鹿児島県立出水高等学校のある出水に伝わる「出水兵児」

公開日 2016年09月27日

出水地図   鹿児島県立出水高等学校は,鹿児島県北西部のツルの渡来地としても有名な出水市にある高等学校です。

また旧薩摩藩の北端にある出水は肥後藩との国境を守る要衝の拠点ということもあって,薩摩藩最強の武士団を育み,最も尚武の地であると云われました。

その礎となったものが,江戸時代後期に兵児(へこ:青少年)をたくましく育てるために作られたといわれる「出水兵児修養掟(いずみへこ しゅうようおきて)」。
武士の心構えを表した内容で,その教えのもと当時の強い者として天下に知れ渡った「出水兵児(へこ)」。その精神は代々子孫に伝えられ,今の世の中でも人としての生きる心構えの教えとしての傑作として,多くの人に親しまれています。

鹿児島県立出水高等学校の正門にも「出水兵児」が掲げられ,その精神を多くの青少年に伝えています。

 

出水兵児修養掟(いずみへこ しゅうようおきて)

士(し)ハ節義(せつぎ)を嗜(たしな)み申すべく候(そうろう)。
節義の嗜(たしな)みと申すものは,
口に偽(いつわ)りを言ハず,
身に私(わたくし)を構(かま)へず,
心直(こころすなお)にして作法(さほう)乱れず,
礼儀正しくして上(かみ)に諂(へつ)らハず,
下(しも)を侮(あな)どらず,
人の患難(かんなん)を見捨てず,
己(おの)が約諾(やくだく)を違(たが)へず,
甲斐(かい)かいしく頼母(たのも)しく,
苟且(かりそめ)にも下様(しもざま)の賎(いや)しき物語り悪口など話の端(はし)にも出さず,
譬(たとえ)恥(はじ)を知りて首(くび)刎(は)ねらるゝとも,己(おのれ)が為(な)すまじき事をせず,
死すべき場を一足(ひとあし)も引かず,
其心(そのこころ)鐵石(てっせき)の如(ごと)く,
又温和慈愛(おんわじあい)にして,
物の哀(あわ)れを知り人に情(なさけ)あるを以(もつ)て節義の嗜(たしな)みと申すもの也(なり)。
  出水兵児
 

(口語訳)

人は正しいことをしないといけない。
正しいこととは,うそを言わないこと,自分よがりの考えをもたないこと,
素直で礼儀正しく,目上の人にぺこぺこしたり目下の人を馬鹿にしたりしないこと,
困っている人は助け,約束は必ず守り,何事にもいっしょうけんめいやること,
人を困らせるような話や悪口などを言ってはいけないし,
自分が悪ければ,首がはねられるようなことがあっても弁解したりおそれたりしてはいけない,
そのような強い心を持つことと,小さなことでこせこせしない広い心で,
相手の心の痛みが分かるやさしい心を持っているのが,立派な人と言えるのです。