一同,皆さんを心から歓迎いたします。
 本校は,鹿児島県立第一鹿児島中学校及び第一高等女学校を前身とする学校ですが,今年は,第一鹿児島中学校の開校 ~ 開校当時の名称は鹿児島県尋常中学校と称しますが ~ その開校からちょうど百三十年目の節目の年を迎えます。
 本県で最も古い歴史と伝統を誇る高等学校であり,これまでに四万六千人を超える先輩方が本校で学び,卒業後は県内はもとより,国の内外で活躍しておられます。先輩方が創り上げてきた本校の歴史と伝統から多くのことを学び取り,高い志を持ってこれからの生活を送ってほしいと思います。
 さて,今日は,皆さんを迎えるにあたり,鶴丸高校生として皆さんに期待することを二つお話します。
 一つ目は,建学の理念と校是に込められた思いをしっかりと理解し,確かに学び成長してほしいということです。皆さんから向かって左前方の額に掲げられた言葉が,建学の理念です。
  真摯な態度で意欲的に学び,真理を探求し続ける姿勢を示した「好学愛知」
  自らを律する一方で他者を敬い大切にする「自律敬愛」
  飾り気なく誠実で,心身ともにたくましい様を示す「質実剛健」
 そして本校の校是は「フォー・アザーズ」です。この「フォー・アザーズ = 他の人々のために尽くす」という精神は,やみくもに自己犠牲の精神で他者に尽くせということではありません。人が,真摯な態度で学びを極めていくという過程において,人として自らに課せられた役割と責任が自然と自覚され,自発的に,自ら進んでその実践がなされていくという考え方にたっています。
 すなわち,建学の理念である「好学愛知」「自律敬愛」「質実剛健」の三つを体現した人に校是である「フォー・アザーズ」の精神が身についていくのです。
 皆さんには,鶴丸高校で学ぶ三年間の中において,これら建学の理念や校是を胸に刻みながら,自らの希望や目標を大きく持って一歩ずつ着実に努力のできる人間に,そして,他の人々のことにも思いを致すことのできる豊かな心を持った人間に成長してもらいたいと思います。
 二つ目は,社会の現状や変化に対する感度を高め,将来は,自らが,よりよい社会の創り手となるという意識を持って,鶴丸高校の学友と切磋琢磨してほしいということです。
 急激な少子高齢化や人口減少,グローバル化の進展と地球規模での環境問題,情報通信機器の高度化などを踏まえて,現代社会は予測困難な時代だと言われています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大や国際情勢の不安定化の問題は,予測困難な時代を象徴する出来事にようにも思えます。
 そして,このような時代に求められている資質・能力については,例えば,「主体性を持って事に当たることのできるリーダーシップ」であったり,「自ら課題を設定し,解決する能力」であったり,その他,「論理的思考力」「創造力」「表現力」・・・ といったものが挙げられています。
 これらの資質や能力は,自分の殻の中に閉じこもっていては身につきません。他者との関わり,他者との関係性の中で身についていくものです。学校という場はまさに,他者と「協調」し,「共に協力して働く」=「協働」することを身につける場所です。協働的な取組は,新たな気付きや思考の深まりを促し,成長の契機となることも多いものです。
 皆さんが,それぞれに,よりよい社会の創り手,担い手になるための課題意識を常に持ち,これから始まる授業や学校行事,部活動や生徒会活動などの様々な場面において,ここ鶴丸高校に集った仲間達とともに,学び合い,高め合って,共に成長していくことを心より願っています。
 保護者の皆様,本日はお子様の本校へのご入学,本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。併せて創立から百三十年の伝統を持つ本校での学びに信頼と期待をもってお子様をお預けいただきますことに深く感謝申し上げます。本校を選んでいただきまして本当にありがとうございます。
 学校は,生徒たちが集い,人と人との触れ合いにより,人格の形成がなされる場です。「生きる力」を育む学校という場において,生徒たちが伸び伸びと教育活動を行うために私たち教職員が心に留めておかなければならないことは,学校は「安全で安心な場所でなければならない」ということだと思っています。確かな学力の定着や学力の向上,豊かな心や健やかな身体を育むことなど,学校の全ての教育活動の基盤は安全・安心な環境を整えることから始まると考えます。
 私ども教職員一同,全ての生徒達にとって,鶴丸高校が安心して楽しく通える魅力ある場所となるように努め,生徒の皆さんの能力をさらに引き伸ばすことができるよう全力で支援していくことをお約束します。
 保護者の皆様方におかれましても,本校の教育方針を十分にご理解いただきますとともに,学校が意欲的に教育活動に邁進できますよう,ご支援とご協力をお願い申し上げます。
 結びに,本校の教育活動に対し,温かいご理解とご支援を頂いている関係各位に感謝とお礼を申し上げ,式辞といたします。

                            令和六年四月九日 鹿児島県立鶴丸高等学校
                                                      校長 黒木 誠

令和6年度 始業式(令和6年4月8日)

 皆さん,おはようございます。
 令和6年度の始まりに当たり,少しお話をさせていただきます。

 まずは,皆さん,新2年生,新3年生への進級,おめでとうございます。今日のこの日に,一つ年を重ねて,上級生になるということ,そして新しい環境になる,あたらしい出会いがある,ということは,本当に大切なことで,喜ばしいことなのです。

 私も,個人的な話で恐縮なのですが,4月1日から環境が大きく変わりました。もともと学校で教師をしていましたが,11年前から県庁にある教育委員会に勤め,久しぶりに学校に戻ってきました。私が,学校に戻ってきたなぁと実感したのは変な言い方ですけど「音」なんです。

 甲鶴戦(甲南高校とのスポーツ交歓会)の応援の練習でしょうか,太鼓の音,応援団のかけ声が,まず,耳に入ってきました。遠くからは硬式野球のボールが金属バットにあたって飛んでいく「カキーン」という音(好きなんですよね。あの余韻がいいんですよね),テニスのラケットでボールを打ったときの「スコーン」という音。体育館ではバレーボール?バスケットボール?ボールが床に「ドンドン」とバウンドする音,吹奏楽はパート別の練習なんでしょうか,いろんな楽器の音色が聞こえてきます。音楽部は,校歌「はろばろと」の練習をしている歌声もきこえました。
 本当に,自分は,学校に戻ってきたんだと感じるとともに,自分の中の感情の悪い部分が消えて浄化されたような,リセットして生まれ変わったような・・・「音」だけで変な話ですけどね。でも「音」ってすごい力があるんだとも思いました。

 鶴丸高校に到着して最初にお話した生徒さんは,甲鶴戦の応援の練習をしている応援団の生徒でした。「甲鶴戦,今年は勝てそうなの?」と聞くとニコッと笑って「絶対大丈夫です!頑張ります!」って言ってくれたんです。すごく元気をいただきました。本当に「僕の方こそ頑張ります」という気持ちにさせてもらいました。やはり,新しい環境,新しい出会いは,人間の生活にとって,本当に大切で素晴らしいと思ったところでした。

 さて,学校という場においては,年度替わりのこの時期にクラス替えをするということが多いですね。本校においても,(この後ですかね。気になりますね。)新しい学級となって,皆さんの周りに,話したこともない,初めて会うような新しい級友が自分の周りにやってくるかもしれません。

 「人間は社会的動物である」といいます。人は個人として存在していても,その個人が唯一的に存在し,生活しているのではなく,絶えず他者との関係,人と人との関わりを通して存在します。 
 皆さんも,実感されていると思いますが,人間の感情が揺さぶられる場面(うれしかったり,悲しかったり,感動したり,イライラしたり・・・)というのは,多くの場合,外界からの刺激,他者の存在や行為によってもたらされます。人間は一人で生きているのではないですし,一人で生きられるものでもありません。
 級友,クラスメートというのは,人生のかなり早い時期に出会う,家族以外で結構長い時間を過ごす大事な「他者」です。今日のクラス替えで成立する新しい環境,そしてその環境をどうしていくかということは,やはり,大切な重要な問題なんですよね。
 仲の良かった友人と離れてしまって残念な思いをする人もいるかもしれません。しかし,そういう人は,これは,たくさんの新しい友人ができるチャンス,自分自身の視野をひろげるチャンス,今までになかった刺激を受け,自分の幅を広げ,引き出しを増やすチャンスだと思ってください。
 逆に,今回の学級は,良かった。知っている友達が多かったなぁ,と思っている人たち,クラスの周りを見回してください。寂しそうにしている人がいたら是非,声をかけて上げてください。周りの人たちを思いやる気持ち,気配り,やはり,このようなことは,とても大切です。
 自らが学ぶ場所である自分の学級を自らの意識と行動で良いものにしていくこと,特に,周囲との人間関係をよりよい方向に構築していくことで,自分が伸びていく環境が整います。

 私自身,少し,学校からを離れた仕事をしてみて,「学校」の存在意義は何なんだろうということをよく考えました。これだけ,情報化が進んだ現代において,ある程度の基礎学力があれば,知識を身につけるだけなら,もうスマホが一つあれば済む話かもしれません。
 でも,「学校」が存在するある目的,もっと大きくいうと「教育」の目的というのは「人格の完成と社会性の涵養」なんです。特に「社会性の涵養」自分一人で身につける事はできません。他者と協調,協働しなければなりません。やはり,学校教育の本質は,このようなところにあるのではないかと考えます。

 鶴丸高校では学級のことを「ルーム」と呼ぶんですよね。いいですよね。安心できる空間という感じがします。社会性を涵養するもっとも大切な単位は学校においては学級空間です。
 それぞれが一人一人が,素晴らしいルームを作る努力をしてください。
 ここにいらっしゃる,先生方も,それぞれが担当される「ルーム」がよくなるようにしようという思いです。皆さんの力で,それぞれの学級を,そして鶴丸高校をよりよい場所にしていきましょう。

 さて,新3年生の皆さん,いよいよ勝負の1年ですね。いろんな意味で,君たちの出番です。19日に開催される甲鶴戦もそうですよね。部活動のこと,勉強のこと悔いを残さぬよう全力で取り組んでください。自分の目標に向かって,仲間と共に,鶴丸高校,最後の1年間を充実したものにしてほしいと思います。

 新2年生の皆さん,去年入学したときのことを思い出してください。その時に考えていた高校生活と今の姿を比較するとどうですか? 納得していい1年を過ごした人もいるでしょう。その反面,いろいろな面で伸び悩んだ人,悔いが残った人,つらい思いをした人もいるでしょう。(こんなはずではなかった・・・)
 でも,2年生の皆さんは大丈夫です。だって,君たちには3年生より2倍の時間があるんですよ。大きく変わる,また,大きく伸びる十分な時間とチャンスがあります。自分自身で目標を定めて生活のリズムを整え,焦らずじっくりコツコツと頑張ってほしいと思います。

 今日,話の最初に「一つ年を重ねることができた一つ上級生になるということ,ということは,本当に大切なことで喜ばしいことなのです。」と言いました。君たちが新しい学年になったことを何よりも喜んでいるのは君たちのお父さん,お母さん,保護者の皆さんだと思います。今日は家に帰ったら,学校であったことをたくさん話をしてあげてください。

 以上,始業式のお話とさせていただきます。今年1年間,頑張りましょう。