令和7年度 後期 式辞・挨拶等

最終更新日 2025年11月06日

全校朝会5

令和7年度 後期 始業式

 

全校朝会5(令和7年10月27日)

 皆さん,おはようございます。
 今日は,今月11日に行われた文化祭について,文化祭当日は講評を行うことができませんでしたので,この場を借りて本校の今年度の文化祭とそれに関するについてお話をしたいと思います。

 まず,生徒会の皆さん,特に文化局の皆さん,そして局長さんを中心に,本当に素晴らしい文化祭を企画・運営してくれてありがとうございました。開催前から周知・広報にも力を入れてくれていましたが,今年の文化祭の公式サイトは非常に完成度が高く,感心しました。サイトの制作には生徒会だけでなく,放送部なども協力してくれたと聞いています。
 また,文化祭の係の先生方からは,当日,照明担当や会場整理担当の生徒が非常によく頑張ってくれたとの報告を受けています。これらの係は各クラスから選出されるため,必ずしも全員が希望して担当したわけではなかったかもしれません。それでも,与えられた役割をしっかりと果たしてくれたことを,とても嬉しく思います。本当にありがとうございました。

20251027_全校朝会5_あこう 展示の講評については,文化祭当日はPTAの会長から学級展示についての講評がありましたので,今日,私からは,文化部の展示,特にの生物部の展示について少しお話したいと思います。
 今回,生物部の展示を見に行った際,部員の方から「校長先生,よかったらこれを読んでください」と声をかけられ,この冊子をいただきました。『あこう』という木の名前がタイトルになっている,生物部の研究誌です。この研究誌は,生物部が創設された1962年に第1号が刊行され,1965年までの4年間発行されていたものの,その後は途絶えていたようです。今年度の部員の皆さんが頑張って,なんと60年ぶりに復刊してくれたとのことです。

 この話を聞いて,私はとても嬉しく思いました。文化とは,先人から受け継いだ知恵や技術・技能を,今を生きる私たちが受け止め,昇華させて次の世代へと伝えていくものだと思います。その意味で,生物部の研究誌の復刊は「文化のリレー」が行われた象徴的な出来事であり,大変意義深いものです。このような意識を持って取り組んでくれた皆さんを,非常に頼もしく感じました。
 最近ではデジタル化が進み,紙媒体が敬遠される傾向もありますが,形として残るものには,そこに込められた心が感じられるように思います。鶴丸高校の生物部の皆さんにとって,この研究誌は後輩たちが研究を進める上での道しるべとなるでしょうし,卒業後に高校生活を振り返る際にも,自分が何を思い,どんな気持ちで研究に取り組んでいたかを確認できる,非常に意味のあるものになると思います。

 今回の文化祭は,生物部に限らず,各クラスや各部活動においても非常にレベルが高く,まさに鶴丸高校らしい,そして君たちらしい文化祭だったと思います。中心となって活躍してくれた1・2年生の皆さんは,これからも自信を持って学校生活を送ってください

 さて,3年生にとっては,主役の座を1・2年生に譲っての初めての学校行事となりましたが,受験勉強の合間の良い気分転換になったのではないでしょうか。先生方も,3年生に向けてパフォーマンスを披露してくれましたが,いかがでしたか? 先生方の思いは,皆さんに「届いた」と信じています。多くの方々が,皆さんを応援しているのです。
 共通テストまで,あと3か月ほどです。時間を無駄にせず,1日1日を大切にして,しっかりと頑張ってください。

 以上で,今日の校長講話を終わります。今週末からは11月に入ります。鶴丸生の皆さんの今後のさらなる活躍を心から願っています。

 

 

令和7年度 後期 始業式(令和7年10月1日)

20251001-スライド1 皆さん,おはようございます。今日の始業式講話もスクリーンを使いながらお話をしていきたいと思います。
 前回,終業式のお話では,「For Others」に関するお話の中で,皆さんが将来大人になったときに,For Othersの精神で,世の中に,社会に貢献できる人間になれるよう「この高校時代にしっかりと準備をしておこう」「今,この鶴丸高校で頑張ろう」とお話をしたと思うんです。
 今日は,世のため人のためにも,だけど,何より,皆さん一人一人が自分のためにも,今,この時,この高校生の時期を頑張っていこうというお話をします。

 この秋休み,ちょっと唐突なお話で申し訳ないのですが,動物園に行ったんですよ。動物園の動物,皆さんは何が好きです?
 私はサルが好きなんですよ。サルも人に近いサル,例えばチンパンジーやオランウータン,ゴリラといった類人猿です。かれらのジェスチャーとか見てるともう人間ですよね。見ていて飽きないです。彼らは,檻の向こうから見ている私たちの反応もみて動いていますよね。
20251001-スライド2 さて,スライドにはゴリラの赤ちゃんの写真を出しましたが,「ゴリラの赤ちゃんは・・・」。 ・・・には,なんと続くと思いますか。

 実は,私,今年の春先にゴリラをはじめとする霊長類・類人猿研究の第一人者として知られる総合地球環境学研究所の所長,山極壽一先生のお話を聞く機会があったんです。
 山極先生は,アフリカ各地で野生ゴリラの社会生態学的研究に従事,その生態から人類の起源を探究している研究者です。実は本県屋久島で野生ニホンザルの調査にも携わられたご経験を持ちます。日本霊長類学会会長,国際霊長類学会会長,日本学術会議会長などを歴任されて,2020年までは京都大学の学長もお務めになられました。 
 私が5月に聞いた講演会は,私のような教育関係者が集まる会でしたから,先生はご自身のゴリラ研究をもとに人間の教育・子育てに関してお話をしてくださったんです。
 で,先ほどのゴリラの赤ちゃんに戻ります。山極先生が人間の赤ちゃんとゴリラの赤ちゃんの違いの話から人間の子育てについてお話ししてれたのですが,その違いなんだかわかりますか? ゴリラの赤ちゃんは・・・・
「泣かない」んだそうですよ。
20251001-スライド3 ゴリラの赤ちゃんは3~4年,チンパンジーは5年,オランウータンは7年ほど母乳を吸って育つ。常に母親にしがみついてほとんど泣かないんだそうです。これらの類人猿は森の中にすんでいます。私たち人類は,その進化の過程で森を捨てて広い世界に直立二足歩行で飛び出した生き物。
 ゴリラの赤ちゃんは,腕の力が強くてお母さんから離れずに安全な状態,また,ある程度安全な森の中ですから泣く必要もなかったんでしょうね。
 人間の赤ちゃんは1歳から1歳半で離乳します。これは人類は絶滅を避けるために,子供をたくさん産むために,お母さんが次の赤ちゃんを早く産めるためだといわれます。
 人間の赤ちゃんは自力で母親につかまる力がありません。大きな声で泣くことで周囲にケアを求めます。早くに離乳する子どもを育てるには,母親だけでなく,共同体全体での保育が必要になりました。お父さんも赤ちゃんを抱っこする。おじいちゃんやおばあちゃんも抱っこする。人間はこの乳幼児期に,いろいろな他者の気持ちを感じ取る「共感力」を発達させることがてきると山極先生は述べています。人間の子育てにおいて特に重要なのはまずは,この乳幼児期だというんです。赤ちゃんが泣いたら反応,いいレスポンスをしてあげないといけない。これによって他の動物,類人猿とも異なる発達した「共感力」を身につけることができるのだそうです。
 君たちは,ここを上手く通過してここにいるんだと思うんですよ。

 そして,山極先生がおっしゃるに子育てにおいて次に大切なのが,「思春期」なんだそうです。
20251001-スライド4 人間は霊長類の中でも特に,脳の発達を優先させるために身体の成長が遅いという特徴があります。生後1年で脳の大きさは誕生時の2倍になり,その後,サイズだけなら6歳=小学校に入る頃には,もう大人の脳の90~95%のサイズになっているといわれます。そして12~16歳頃に脳の大きさはほぼ完成します。
 保健の授業等でも習ったともいますが,脳の成長がピークを迎える12~16歳頃に,身体の成長が急激に進みます。これが「思春期スパート」です。この時期には男性,女性のそれぞれ性ホルモンの分泌が活発になります。この性ホルモンの急激な増加は,身体的な変化(第二次性徴)だけでなく,心にも大きな影響を与えます。理由もなくイライラしたり,落ち込んだりするなど,精神的な不安定さを引き起こすことがあります。心身のバランスが崩れ,感情のコントロールが難しいんですね。
20251001-スライド5 この時期に感情のコントロールが難しくなるもう一つの理由を挙げておきます。
 脳は大きさ自体,思春期に完成しているといいましたが,その中身はまだまだなのです。脳内の神経細胞の発達やその結びつき,ネットワークはまだまだ「スカスカ」な状態。しかも,その発達は場所によって時間差があるのだそうです。 
 脳の中身,ど真ん中の方に「大脳辺縁系」というところがあります。ここは「感情や衝動」をつかさどるところなのですが,大脳辺縁系は,思春期に先行して急激に発達します。そのため,思春期に感情の起伏が激しくなったり,欲求や衝動が強まったりします。
 一方で,「理性的な判断や感情のコントロール=思考を司る」を行うところは脳の前方にある「前頭葉(前頭前野)」というところです。前頭葉(前頭前野)は,大脳辺縁系よりも遅れて発達し,20代半ば,25歳頃まで成熟し続けます。
 このように,感情の暴走を止める「ブレーキ役」である前頭葉(前頭前野)が未熟なため,感情や衝動が先行してしまい,行動の制御が難しくなる「ミスマッチ」の状態が生まれます。これが,思春期の向こう見ずな行動や不安定な感情の一因となります。

 次のスライドは,先生の著書などから「思春期」についてまとめたものです。読んでみますね。思春期は,

  1. 20251001-スライド6 単に身体が大人に近づくだけの時期ではなく,脳の成熟にともない,身体的にも精神的にも不安定になる中で,複雑な社会を生き抜くために不可欠な「社会性」や「適応力」を身につけるための最も重要な学びの時期。
  2.  社会的な環境の中で他者との関係性を調整し,自分自身のアイデンティティーを構築する時期。脳の大きさが完成した後も25歳頃までは他者の心の状態を理解し,文脈に応じて自分の中で解釈する能力を成長させる必要がある。現代社会がAIの発展などによって情報過多になり,人間の社会性が失われつつあることは不安。
     
  3.  思春期こそ「自分が出合った変化にどう対応したらいいのか」を自覚して学ぶ機会が必要。この時期に本などを通じて自分が経験していないことを学び,好奇心を鍛えるべし。

 

 皆さんが生きている今のこの「思春期」の時期に,理性や思考をつかさどる前頭葉(前頭前野)をよりよく発達させることが大切なようです。いろいろと物の本を読むと,前頭葉(前頭前野)を発達させるためには,やはり「思考する」「考える」=「学ぶ」という行為が大切です。
 暗記という行為は最近はネガティブに捉えられる嫌いもありますが,暗記を行うことも重要な脳のトレーニングのようです。書かれていること,言われていることについて相手が何を意図しているかを推察・洞察し,それを読解する,解釈する,そのような練習も大切。自分が意図していることを自分の頭の中で組みたてて相手に伝える,表現するという練習も大切なようです。いろいろなトレーニングを組み合わせて脳ミソに汗をかかせるというんでしょうか。そういうことを若いうちにすべきなのだと思います。
 文系の皆さんは数学的な思考が苦手な人が多いかもしれませんが,物事を帰納的に考える,演繹的に考える。いろいろな角度から,いわば脳を逆立ちさせ,考えに考えるということも重要なようです。
 大学とか大学院くらいの年代まで勉強するということには,エビデンスがあるんですね。前頭葉が発達する25歳くらいまではやはり人間は「学び」の時期なのです。
 ③の文章で「本などを通じて自分が経験していないことを学び,好奇心を鍛えるべし。」とありました。若い時期の「読書」も大切なんですね。あと,大学生になったらですが「旅行」などもいいと思いますね。若い人は未知の環境に何度か身を置くことで新たな気づきも多くなってくるように思います。

20251001-スライド7 さて,今日は,文化人類学の観点から人が人として不可欠な「社会性」や「適応力」を身につけるためにも,そして,その後,50年も60年も続く長い人生を豊かにするためにも,今の君たちの年代から25歳くらいまでの時期は考える,学ぶ,勉強するのに最も重要な時期だというお話をさせていただきました。まあ,何かの誰かの台詞ではないですが,やっぱり,勉強やるなら,「いつやるの,今でしょ。」ということになるのでしょうかね。

 以上で,令和7年度後期の始業式の講話を終わります。
 それでは,皆さん,後期(2学期)も頑張りましょう。

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