情報モラルの指導



基本的な考え方 体系的な情報モラル教育推進 モデルカリキュラム 情報モラル教育の進め方
教師が持つべき知識 特別支援教育における情報モラル教育 家庭・地域との連携 情報モラル関連リンク

基本的な考え方 
 携帯電話・スマートフォンやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が子供たちにも急速に普及する中で,児童生徒が自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任を持つとともに,犯罪被害を含む危機を回避し,情報を正しく安全に利用できるようにするため,学校における情報モラル教育は極めて重要です。
 情報モラルは,『情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度』で,具体的には,他者への影響を考え,人権,知的財産権など自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任をもつことや,犯罪被害を含む危険の回避など情報を正しく安全に利用できること,コンピュータなどの情報機器の使用による健康との関わりを理解することとされています。
 
体系的な情報モラル教育推進
 小学校低学年では,日常生活におけるモラルの指導を優先し,中学年からは情報機器の活用などにあわせて,徐々に情報社会の特性やその中での情報モラルについて触れるようにします。小学校高学年や中学校・高等学校では,自他の権利を尊重することについて身の回りの課題から自ら考え,情報社会へ参画する場合の責任や義務,態度に関する内容へと発展するように体系的な指導が必要です。情報社会もルールや法律によって成り立っていることを知り,情報に関する法律の内容を理解した上でそれらを尊重する態度を養うことが必要です。
 小学校の段階では,「情報社会の危険から身を守るとともに,不適切な情報に対処できる」,「安全や健康を害するような行動を抑制できる」ことを目標とし,中学校・高等学校の段階では,「情報セキュリティに関する基礎的・基本的な知識」を身に付け,「情報セキュリティの確保のために,対策・対応がとれる」ようになることなどが求められています。
 
モデルカリキュラム
 「情報モラル指導モデルカリキュラム表」は,平成18 年度の文部科学省委託事業において作成・公表されています。このモデルカリキュラム表については情報モラル教育に特化して,情報モラル教育を「情報社会の倫理」「法の理解と遵守」「安全への知恵」「情報セキュリティ」「公共的なネットワーク社会の構築」の5つに分類し,小学校低学年,中学年,高学年,中学校,高等学校の5つの発達段階に応じた指導目標が示されており,現在でも学校においてカリキュラム作成のモデルとして活用されています。

    情報モラル指導モデルカリキュラム表(文部科学省)
 
情報モラル教育の進め方
 インターネット上のコミュニケーションのトラブルの原因のひとつがテキストコミュニケーションによる誤解の生じやすさであることなど,ネット依存,コミュニケーションのトラブル,ネット被害等問題の多くは,技術やサービス内容が進化して様々な問題を抱えているように見えますが,問題の本質はほとんど変化していません。情報モラルの大半が日常モラルであることを理解し,あわせて情報技術の基本的な特性を理解することで,主体的に解決できる力を身に付けることが大切です。
情報モラル = 日常モラル + 情報技術の特性 
 具体的に情報モラルの指導では,「日常モラルを育てる」「仕組みを理解させる」「日常モラルと仕組みを組み合わせて考えさせる」ということが必要となります。これは,情報社会が進展しても恐らく不変の構造だと考えられます。仕組みについても,情報技術が進展しても変化しない不易な部分と,情報技術の進展によって変化する部分があり,何が不易で,何が変化するものなのかという構造を理解し,これまで指導してきた内容と関連付けて指導することが必要になります。


情報モラルの判断に必要な要素


@日常モラル
 「日常モラル」については,情報モラルの判断に必要不可欠なことを指導する必要があります。自分がやりたいことや欲しいものを我慢できるかという「節度」,多くの情報について正しいかどうかを判断するための「思慮」,人とコミュニケーションをとるために必要となる「思いやり」や「礼儀」,情報社会の一員としてルールを守り,正しいことを実行するための「正義」や「規範」が重要となります。
A情報技術の仕組み
 情報モラルについて適切な判断を行うためには,日常モラルを育てることに加えて「インターネットの特性」,「心理的・身体的特性」,「機器やサービスの特徴」といった仕組みの理解が必要です。これらについては,専門的な知識を教え込む必要はなく,児童生徒の発達の段階に応じて理解させることが重要です。
 
教師が持つべき知識
 情報モラルを児童生徒に指導するに当たっては,学校と保護者が連携して児童生徒のインターネット利用の実態を把握することが必要ですが,あわせて,教師自身が情報モラルに関する知識を持っていることも大切です。

(1)インターネット上で起きていることに関する知識
 インターネット上で起きていることに関する知識は,新聞やニュースなどから児童生徒が事件に巻き込まれたり関わったりした事例も把握しておく必要があるとともに,自分の学校の児童生徒がスマートフォンやタブレットを通じてインターネットをどのように使っているかについて調査することが重要です。

(2)法令の知識
 児童生徒がインターネットに起因する問題の加害者にも被害者にもならないよう,教師が関連する法令の知識をもって,児童生徒の指導に当たる必要がある。SNS 上で他人の個人情報を勝手に公開したり,誹謗中傷で相手の名誉を傷つけたり,著作権処理をせずに音楽や画像ファイルを掲載したりすることなどが法に触れる可能性があると,教師がしっかり認識しておく必要があります。
 ○刑法:法務省 ※脅迫,名誉棄損 等
 ○プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律):総務省
 ○出会い系サイト規制法(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律):警察庁
 ○児童買春・児童ポルノ禁止法(児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律):警察庁
 ○不正アクセス禁止法(不正アクセス行為の禁止等に関する法律):経済産業省
 ○迷惑メール防止法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律):総務省
 ○著作権法:文化庁
 ○特許法:特許庁
 ○電子契約法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律):経済産業省
 ○特定商取引法(特定商取引に関する法律):消費者庁
 ○リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律):警察庁
 ○青少年インターネット環境整備法(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律)
 ○個人情報保護に係る法令
 ○青少年健全育成条例           等

(3)問題への対処に関する知識
 情報モラル教育は,問題発生の予防的な側面を主に担うものであるが,教師は,問題が起きた場合の対処についても知っておく必要があります。
 
特別支援教育における情報モラル教育
 コンピュータや携帯情報端末の利用は,障害のある児童生徒にとって,情報保障の観点や自立した生活を行うための支援機器として有効なものとなり得る一方,有効となり得る情報をどのように扱えばよいかという問題も指摘されています。
 個々の障害の状況に応じて情報の提示の仕方等には配慮が必要です。情報機器の基礎的な扱いは容易になっていますが,障害による特性に合わせた具体的な指導が必要であり,使い方を体験的に学ぶ機会が必要となる点に留意する必要があります。
 
家庭・地域との連携
 学校においては,教科等横断的な横の連携と,発達段階に応じた学年を超えた縦の連携が必要なため,全職員の共通理解のもとで進めていく必要があります。そのため,各学年から1〜2 名の委員を選出し,児童生徒からの情報を共有することができる体制をつくるとともに,PTA や地区の連携協議会に働きかけることのできる体制をつくることが重要です。
 学校と家庭における理解の共有するために,学校で行っている情報モラルの指導の内容を説明するとともに,学校での指導には限界があり家庭での指導が不可欠であることや,指導や啓発における学校と保護者との役割分担について説明することが必要です。できるだけ児童生徒の状況に即した情報モラル教育を実施するために,地域や家庭に対して,情報モラル教育の重要性の認識を広めるとともに,家庭訪問や学校通信などを通じて家庭との綿密な連携を図ることが重要です。
 情報モラル教育を効果的なものとするためには,児童生徒のインターネットの使い方の変化に伴い,その実態や影響に係る最新の情報の入手に努めることが重要です。
 
情報モラル関連リンク
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