読書環境 Q&A

公開日 2016年12月20日

[Q-1]活字を読むことができない全盲の人でも,書店へ行って購入して来た本をその日のうちに読む方法がありますか?

 「備えあれば憂いなし」ではありませんが,そのような時のためにしかるべき準備がしてあれば可能です。 では,その準備について説明します。パソコンとスキャナーを組み合わせたハードウェアに,視覚障害者用のOCRソフト(文字読取ソフト)を使用する方法があります。最近では,ハードウェア,ソフトウェア共に性能も向上し,かなり正確に読めるようになりましたし,値段も10万円前後でそろえることができます。なお,障害者自立支援法の基で実施されている「日常生活用具給付制度」でも,これらのソフトウェアの給付が受けられるようになっています。
 

[Q-2]パソコンを使用すれば,活字の本が読めるということですが,もう少し詳しく説明していただけませんか?

 パソコンやスキャナーについては,現在販売されているものであれば複合機を含めて使用は可能です。ただ,視覚障害者のために開発されたOCRソフトは,PC/AT互換機に対応しています。

 すなわち,マッキントッシュのパソコンでは使用できませんのでご注意ください。

 なお,仕事の関係で毎日多くの書籍を読まなければならない人の場合,購入して来た本の背表紙のところを裁断機で切り落とし,1枚ずつの紙にして読ませておられる方もいると聞きますし,最近では,電子書籍にする目的で上記の作業をなさる睛眼者の方も多いといいます。

 なお,読ませるといっても,その場所にはりついていないといけないというわけでもなく,読み込んだものをファイルとして保存し,後でゆっくりと何回でも読むことも可能です。

 このような場合には,オートドキュメントフィーダー(ADF)といって,紙を1枚ずつ自動的にスキャナーに送ってくれる機器を使用しておられるのです。

 最後に,パソコンとスキャナーを組み合わせた機器と書きましたが,実は,スキャナーの中にパソコンの機能を組み込んだような専用の読書機も開発され,すでに販売されています。ネットを利用なさり,「視覚障害者と読書」などのキーワードで検索なされば多数ヒットすると思います。
 

[Q-3]私は,弱視で活字の本を読んでいるのですが,目がつかれやすくて困ります。何か良い方法はありませんか?

 弱視者の場合,いくつかの方法が考えられます。

(1)いわゆる「虫めがね」,最近では「ルーペ」と呼ばれることが多くなりましたが,このルーペを用いて文字を拡大して読む。

(2)弱視者用に開発された「拡大読書器」を使用し,文字を拡大したり,黒白反転の機能を利用してコントラストを上げて見やすくする。なお,この拡大読書器も携帯できる小型のものも多数製品化されています

(3)書見台を使用し,さほど首を前方に傾けなくても良いように工夫する。

(4)数は,まだあまり多くありませんが,大きな文字と見やすい書体で書かれたいわゆる「拡大図書」を借りるか,購入してそれを読む。一般の活字として使用している明朝体では,横の線が縦の線に比べて細く,例えば,「田」という文字が「川」という文字に見えてしまうということなどをよく聞きます。
 

[Q-4]これまで多く普及して来たカセットテープの図書が段々少なくなると聞きますが,どのような理由によるのでしょうか?

 従来は,音訳ボランティアの方が読んでくださった活字図書の音声はカセットテープに入れて貸し出されることがほとんどでした。

 しかし,カセットテープでは,1冊の本が数本から数10本ものテープとなること,使用している内に,劣化してしまい,耐久性が低いこと,参考書や学術書など,検索の必要がある図書については,読みたい箇所がすぐに捜せないことなどいろいろな問題点がありました。

 それらの欠点から,一般的にもカセットテープはあまり使用されなくなり,その結果,カセットテープ自体の生産が少なくなったこと,録音に使用する器材があまり販売されなくなったこと,高速ダビング機など,多くのテープ図書を発行する上ではなくてはならない機器の入手が難しくなったことなどを挙げることができます。
 

[Q-5]デイジー図書というものがあると聞いたのですが,どのようなものですか?

 音訳ボランティアの方が読んでくださった音声をMP3などの音声信号の圧縮技術を利用して圧縮し,1枚のCDに長時間録音できるようにした方法です。

 標準的な圧縮は,MP3・64Kですが,これでおよそ22時間,最大の圧縮であるMP3・16Kなら90時間も録音することができます。

 なお,このための再生装置がプレクストークという機器ですが,最近では,このプレクストーク自体でデイジー録音もできるようになり,簡単にデイジー図書が作成できるようになりましたし,携帯に便利なポケットサイズの機器もいくつか販売されています。
 

[Q-6]プレクストークという機器は,何だか優れ物だということはわかったのですが,どのようなものですか?

 現在のところ,国産品では,このプレクストークだけがデイジー機器として使用されています。

 まず,再生専用機について書きますと,聴きたい箇所へすぐにジャンプできるという点はすごいと思います。

 ページを指定してのジャンプ,自分が予めつけた「しおり」へのジャンプ,編・章・節・項などへのジャンプなどです。

 また,聴くためのスピードを自由に変えることができるのも便利だと思います。聴いている物の内容によっては,2倍速ぐらいで聴いても十分に理解できるものもあります。2倍速で聴けるということは,2時間を要する内容なら,1時間で聴けるという訳です。

 この後に,録音機能のあるプレクストークについてもお話ししようと思いますが,長くなってもいけませんので,一応,ここで切ります。
 

[Q-7]録音機能のあるプレクストークについても教えてください。

 感覚的には,従来からあるカセットテープへの録音と同じだと考えていただいて結構です。

 異なる点は,録音が終了した後でも,どのようにでも編集ができるということです。

 すなわち,ワープロと同じように,コピー,貼りつけといった作業が,フレーズ単位やセクション単位など,どのようにでも可能なのです。

 また,録音する媒体も,CD-RやCD-RW,コンパクトフラッシュ,SDカードなどいろいろなものが対象となっています。
 

[Q-8]点字の図書があると聞きますが,どのようにして作られたものなのですか?

 まず,一つは,日本全国にある点字出版所で作っているものです。

 小説あり,医学書あり,絵本を含む児童書あり,いろいろです。

 これは,各個人が購入するか,点字図書館や地域の公共図書館が蔵書として購入し,貸し出しています。

 しかし,我が国におよそ30万人いるといわれる視覚障害者のうち,点字を読むことのできる人は10%に過ぎないという調査結果もあり,販売部数が少なく,単価は非常に高くなっています。

 もう一つは,点訳ボランティアと呼ばれる方々が点訳してくださっているものです。これも極端ないい方をすれば,日本点字が制定された明治23年以来の積み重ねがあるといえますが,最近では,パソコンを用いて一般の活字書を点字に直してくださっているものです。

 パソコン点訳のものだけでも,すでに,10万タイトル以上の活字書や雑誌が点訳されています。

 なお,これまでにパソコン点訳された最も刷数の多い図書を2冊ほど紹介しますと   小学館 ランダムハウス英和大辞典 全800巻   三省堂 大辞林 全500巻  などがよく知られています。

 そんなに多くの内容のものをどのようにして点訳するのだろうかと興味をお持ちの方もあると思いますので紹介しておきますと,およそ100人ぐらいで点訳を分担し,後でそれらを結合・合体するのです。
 

[Q-9]点字出版所が出版している点字図書を個人で購入する時に,価格差補償制度というものがあると聞いたことがあるのですが,どのような制度ですか?

 活字本を点字に直した図書の場合,点字の図書の価格にかかわらず活字本の値段で購入できるという制度です。すなわち,短かいことばでいえば「原本価格での購入」ということです。

 例えば,国語辞典や英和辞典などは,点字にしますと数十巻から100巻にもなります。1冊が3千円だと仮定しても,50巻なら15万円となります。

 もう一つは,活字の原本がない場合です。すなわち,書きおろしの図書で点字しかない場合には,点字書の価格の5分の1の価格で購入できます。  もちろん,これらの制度を利用しなければ通常価格です。

 ただ,制限事項もあり,年間6タイトル,24冊までとなっていますが,辞書などの場合,この限りではないようです。

 この制度も,障害者自立支援法の基に「日常生活用具給付制度」の一環として実施されているものですので,各市町村の福祉課へお問い合わせください。
 

[Q-10]点訳ボランティアの方が点訳してくださっておられる図書についていろいろと教えていただけませんか?

 1980年代から1990年代に移ろうとするころ,外資系の某パソコンメーカーが全国の点字図書館に数百台ものパソコンと点字プリンターを提供し,「点訳広場」という点訳ボランティア活動が始まりました。

 その後,「点訳広場」は「ないーぶネット」を経て「サピエ図書館」と改称され,現在にいたっています。  当時は高価であったパソコンも,現在では非常に安価となり,点訳を志す多くのボランティアはパソコン点訳を行っています。

 これらの図書は,日本点字図書館に設置され,全国視覚障害者情報提供施設協会が管理する「サピエ図書館」という点字図書を電子的に所蔵したサーバー(ハードディスクのようなもの)に入り,全国からアクセスして利用できるようになっています。

 ここに所蔵されている図書が10万タイトル(平成22年12月現在)以上あり,地元の点字図書館(本県では,鹿児島県視聴覚障害者情報センター 099ー220ー5896)でプリンティングサービスなどを行っています。
 

[Q-11]電子図書館のようなもので「サピエ図書館」というものがあることはわかったのですが,どのような人が利用できるのですか?

 これは,視覚障害者のために点訳された図書ですので,視覚障害者に限られます。

 従って,このサービスを受けることができるのは,視覚障害があることで交付された身体障害者手帳を所有する人ということになります。
 

[Q-12]「サピエ図書館」を使用するには,どのようなパソコン環境が必要なのですか?

 インターネットに接続できる環境が必要ですが,点字データのみ利用したいということであれば必ずしもブロードバンドでなくてはならないということはありません。 

 使用するソフトウェアとしては,基本的にはインターネットエクスプローラで良いのですが,これはダウンロードのために使用するだけですので,ダウンロードした図書を解凍するソフトウェアと,読み上げるソフトウェアが必要となります。

 最近のスクリーンリーダーの中には,点字の文書を読み上げることのできる簡易エディターを持っているものもありますので,そちらをご使用になるのも良いと思います。

 更に,簡単にダウンロードや読み上げができるように「サピエ図書館専用ソフトウェア」(マイブック等)も発売されています。
 

[Q-13]「サピエ図書館」への入会方法を教えていただけませんか?

 鹿児島県の場合,「鹿児島県視聴覚障害者情報センター」(099-220-5896)へお電話で申込まれても良いですし,「サピエ図書館」を検索し,そのホームページからオンラインサインアップといって,ネット上から直接入会することも可能です。
 

[Q-14]インターネットを介してデイジー図書を聴くことのできるシステムがあると聞いたのですが,どのようなものですか?

 従来は「ビブリオネット」と呼ばれていましたが,平成22年10月からは「サピエ図書館」と呼ばれるようになったものがそれです。

 インターネットにアクセスできる環境があり,この場合には,ストリーミング再生も行いますので,ADSL以上のブロードバンド回線である必要があります。

 パソコンに「ネットプレクストーク」または,「ネットプレクストークプロ」,「マイブック」というソフトウェアをインストールし,プレクストークでデイジー図書を聴くような感覚で読書することができますし,ダウンロードして携帯型のプレクストークに保存し,バスの中や電車の中などでも自由に読書を楽しむことができます。

 なお,ネットプレクストークはストリーミング再生専用ソフトですし,ネットプレクストークプロとマイブックは,ストリーミング再生の他に,ダウンロードもできるソフトウェアです。

 必要経費は,専用ソフトを使用したいのであれば,次のいずれかのソフトを購入する費用が必要ですが,インターネットエクスプローラのみでダウンロードすることも可能です。ネットプレクストークなら9,000円,ネットプレクストークプロなら1万1,000円,マイブックなら3万8000円です。
 

[Q-15]サピエ図書館というものに興味が沸いてきたのですが,視覚障害者であればだれでも利用できるのでしょうか?

 視覚証害を理由に交付された障害者手帳を持っておられる方であれば使用できますし,活字を読んで理解するのが苦手とされるいわゆるLDの方も使用可能だと聞いています。

 なお,詳細につきましては,以下のURLをご参照ください。

https://library.sapie.or.jp/cgi-bin/CN1MN1?S00101=S00MNU01
 
 

[Q-16]視覚障害者が読むことのできる雑誌にはどのようなものがあるのですか?

 視覚障害者が読むことのできる雑誌もたくさんあります。ただ,「たくさん」という表現は必ずしも正しくはなく,一般に出版されている活字の雑誌の数からしますと,まだまだ少ないといえます。
 

[Q-17]具体的にどのようなジャンルのものがあるのか教えていただけませんか?

 具体的にお話しする前に,いくつかのカテゴリーに分類する必要がありますので,そちらからお話しします。

 まず,提供されるメディアですが,点字,カセットテープ,デイジー,拡大文字などでしょうか。

 次に,有料のものと,無料のものとがあります。

 なお,有料のものはどなたでも購読が可能ですが,無料のものについては,視覚障害を理由に交付された障害者手帳を有することが大原則です。

 更に,雑誌の中には,一般の活字版を全部読んだり,点字にしたもの,一部を抜粋したもの,まったくオリジナルな雑誌を作っているものなどいろいろです。しかし,「サピエ図書館」では,多くの一般向けの週刊誌が毎週のように朗読されアップされるようになりました。
 

[Q-18]視覚障害者として,これだけは読んでおいた方が良いという雑誌があれば教えていただけませんか?

 相撲でいえば,東の横綱が「点字ジャーナル」,西の横綱が「点字毎日」というのは,万人が認めるところでしょうか。

 ここでは,先輩に当たる「点字毎日」から紹介してみます。

 創刊されたのが,大正11年5月のことですから,すでに85年が経過しています。

 その間,一度も休刊となったことはないといいます。なお,本誌は週刊誌です。

 平成19年5月20日号で第4341号を数えます。

 点字版の他に,活字版(平成10年2月5日創刊),音声版(平成17年2月20日創刊)もあります。

 内容ですが,視覚障害に関する情報が主ですが,いろいろな新製品情報なども掲載されています。

【連絡先】
TEL 06-6346-8388(営業) 
FAX 06-6346-8385
E-mail tenmai@mbx.mainichi.co.jp 

 

写真があります。
点字毎日 平成19年5月20日号

 

 
 

[Q-19]「点字毎日」という雑誌は,随分以前から発行されていたこともわかりましたが,もう少し詳しく説明していただけませんか?

 週刊誌であることは先ほど述べましたが,1回分の内容は,A4サイズの点字用紙に,1行32マス,1ページ27行,約60ページから構成されています。

 なお,点字版の定価は,1部400円となっています。

 活字版や音声版につきましては,上記の連絡先へお電話かメールでお問い合わせください。
 

[Q-20]次に,東の横綱といわれた「点字ジャーナル」について教えていただけませんか?

 西の横綱として紹介しました「点字毎日」が週刊誌であるのに対し,本誌は月刊誌です。

 創刊も「点字毎日」に比べますと,そんなに以前ではありません。

 2007年6月号を見ますと,第38巻第6号,通巻445号となっていますので,創刊されたのは,およそ38年前ということになります。

 内容ですが,月刊誌ですので日々のニュースというよりは,その時々に視覚障害者の世界で話題となっているようなことについての座談会や連載ものが多いです。

 B3判より少し大きい点字用紙に,1行37マス,1ページ31行,64ページから構成されています。

 なお,定価は1部700円です。詳細につきましては,以下でご確認ください。

【連絡先】
電話 03-3200-1310
URL http://www.thka.jp/
E-mail tj@thka.jp

 

写真があります。
点字ジャーナル 平成19年6月号

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